2024年05月20日

人事と労務はここが違う!仕事内容や効率化するためのコツ

ミーティングする人たち

人事と労務はどちらも社員のサポートを行う仕事ですが、仕事内容はまったく異なります。そのため、社員を雇う際は、人事と労務の違いを経営者側がよく把握しておき、それぞれに適した仕事を任せられるようにしておきましょう。

このコラムでは、人事と労務の仕事内容を具体的に解説します。仕事を効率よく進めるためのコツもご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

人事と労務は何が違う?

人事と労務は、どちらも社員が会社でスムーズに働けるようサポートする仕事ですが、具体的にどのような点が違うのか、説明できない方も多いのではないでしょうか。

結論からいうと、人事は採用活動や人材配置、研修の実施など、会社の業務が円滑にまわるように社員を管理することが仕事です。一方、労務は就業規則の作成や入社退職時の手続き、勤怠管理や給与計算など、社員の働く環境を整える仕事を行います。

この点から、人事は社員と直接関わる業務、労務は社員の裏方を支える業務を担当する点が大きな違いです。

人事が担当する仕事内容

ミーティングをする人事部

人事が担当する仕事内容には、以下のものが含まれます。

 

<人事が担当する仕事内容>

  •  採用活動
  •  人材配置
  •  人事評価制度の作成
  •  研修の実施

 

それぞれどのような業務を行うのか、仕事内容を解説していきましょう。

採用活動

新卒や中途者の採用に向けて、募集ページを作成したり、企業説明会を実施したりします。また、応募者が集まった場合は採用試験や面接なども担当し、自社にとって最適な人材を確保することも業務の一環です。

採用活動を行う際は、事前に採用計画を作成し、採用人数や採用活動を行う自沖、どの部署がどのような人材を欲しているのかなどを明確にしておきましょう。

人材配置

会社の業務が円滑に進むためには、適切な部署へ適切な人材を配置することが重要です。採用活動が終了したら、採用者のスキルや性格、部署の人員バランスなどを考慮し、配属先を決定しましょう。

また、昇格などによる社員の移動も人事の仕事です。ただし、人事異動を調整する際は、会社の都合だけでなく、本人の希望や家族構成などの背景も考慮する必要があります。

人事評価制度の作成

人事は客観的な目線で社員の評価を付けるために、人事評価制度を作成しなくてはなりません。人事評価制度は、評価制度・報酬制度・等級制度の3要素から成り立ち、各評価が社員の給与や賞与、昇級などを決定する判断材料とされます。

ただし、人事評価制度を作成する際は上司の私情が反映されないよう、絶対評価(ノルマや目標の達成度による評価)と相対評価(他者との比較結果による評価)の両方を上手く取り入れることが大切です。

研修の実施

社員のスキルやコンプライアンス意識・生産性を高めるために、社内研修を定期的に実施することも大切な仕事です。

採用活動終了後に新卒者や中途採用者が入社したら、まずは新人研修として、経営理念や具体的な業務内容を伝えます。社内規則を教え込み、法令違反を起こすことがないよう徹底することも大切です。

また、人事では管理職を対象としたマネジメント研修も行う必要があります。マネジメント研修とは、マネジメントに関する専門的な知識や実践的スキルを学んでもらう研修です。管理職には、チームをまとめる力や部下を育成する能力、リスク管理能力など、さまざまなスキルが求められるため、研修で着実に力を付けさせましょう。

研修を行ったあとは、社員の様子を確認し、内容の見直しや改善を行うことも必要です。

労務が担当する仕事内容

パソコンを見ながら作業する人たち

労務では、以下の仕事を行います。

 

<労務が担当する仕事内容>

  •  就業規則の作成
  •  入社・退職時の手続き
  •  勤怠管理
  •  給与計算
  •  保険の手続きと福利厚生の管理
  •  労務におけるトラブル対応
  •  健康管理

 

