賞与の計算方法とは?平均支給額や決め方の基準なども解説
従業員に対して定期的に支払う給与とは別に、1年に数回の頻度で支給する臨時的な賃金が、「賞与(ボーナス)」です。賞与からは社会保険料と所得税を控除する必要があるため、これらの費用の計算方法を正しく認識しておかなければなりません。
この記事では、賞与の計算方法をはじめ、年代別に見た賞与の年間平均額や、賞与の決め方の基準などを詳しく解説します。
そもそも賞与とはなにか
賞与とは、定期的に支給される給与とは異なり、支給額が未確定な状態で支払われる報酬です。賞与の付与が4回を超過した場合は、社会保険上の扱いが標準報酬月額の対象となるため、固定給と同様の扱いになります。企業によっては、賞与を以下のように呼ぶケースもあるようです。
<賞与の別称>
- ボーナス
- 夏季手当、冬季手当
- 年末手当
- 一時金
- 報奨金 など
賞与の種類は大きくわけて3つ
賞与は大きく以下の3つに分類できます。
【賞与の種類と特徴】
基本給連動型 | 基本給の金額に応じて計算する |
---|---|
業績連動型 | 部門もしくは個人の業績に応じて計算する |
決算型 | 企業の業績に応じて計算する |
業績連動型と決算型に関しては、業績により支給されない可能性もある賞与です。
賞与の平均額は30代で約80万円~92万円
厚生労働省が発表した「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、年代別に見た賞与の年間平均額は以下のとおりでした。
【年代別に見た賞与の年間平均額】
10代 | 150,700円 |
---|---|
20代 | 382,200円~655,500円 |
30代 | 799,300円~926,100円 |
40代 | 1,012,800円~1,081,300円 |
50代 | 1,155,700円~1,159,100円 |
60代 | 350,800円~692,000円 |
70代 | 228,900円 |
基本給と連動する場合が多いため、現役世代の年長者ほど高額な賞与を得ています。
賞与の計算方法とは
先ほどは賞与の平均額をご紹介しましたが、表内に記載していた金額がそのまま支給されるわけではありません。表内の金額から社会保険料と所得税を差し引いた金額が手取り額となるため、会社側は賞与の計算方法を正しく認識する必要があります。
<賞与の計算方法>
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 介護保険料
- 雇用保険料
- 所得税(源泉徴収税)
上記5点の計算方法について、具体例を交えながら詳しく解説します。
健康保険料
健康保険料の計算方法は、以下のとおりです。
<健康保険料の計算方法>
- 標準賞与額×健康保険料率÷2
標準賞与額は、税引き前に支給される賞与の総額から、1,000円未満の端数を省いたものを表しています。仮に標準報酬月額が400,000円で、健康保険料率が10%の場合、計算結果は以下のとおりです。
<シミュレーション結果>
- 400,000円×10%÷2=20,000円
厚生年金保険料
厚生年金保険料の計算方法は次のとおりです。料率は2017年より固定されています。
<厚生年金保険料の計算方法>
- 標準賞与額×18.3%÷2
先ほどと同様の事例をもとにして、課税額をシミュレーションしてみましょう。
<シミュレーション結果>
- 400,000円×18.3%÷2=36,600円
介護保険料
介護保険料の計算式は次のとおりです。
<介護保険料の計算方法>
- 標準賞与額×介護保険料率÷2
介護保険料率は属性により異なりますが、65歳未満の会社員の場合は協会けんぽが定めた全国一律の両立を用いて計算します。今回は1.82%を両立としてシミュレーションしました。
<シミュレーション結果>
- 400,000円×1.82%÷2=3,640円
雇用保険料
雇用保険料の計算方法は次のとおりです。
<雇用保険料の計算方法>
- 賞与額×雇用保険料率
その他の社会保険料とは異なり、雇用保険料のみ端数を切り捨てせずに計算を行います。今回は一般事務所の雇用保険料率0.6%を適用して、シミュレーションを行います。
<シミュレーション結果>
- 400,000円×0.6%=2,400円
所得税(源泉徴収税)
所属税の計算方法は次のとおりです。
<所得税の計算方法>
- (賞与額-社会保険料)×所得税率
今回は給与が20万円で社会保険料が4万円と仮定して、シミュレーションを行います。扶養家族が0人の場合、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和5年分)」によると、所得税率は4.084%です。
<シミュレーション結果>
- (400,000円-40,000円)×4.084=14,702円
ここまでの計算結果をまとめます。
【最終的なシミュレーション結果】
標準賞与額 | 400,000円 |
---|---|
健康保険料 | 20,000円 |
厚生年金保険料 | 36,600円 |
介護保険料 | 3,640円 |
雇用保険料 | 2,400円 |
所得税 | 14,702円 |
合計(手取りの賞与額) | 322,658円 |
賞与の決め方の基準
この項目では、賞与をどのようにして決めるのかについてご紹介します。具体的なパターンとして用いられているのは、以下の4つです。
<賞与の決め方>
- 「基本給の〇ヶ月分」で支給するパターン
- 「企業の業績」に応じて支給するパターン
- 「個人の業績」に応じて支給するパターン
- 「個人の勤怠」で支給するパターン
それぞれの詳細を確認しておきましょう。
「基本給の〇ヶ月分」で支給するパターン
「基本給の2ヶ月分」といった基準で賞与を決める方法です。ごく一般的かつ特別な裁定なしで賞与額を決定できるため、査定にかかる手間を省きやすい点がメリットになります。一方で個々の成績を度外視した支給方法となるため、従業員のモチベーションを保ちにくい点がデメリットです。
「企業の業績」に応じて支給するパターン
企業の業績がよければ賞与が上がり、反対に業績が悪ければ無配となる可能性もあるパターンです。従業員が会社の業績を自分事として捉えやすいため、モチベーションを維持しやすいでしょう。ただし、業績アップに貢献した部署とそうでない部署に分かれる場合は、公平性に欠けてしまいます。
「個人の業績」に応じて支給するパターン
従業員個人の成績を評価して賞与に反映させるパターンです。一度上げた固定給を引き下げるのは困難ですが、賞与ならば柔軟に変動させられるため、成果報酬を重んじる場合に効果的といえます。ただし、評価基準を明確にしなければ、計算が困難になる点がデメリットです。
「個人の勤怠」で支給するパターン
遅刻や欠勤といった従業員の勤怠状況に応じて、賞与を変動させるパターンです。頑張りが報われやすいシステムのため、従業員のモチベーションアップにつながります。ただし、このパターンにより高い評価を受ける従業員が、必ずしも業績アップに貢献しているとは限りません。
まとめ
賞与の計算方法は、標準賞与額や賞与額から各種社会保険料と所得税を差し引いて求めます。計算方法は比較的シンプルですが、多数の従業員を抱えている場合は計算に手間がかかるほか、経常作業中にミスが発生する可能性も否定できません。
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