2024年05月14日

昇給とは?基本給や手当、ボーナスなどについての昇給制度の仕組み、種類などを解説します

給料袋

昇給や昇格、昇進は、従業員のやりがい・モチベーションの維持に欠かせない仕組みのひとつです。人事担当としては、これらの違いや仕組みをしっかりと理解しておく必要があります。また、自社の昇給制度が一般的に見てどのようなものであるか、把握しておくことも大切です。

そこで今回は、「昇給」についての概要、昇給の種類、日本企業の昇給制度の導入率・実施率などについてなどをわかりやすく解説していきます。

昇給とは

昇給とは賃金の改定制度のひとつで、「勤続年数や年齢、実績といったものに対して、従業員個人の基本給をアップさせること」を指します。国内の企業で一般的に多く見られるのは、毎年昇給する「定期昇給制度」です。

企業における昇給の役割としては、主に次の3つが挙げられます。

 

<昇給の主な役割・効果>

  •  従業員の労働意欲の維持やアップ
  •  従業員の生活水準の維持
  •  企業経営の安定化など

 

また、昇給と混同しがちなのが「昇格」と「昇進」というビジネス用語です。これらと昇給との違いも押さえておきましょう。

昇格との違い

昇格は、自社内での等級がアップすることを指します。具体的には「一般職◇等級」や「総合職□等級」といった形で社内での地位がアップします。昇格の際には業務内容もより重要で責任の重いものを任せられるようになり、これにともない昇給も行われることがほとんどです。

昇進との違い

昇進とは、職位(社内での地位)がアップすることを指します。「課長」「部長」「専務」などの肩書きがつき、社外的にも社内での地位を表すことができるようになるのです。対する昇格は、社内での評価に限られます。また、昇進についても、昇給をともなうことがほとんどです。

【昇給とは】昇給の種類

考える女性

昇給制度には次のような種類があり、それぞれ特徴があります。

 

  1.  定期昇給
  2.  自動昇給
  3.  考課昇給
  4.  臨時昇給
  5.  普通昇給
  6.  特別昇給

 

それでは、ひとつずつ見ていきましょう。

【昇給の種類】①定期昇給

定期昇給とは、勤続年数、年齢といったものを基準に設定して、企業の給与規定で定められた時期に定期的に行われる昇給のことです。国内企業ではこの定期昇給制度を導入しているところが多いですが、企業によっては業績次第で定期昇給の採用の有無を決定するケースもあるようです。

【昇給の種類】②自動昇給

勤続年数、年齢といったものを基準に設定して、きちんと勤続していれば自動的に行われるのが自動昇給です。企業の業績、従業員の実績や能力などに左右されず、すべての従業員が対象となり、自動的に昇給します。

自動昇給制度を実施している企業では、将来の給与の予測がおおよそできることから、企業と従業員の双方にさまざまなメリットをもたらすのです。一方、業績が上がらない場合でも昇給するため、モチベーションの維持やアップにはつながりにくいというデメリットもあります。

【昇給の種類】③考課昇給

考課昇給とは、従業員の業績、勤務に対する姿勢などの評価をもとに行われる昇給です。「考課昇給+定期昇給」とする企業の場合には、定期的に行われる査定評価が、昇給の有無や昇給率へ大きな影響を与えます。

考課昇給制度は業績が給与に反映されるため、従業員のモチベーション維持・アップにつながるのがメリットですが、査定業務で手間や人件費がかかるのがデメリットだといえるでしょう。

【昇給の種類】④臨時昇給

企業の業績が好調だったときに「臨時的に」行われるのが臨時昇給です。昇給時期はとくに定められていないことが特徴だといえます。昇給の対象が全員の場合には基本給が上がることになりますのでベースアップとなり、功労や実績が高く評価された一部の従業員のみを対象に行う場合には特別昇給となります。

【昇給の種類】⑤普通昇給

従業員個人が持つ技能・職務遂行能力・業務成績などが、企業で規定している昇給要件を満たした際に適用されるのが普通昇給です。普通昇給の対象は従業員一律ではなく、個人であることが特徴です。