ひとつずつ業務内容を解説していきましょう。

就業規則の作成

就業規則とは、従業員に向けて労働条件や職場内のルールを定めたものです。就業規則には、労働基準法第89条に定められた以下の項目を必ず記載する必要があります。

 

<就業規則の絶対的必要記載事項>

  •  始業と終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、就業転換に関する事項(シフト勤務の場合のみ)
  •  賃金の決定と計算および支払方法、ならびに締め切り時期と支払時期
  •  昇級に関する事項
  •  退職に関する事項と解雇事由

 

このほか、臨時の賃金(退職手当を除く)や食事・作業用品の提供など、会社によって独自のルールがある場合も記載しなければなりません。

入社・退職時の手続き

労務では、社員が入社したときと退職する際に、以下のような手続きを行う必要があります。

入社時 退職時 
・雇用契約書の作成
・労働条件通知書の交付
・各種保険の資格取得手続き
・給与振込口座の登録
・雇い入れ時の健康診断
・出勤簿
・労働者名簿
・賃金台帳の整備
・各種保険の資格失効手続き
・回収書類の通知
・退職金の計算
・退職証明書の交付

これらの手続きは未だ紙ベースで行われているケースが多く、手間と時間がかかる作業なので、効率よく行うことが大切です。

勤怠管理

出社時刻や退勤時刻、労働時間や休憩時間、有休の取得日数などを管理し、社員が違法な労働を課せられていないかチェックをしたり、社員から申請があった場合は所定の手続きを行ったりする業務です。

なかでも、労働時間の管理は給与に直結するため、大変重要です。残業や休日出勤なども細かく把握できるシステムを構築しておきましょう。

給与計算

労働時間や日数などに応じて、社員ひとりひとりに正しい金額で給与の振り込みが行われるよう、給与計算を行います。

給与の金額は、同じ社員でも労働時間によって毎月変わる可能性があります。また、住民税や所得税などの税金も給与が変われば変わってきますので、間違いのないよう注意が必要です。

保険の手続きと福利厚生の管理

健康保険や雇用保険、労働災害保険などの各種保険手続き、および社会保険への加入や住宅手当、社員食堂、レジャー施設の割引制度などの福利厚生の管理も労務が行う業務のひとつです。

労務におけるトラブル対応

年々、労務におけるトラブルは急増しており、厚生労働省が発表した「令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況」には、124万8,368件の相談が寄せられたと記載されています。なかでも、労働基準法違反の疑いがある相談には、前年度より10.8%も多い18万8,515件の相談が寄せられているため、残業代の未払いや過度な残業などのトラブルは起きやすいようです。

労務トラブルにおける対応は、早ければ早いほど社員からの信頼も厚くなりますので、相談が上がってきた場合はすぐに対応しましょう。

健康管理

労働安全衛生法の第66条に、企業は労働者に対し医師による健康診断を受けさせなければならないと明記されています。また、ストレスチェックも年1回以上の実施が義務づけられているため、労務担当者は必ず全社員に実施しなければなりません。

さらに、長時間労働者には産業医による面接指導を受けさせ、健康障害が発生しないよう管理することも大切です。

人事労務の仕事を効率化するためのコツ

パソコンが並んだ部屋

人事労務の仕事は、ひとつひとつの業務に時間や手間がかかるにも関わらず、未だ紙ベースで行われている業務が多いです。そのため、人事労務の仕事を効率よく進めるためにも、デジタル化できるものをすべてデジタルに移行させましょう。

社員の勤怠管理や給与明細の発行業務、各種保険の資格取得書類などは、システムを組んでデジタル化すると少ない工程で業務が完了します。ツールは自社で開発するほか、外部サービスに依頼する方法もありますので、貴社にとって最適な導入方法を検討してみましょう。

まとめ

人事と労務の仕事は混同されがちですが、人事は社員の管理、労務は社員の働く環境を整備することが主な業務内容です。どちらの仕事も手間のかかる業務が多いですが、デジタルシステムを活用することで、効率よく業務を進められるでしょう。

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