2024年05月07日

会社には退職を何日前までに伝えなければいけないの?法律的なルールに基づいて詳しく解説します

退職届を出す様子

「従業員が退職する」となった場合、事業主(企業)側としては、人員を補充する、補充人員を募集する、引き継ぎ作業をしっかり行うなど、さまざまな業務を行うことになります。人事担当者としては、従業員からの突然の退職希望で慌てないようにするためにも、退職に関する法律上のルールや発生する業務について把握しておくようにしたいものです。

そこで今回は、従業員が退職する場合について、法律上では退職を何日前に伝えてもらうべきなのか(雇用形態別)、事業主(企業)側からの退職勧告は何日前までが常識なのか、退職するまでの流れや注意点について、わかりやすく解説していきます。

【退職するとき】法律上のルールはあるの?

考える女性

従業員が退職を希望する場合、労働基準法では退職届についての規定はありません。ただし、民法上では「原則として、2週間前までには会社へ退職の意思を伝えなければならない」と定められています(民法第627条)。

参考:「民法」第六百二十七条

ただし、雇用形態によって次のように少々異なりますのでご注意ください。

【退職を会社へ伝える時期】正社員の場合

正社員など期間の定めのない従業員の場合、民法第627条が適用されますので、退職希望日よりも2週間前には、会社へ意志を伝えてもらう必要があります。業務の引き継ぎ作業などを考えると、1ヶ月ほど前に退職届を提出してもらうのがベストでしょう。

正社員
(期間の定めのない従業員)
退職の意思を伝えるのはいつでも可能。
ただし、伝えた日より2週間経過後に退職となる。 

参考:「民法」第六百二十七条

【退職を会社へ伝える時期】年棒制社員の場合

労働期間(6ヶ月以上)に応じて報酬を定めている年棒制社員の場合には、民法第627条3が適用され、退職希望日よりも3ヶ月前には会社へ意志を伝えてもらう必要があります。

年棒制正社員
(期間に応じて報酬を定めた従業員)
退職の意思は3ヶ月前までに行わなければならない。 

参考:「民法」第六百二十七条3

【退職を会社へ伝える時期】雇用期間が定められている従業員(契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなど)の場合

契約社員でも雇用期間の定めのある従業員の場合は、民法第627条が適用されませんので、雇用契約書にて退職時についてのルールを明記しておく必要があります。また、就業規則にも記載しておくと安心です。

このような有期雇用の労働者は、原則として雇用期間の満了前には退職できないことになっています(やむを得ない理由を除く、民法第628条)。ただし、雇用期間が定められていても、その期間が1年超の従業員は、労働期間の1年を経過した日以後に、いつでも退職を申し出ることが可能です(労働基準法第137条)。

契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなど
(雇用期間を定めている場合)
・雇用契約書、就業規則にて退職時のルールを明記しておく必要がある。
・雇用期間の満了前には退職できない
(やむを得ない理由がある場合は除く)
・1年超の雇用期間の定めがある場合は、1年経過後にいつでも退職を申し出ることが可能

参考:「民法」第六百二十八条「労働基準法」第百三十七条

【事業主(企業)側からの退職勧告】何日前までが常識?

就業規則とはてなマーク

従業員からだけではなく、会社側から退職勧告を行うケースもあります。この場合には労働基準法20条に従い、30日以上前に退職勧告を行う必要があります。それが難しい場合には、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。解雇の予告については、社会通念上での正当な理由も必要です。

会社側から従業員への退職勧告 ・30日以上前に解雇予告を行う必要がある(原則)
・または、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要がある

参考:「労働基準法」第二十条

従業員が退職するまでの流れ

こちらでは、従業員が退職するまでのおおまかな流れをご紹介します。次の4ステップで進めていきましょう。

 

【退職までの流れ(例)】

  1.  従業員と上司の間で退職日を相談し決定する
  2.  従業員が退職届を作成、人事担当へ提出する
  3.  業務の引き継ぎの準備を進める
  4.  退職の準備(有給休暇の消化など)

 

退職の意志表示については、口頭でもOKです。ただし、後々のトラブル発生を防ぐためにも、日付入りの文書や確認メールを残しておくことをおすすめします。また引き継ぎを考えて、できるだけ早めに意志を受け取り、段取りしていくことが大切です。

退職届については、法律上で決められた書式はありませんが、就業規則でフォーマットを指定しておくと労使双方が進めやすいでしょう。

退職届に関して知っておきたい注意点とは

有休消化のブロック

人事担当で従業員の退職に関してよく聞かれるトラブルは、次の2つです。ぜひ押さえておきましょう。

有給休暇の消化希望は原則として断れない?

退職予定者が「消化しきれなかった有給休暇を退職前に消化したい」と希望するケースは多いです。事業の運営に大きな影響をおよぼすことがないと判断される場合には、退職予定に関係なく「未消化分の有給休暇の消化は認める必要がある」とされています。

そのため、退職日が決まっている従業員の希望があれば、未消化分の有給休暇については消化の方向で進めましょう。

引き継ぎを行わない退職者に損害賠償請求はできる?

退職予定者がきちんと引き継ぎを行わなかった場合、その後の業務の遂行に支障をきたし、会社側が経済的な損失を被るというケースもあります。このようなケースでは、退職者への損害賠償請求が考えられるのです。しかし「引き継ぎしなかった事実と損害の関係」を証明する必要があるため、実際には困難であるとされています。

このような状況を予防するためにも、退職予定者と引き継ぎについての段取りをしっかりと決めておき、実施してもらうようにしましょう。

まとめ

従業員が退職を希望する場合、労働基準法では退職届についての規定はありませんが、民法上では「原則として、2週間前までには会社へ退職の意思を伝えなければならない」と定められています。ただし、パートなど有期雇用の従業員など、雇用形態によって異なりますので、雇用形態に沿ったルールを覚えておきましょう。

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