2024年05月10日

出勤簿を作成する目的とは?記載すべき項目や保存期間などを一挙開設

出勤簿

出勤簿は従業員の出社状況を確認するだけではなく、労働基準法を守れているかを確認するうえでも重要な書類です。出勤簿は全企業で作成が義務付けられている書類なので、使用者は今一度、記載すべき項目に漏れがないか確認しておきましょう。

今回は、出勤簿を作成する目的や作成時に盛り込むべき項目、保存期間などを一挙解説していきます。

出勤簿を作成する目的とは

出勤のブロック

出勤簿を作成する目的としては、主に以下の2点が挙げられます。

 

<出勤簿を作成する目的>

  •  実務時間や休憩時間を正確に把握するため
  •  時間外労働や休日出勤を正確に把握するため

 

出勤簿は、労働者に対して適切な休日や休憩時間を与えたり、給料を支払ったりするための重要な書類です。

労働者の勤務状況を正確に把握していない場合、労働基準法の第119条に基づき、懲役6ヶ月または30万円以下の罰金刑に処される場合もあるので、使用者は出勤簿を作成する目的を正しく理解しておきましょう。

実務時間や休憩時間を正確に把握するため

出勤簿を作成する目的のひとつは、労働者の働いた時間や休憩時間を正確に把握するためです。労働基準法の第32条・34条では、労働時間と休憩時間に関して、以下の内容を明記しています。

 

  •  休憩時間を除き、1週間で40時間(1日8時間)以上働かせてはならない
  •  労働時間が1日6時間を超える場合は最低45分、8時間を超える場合は最低1時間の休憩時間を与えること

 

出勤簿に、始業開始時刻や終業時刻、休憩時間を明記することで、1日の実務時間を把握できます。労働基準法では、実務時間の上限や休憩時間の最低水準が決められているので、出勤簿を作成すれば、適法の範囲内で従業員に働いてもらうことが可能です。

時間外労働や休日出勤を正確に把握するため

出勤簿を作成する目的には、時間外労働や休日出勤の実態を正確に把握することも含まれています。労働基準法の第35条・36条では、休日の日数や時間外労働および休日出勤について以下のように決められています。

 

  •  労働者に対し、1週間に最低1日または、4週間で4日以上の休みを与えること
  •  時間外労働の上限は、1ヶ月45時間(1年360時間)
  •  月45時間以上の時間外労働は、1年で6ヶ月まで
  •  時間外労働に休日出勤が含まれる場合は、月100時間未満(2~6ヶ月間は、1ヶ月あたり平均80時間)が上限

 

出勤簿に残業時間や休日労働時間を記載することで、労働者が法定時間をオーバーして働いていないか、過度な残業を行っていないかがわかります。厚生労働省は働き方改革の一環として、時間外労働の上限規制を2019年4月から施行していますから、使用者は把握しておきましょう。

出勤簿に記載すべき6つの項目

チェックリスト

出勤簿にはテンプレートが用意されているわけではないので、各企業が自由なフォーマットで作成してかまいません。ただし、出勤簿は労働者の勤務形態を把握するための書類ですから、出勤簿を作成する際は、最低でも以下6つの項目を入れておきましょう。

 

<出勤簿に記載すべき項目>

  •  始業時刻と終業時刻
  •  休憩時間
  •  総労働時間
  •  残業時間
  •  休日労働時間
  •  深夜労働時間

 

それぞれどのような項目なのか、解説していきます。

始業時刻と終業時刻

始業時刻は仕事をはじめた時間、終業時刻は仕事を終えた時間です。労働基準法では1日8時間以上の労働は時間外労働にあたるため、実務時間を把握するためにも、始業時刻と終業時刻の記載は必須といえます。また、遅刻の有無を把握するためにも重要な情報ですから、正確に記載しましょう。

休憩時間

休憩時間とは、仕事の合間で休憩した時間の合計です。

労働基準法では、1日6時間以上働いた場合に最低45分間、8時間以上働いた場合に最低1時間の休憩を仕事の合間に設けるよう制定しています。そのため、休憩時間を記載しておけば、適正範囲で休憩時間を確保できているか確認できるのです。