【昇給の種類】⑥特別昇給

特別昇給とは、自社への特別な功労、特殊業務への従事といった、普通昇給の範囲を超えて格段の実績を企業へ与えたような特別な場合に行われる昇給となります。こちらも従業員全員ではなく、個人を対象とする昇給です。

【昇給とは】「昇給」と「ベースアップ」は異なるもの

電卓とフィギュアと札束

賃金の改定制度には、実は「昇給」以外にも「ベースアップ」というものもあります。昇給とベースアップは次のような点で異なります。

昇給の対象は基本的に従業員個人であり、業績アップや勤務姿勢などがその理由です。対するベースアップは、社会の物価上昇などを理由に、すべての従業員を対象に基本給等の水準を引き上げることを指します。

具体的には、学歴や年齢、勤続年数、職務、職能といったもので定められた企業の給与規定や賃金表を改訂し、従業員全員の給与を一律でアップさせることになります。

ベースアップを導入するメリットは、従業員へ利益分配が可能になることです。ただし、企業側としては固定費が大幅にアップすること、給与規定の改定後は再改定がしにくいことなどが挙げられるでしょう。

【昇給とは】日本企業の昇給実施率について

オフィス

では、日本企業における昇給額や昇給率は一般的にどのくらいなのでしょうか。厚生労働省の行った「令和四年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」から見ていきましょう。

令和四年度において、定期昇給制度を導入している企業は全体の約7割以上となっています。ただし、定期昇給制度を実際どのくらい実施しているかの割合は、一般職のほうが高いようです。

【定期昇給制度の有無、実施状況(管理職、一般職別)】

  管理職 一般職
定期昇給制度なし 25.60% 18.90%
定期昇給制度あり 70.90% 78.00%
定昇ありの企業 行った・行う 64.50% 74.10%
行わなかった・行わない 5.80% 3.30%

参照:厚生労働省「令和四年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」

 

【日本企業における昇給実施率】業種別で見たとき

次に、業種別で昇給実施率を見てみましょう。建設業、製造業、情報通信業、不動産業、物品賃貸業、学術研究、専門・技術サービス業などでは、管理職および一般職でも定期昇給の実施率が約7割を超えています。

一方、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業、サービス業(他に分類されないもの)では、ともに5割程度と低くなっていることがわかります。

【定期昇給制度の実施率(業種別、行った、行う)】

業種 管理職 一般職
鉱業、採石業、砂利採取業 58.50% 72.00%
建設業 77.80% 83.70%
製造業 74.20% 83.00%
電気・ガス・熱供給・水道業 38.90% 75.20%
情報通信業 75.00% 83.50%
運輸業、郵便業 53.10% 66.60%
卸売業、小売業 69.10% 75.90%
金融業、保険業 65.00% 77.50%
不動産業、物品賃貸業 77.80% 85.80%
学術研究、専門・技術サービス業 73.00% 79.80%
宿泊業、飲食サービス業 47.70% 56.90%
生活関連サービス業、娯楽業 43.50% 57.40%
教育、学習支援業 54.40% 65.20%
医療、福祉 63.40% 65.60%
サービス業(他に分類されないもの) 43.00% 59.00%

参照:厚生労働省「令和四年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」

 

【日本企業における昇給実施率】企業の規模別で見たとき

昇給制度の実施率を企業規模別で見てみると、管理職では300~999人の小規模企業が、一般職では5,000人以上の大規模企業が、最も高くなっていることがわかります。100~299人の極小規模企業では、管理職、一般職ともに一番低い実施率となっています。

【定期昇給制度の実施率(企業規模別、行った、行う)】

企業規模 管理職 一般職
5,000人以上 65.10% 84.30%
1,000~4,999人 68.10% 81.40%
300~999人 68.80% 80.30%
100~299人 62.70% 71.30%

参照:厚生労働省「令和四年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」

 

まとめ

昇給とは、勤続年数、実績、年齢などの変化に対して従業員個人の基本給をアップさせることを指し、設定のしかたで従業員のモチベーションアップや維持につながる大切なものです。ご紹介したようにいくつか種類がありますので、うまく使い分けていくことで、企業としても経営の安定化を図ることができます。

各昇給制度に関する給与計算などに不明点や疑問点がある方、お悩みの方は、株式会社 Office Followまでお気軽にご相談ください。