2023年12月18日

労働条件の明示に関する法改正とは?明示範囲や変更時の注意点について解説

条件のブロック

企業が労働者を雇用する際には、労働条件を明示しなければなりません。しかし、どのような内容をどこまで明示すべきなのか、後で労働条件を変更することは可能なのかなど、わからないことも多いのではないでしょうか。

この記事では、労働条件の明示義務とは何か、労働条件を変更する際の注意点などについて解説します。

労働条件の明示義務とは?

企業などが労働者を雇用する際には、労働条件の明示義務があります。法律では、労働基準法第15条第1項により、以下のとおり定められています。

「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」では、労働条件に記載すべき内容とはどのようなものなのでしょうか?

記載すべき事項は、必ず記載すべき「絶対的明示事項」と、規定がある場合に明示すべき「相対的明示事項」の2つにわかれます。ここでは、それぞれの内容についてご説明します。

絶対的明示事項

労働条件として必ず記載すべきなのは、以下のような項目です。

<絶対的明示事項>

  • 労働契約期間(期間に定めがあるか否か。ある場合は具体的な期間)
  • 就業場所、業務内容
  • 始業・終業時刻、休憩時間、残業の有無、休日、休暇
  • 交替勤務制の場合の内容
  • 賃金について、決定方法、計算方法、支払い方法、昇給に関すること
  • 退職に関すること

これらの内容は、労働契約時に必ず明らかにする必要があります。

相対的明示事項

雇用する企業に規定がある場合は、明示すべき内容です。

<相対的明示事項>

  • 退職金制度がある場合の、退職金の決定方法、計算方法、支払い方法
  • 賞与などの臨時の賃金
  • 労働者側が負担する食費や作業用品について
  • 職業訓練について
  • 災害補償、疾病扶助について
  • 安全・衛生について
  • 休職について

上記の記載事項の明示は必須ではありませんが、社内に規定がある場合は明示する必要があります。

労働条件通知書と雇用契約書の違い

労働条件通知書と雇用契約書

労働条件を労働者に明示する書類には、労働条件通知書と雇用契約書があります。この2つの書類の内容についてご説明しましょう。

労働条件通知書とは

労働条件通知書は、企業側が労働者に一方的に労働条件を通知するための書類です。労働条件通知書は法律で作成が義務付けられているため、必ず作成しなければなりません。

雇用契約書とは

雇用契約書は、労働条件や契約内容について、労使間で合意するための書類です。そのため、2部作成して署名・押印をします。

雇用契約書の作成は法律で義務付けられているわけではありませんが、労使間のトラブルを避けるため、作成し締結しておいたほうがよいでしょう。

労働条件変更時の注意点

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労働条件を規定したものの、後で変更する場合もあると思います。その際に注意すべき点についてご説明します。

一方的に不利益変更をおこなうことはできない

労働者にとって不利益になる労働条件の不利益変更を、企業側が一方的におこなうことはできません。たとえば、賃金を減らす、休日を少なくするなどは、労働者にとって不利益になる変更です。このような不利益変更をおこなう場合には、以下の条件を満たす必要があります。

<不利益変更をおこなうための条件>

  • 労働条件の変更内容が合理的である
  • すべての従業員に変更内容を周知している

これらの条件を満たさないと労働条件を変更できないので、ご注意ください。

労働条件の変更が合理的である条件とは

上記の不利益変更をおこなう場合の条件に「労働条件の変更内容が合理的である」というものがありました。合理的であると判断するためには、以下のような内容について個別に判断が必要です。

<労働条件の変更が合理的である条件の判断要素>

  • 労働者がどの程度の不利益を受けるか
  • 変更の程度や内容の必要性
  • 変更後の規則が妥当か
  • 労働組合との交渉の状況
  • 不利益に対する代替措置はあるか
  • 社会の一般的な状況はどうなっているか  など

上記の要素について個別に判断し、労働条件の変更が合理的かどうかを検討します。

不利益変更の手続き方法

労働者に有利な内容に就業規則を変更することは可能ですが、不利益になる内容に変更する場合には、以下のような手続きが必要です。

<就業規則の不利益変更の手続き方法>

  1.  労働者全員から同意を得る、または、労働組合と合意する
  2.  就業規則の変更案を作成する
  3.  労働者から意見書をもらう、または、労働協定の締結をおこなう
  4.  労働基準監督署に届け出る(就業規則変更届、変更した就業規則、意見書)
  5.  労働者全員に変更内容を周知する

もっとも重要なのは、変更後に労働者全員に就業規則の変更内容を周知することです。周知がおこなわれない場合は、変更が無効になる可能性もあるので注意しましょう。

労働条件の明示範囲が変更される?

頭にはてなマークが浮かぶ男性

2023年に、労働条件の明示範囲が変更される可能性があります。

変更後は、雇用時に明示する労働条件通知書に、「就業場所と業務内容」だけでなく「就業場所と業務内容の変更の範囲」を明示することが検討されています。今後具体的な議論が進んでいく予定なので、企業側は状況を注視していく必要があるでしょう。

まとめ

この記事では、労働条件の明示義務とは何か、労働条件を変更する際の注意点などについて解説しました。労働者を雇用する際には、労働条件を明記する必要があります。この記事を読めば、どのような内容を明示すべきかがわかっていただけたと思います。

就業規則に労働条件について記載しなければならないがどうすればよいのか、などお悩みの場合は、社労士事務所 Office Followにご相談ください。就業規則の作成や変更に関する豊富なノウハウでサポートいたします。