ただし、労働基準法では休憩時間の定義を「業務から完全に解放された自由時間」としています。休憩時間中に仕事を依頼したり、車の中で待機させたりして自由時間を奪った場合、休憩時間ではなく労働時間としてカウントされますので、使用者は注意をしてください。

総労働時間

総労働時間とは、拘束時間から休憩時間を引いた実務時間です。労働基準法では、原則1日8時間以上の労働を強いると違法になるので、総労働時間を記載する項目があれば、一目で適法の範囲で働いているか確認できます。

残業時間

残業時間とは、時間外労働のことです。1日8時間以上(週40時間以上)の労働は、残業時間としてカウントされます。

使用者は労働者に時間外労働をさせた場合、通常賃金の25%~50%の範囲内で割増賃金を支払う必要があるので、把握しておきましょう。

また、時間外労働の上限は、1ヶ月45時間(1年360時間)までとし、月45時間以上の時間外労働は、1年で6ヶ月までというルールもあります(休日出勤も行った場合は、合計月100時間未満が上限)。割増賃金を支払っていても上限をオーバーして働かせた場合、使用者に罰則が与えられますので、注意が必要です。

休日労働時間

休日労働時間とは、企業が定めた休日に出勤した日の労働時間です。休日に出勤を命じた場合、使用者は労働者に対し、通常賃金の35%以上の割増賃金を支払う必要があるので、出勤簿に記載があった場合は、その分の賃金を支払います。

ただし、事前に休日出勤に対して振替休日を指定していた場合、割増賃金は発生しません。

深夜労働時間

深夜労働時間とは、22時~翌5時の間の実務時間です。労働基準法第37条では、22時~翌5時までを深夜労働時間と定めており、この時間で働いた労働者には、通常賃金の25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。

出勤簿に深夜労働時間の記入欄があると割増賃金の計算がしやすいので、夜勤がある職種は必ず項目に組み込んでおきましょう。

出勤簿に関するQ&A

はてなマークと持つ女性

最後に、出勤簿に関する質問について回答していきます。

Q.タイムカードは出勤簿代わりになる?

A.なりません。

タイムカードでは始業時間と就業時間しか把握できないので、休憩時間や休日出勤などがわかりません。また、タイムカードは個人で打刻するケースが多く、正確な時間が記録されているか補償できない点からも、出勤簿代わりとして利用できない理由です。

タイムカードはあくまでも補助資料に過ぎないため、従業員の勤務形態を把握するためには、出勤簿を作成しましょう。

Q.出勤簿は手書きでもいい?

A.手書きの出勤簿は違法ではありませんが、おすすめしません。

2019年4月より、労働時間の把握は客観的な記録で行うことが義務化されました。客観的な記録とは、タイムカードや勤怠管理システムなど、個人で労働時間を改ざんできない状態で行われた記録です。

手書きで出勤簿を作成することも可能ですが、その場合は労働者や管理者に対する十分な説明を行ったのち、正確な情報が記載されていることを常時確認しなければなりません。手書きの出勤簿は改ざんもされやすく、書き間違いなどのミスも起こりやすいので、なるべく利用しないほうがいいでしょう。

Q.出勤簿の保管期間は?

A.5年です。

労働基準法第109条では、労働関係の重要書類を5年間保管することが義務付けられています。ただし、保管の起算点は書類ごとに最後の記載があった日です。勤務開始から5年ではないので、その点に注意をしましょう。

Q.出勤簿はハンコを押すだけでも良い?

A.捺印だけでは出勤簿として認められません。

出勤簿は従業員の労働時間や休憩時間、出勤日などを正しく把握するための書類です。そのため、ハンコを押しただけの出勤簿は従業員の勤務形態が確認できないことから、出勤簿として認められません。出勤簿は、勤怠管理システムやエクセルなどを活用し、細かく時間を記入していきましょう。

まとめ

出勤簿は、従業員に適法の範囲内で働いてもらうための重要書類です。労働基準法を違反した場合、使用者は処罰を受ける可能性もあるので、従業員の勤務状況は、出勤簿で細かく確認しましょう。

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