産休手当とは?対象になる人・ならない人や計算方法をご紹介
産休手当(出産手当金)とは、出産を目的に休暇を取得した女性が受け取れる手当のことです。産休を取得している女性に対して、企業側が賃金を支払う義務はありません。その代わりに産休手当を支給することで、従業員は安心して妊娠・出産に臨みやすくなります。
この記事では、産休手当を受給できる人・受給できない人や混同されがちな「出産一時金」との違い、産休手当の計算方法などについても解説します。
産休手当とは
産休手当とは、健康保険に加入中の女性が産休を取得する際に受け取れる手当のことです。正式名称は「主産手当金」といいます。
労働基準法には「6週間以内に出産を予定する女性からの休業の申し出には応じなければならない」「産後8週間の女性を就業させてはならない」と明記されています。しかし、産休を取得中の女性に対して、企業側が賃金を支払う義務は負いません。
これにより産休中の女性は無給となる可能性が高いものの、一定の条件を満たす場合は産休手当を取得できます。産休手当の存在により、女性が企業に籍を置きながら、安心して妊娠・出産に臨みやすくなることは間違いありません。
産休手当と「出産一時金」の違い
産休手当と混同されがちな制度が「出産一時金」です。しかし、産休手当と出産一時金には、以下のような違いがあります。
【両者の比較表】
産休手当 | 出産一時金 | |
---|---|---|
対象者 | 企業による健康保険被保険者のみ | ・被保険者 ・被扶養者 |
金額 | 標準報酬月額をもとに算出 | 404,000円~420,000円 |
なお、産休手当と出産一時金の制度は併用可能です。性質上、産休手当を取得できる人であれば、出産一時金も受け取れます。
産休手当を受給できる人
産休手当を受給するための条件は、以下の3つです。
<産休手当を取得する3つの条件>
- 企業の健康保険に加入している人
- 妊娠4ヶ月以降に出産した人
- 出産を目的に休暇を取得している人
これから解説する3つの条件をすべて満たしている場合は、出産一時金を受給できます。
企業の健康保険に加入している人
産休を取得する本人が、勤務先において各種保険に加入済みの被保険者でなければなりません。フルタイムで働く正社員の方はもちろん、パート・アルバイトの方や契約社員の方など、非正規雇用の場合でも、正規雇用の従業員と扱いが変わることはありません。
妊娠4ヶ月以降に出産した人
妊娠4ヶ月(85日)以降に出産することも、受給資格を満たすための条件のひとつです。妊娠4ヶ月以降であれば、以下のようなケースでも産休手当の受給資格を満たせます。
<妊娠4ヶ月以上の産休手当の受給対象>
- 出産した場合
- 早産、死産、流産をした場合
- 人工中絶を行った場合
出産を目的に休暇を取得している人
先述した2つの条件とあわせて、出産を目的に休暇を取得することも受給条件のひとつです。休暇中に会社から報酬を得ていない場合、もしくは産休前の給与より報酬の支払額が少ない場合は、産休手当の受給資格を満たせます。
産休手当の受給対象にならない人
以下の要件をひとつでも満たしている場合は、産休手当を受給できないため注意しましょう。
<産休手当の受給対象にならない人>
- 加入している保険が「国民健康保険」の人
- 被保険者の扶養家族になっている人
- 産休手当以上の給与を得ている人
- 健康保険を任意継続している人
上記について詳しく解説します。なお、産休手当を受給できない人でも、出産一時金を受給できる可能性があるため、受給条件を確認した上で忘れずに申請してください。
加入している保険が「国民健康保険」の人
産休手当の対象者は、会社の健康保険や共済組合の被保険者のみです。国民健康保険は、個人事業主やフリーランスを対象としたサービスにあたるため、加入している保険が国民健康保険の場合は、支給の対象外となります。
被保険者の扶養家族になっている人
先述したとおり、産休手当を受け取れるのは、被保険者本人のみと定められています。たとえば夫が会社の健康保険に加入済みのケースにおいて、出産を予定している妻が扶養家族にあたる場合、夫または妻が受給資格を満たすことは不可能です。
産休手当以上の給与を得ている人
産休に伴う休職中に、後述する計算方法により算出した産休手当を上回る報酬を得ている場合は、会社の健康保険等の被保険者本人だとしても、産休手当を受け取れません。ただし、給与の支給額が産休手当よりも少ない場合に限り、差額分を産休手当として受給できます。
健康保険を任意継続している人
会社による健康保険に加入している人が退職する際、一定の条件を満たした場合に限り、個人の意思で健康保険加入を継続できます(任意継続)。しかし、任意継続は産休手当支給の対象外となるため、原則として産休手当を受け取れません。
産休手当の計算方法
産休手当の金額は、原則として日給の3分の2相当です。産休手当を計算する際は、通常の給与ではなく、各種手当などを含めて等級で区分けした「標準報酬月額」を用います。
<具体的な計算式>
- 支給開始日以前12ヶ月分の標準報酬月額平均÷30日×2/3
支給開始日の起算日は、産休手当の支給を開始する月です。標準報酬月額が26万円と仮定した場合、1日あたりの産休手当は次のように計算します。
<具体的な計算例>
- 260,000円÷30日×2/3=6,041円
労働基準法により認められている「出産前6週間=42日」「出産後8週間=56日」の産休を取得した場合、6,041円×98日分で、合計592,018円を受給できます。
産休手当の支給は申請の1~2ヶ月後
産休手当は、申請の1~2ヶ月後に一括で支払われることが基本です。
退職後も産休手当を受給できる可能性がある
以下の条件を満たす場合は、退職後でも産休手当を受給できます。なお、産休手当の申請を忘れてしまった場合は、産休を取得した日の翌日から起算して2年以内の分に限り、さかのぼって全額の請求が可能です。2年間の経過後は、日にちが経過するごとに受給資格日を1日ずつ失います。
<退職後に産休手当を受給するための条件>
- 退職日からさかのぼって1年以上継続して保険加入を続けていること
- 退職日に産休手当を受け取っていること
- 退職日に産休手当の受給資格を満たしていること
ただし、退職日に出勤して給与を受け取っている場合は、継続給付の受け取り条件を失うため、退職日から見て翌日以降の産休手当を受給できません。
まとめ
産休手当とは、所定の条件を満たした妊娠中もしくは出産後の女性が受け取れる手当の一種です。出産前は6週間、出産後は8週間の休暇取得が労働基準法により保障されており、標準報酬月額をもとに計算した産休手当が、受給条件を満たす女性に支払われます。
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