欠勤控除とは?適用できる範囲や計算方法、注意点などを解説
欠勤控除とは、なんらかの事情により欠勤した従業員の賃金の一部を差し引ける制度です。ノーワークノーペイの原則により、所定の条件を満たす場合に限り、欠勤控除を適用できます。
しかし欠勤控除には適用外となるケースもあり、過剰に適用すると労働基準法違反となるため要注意です。この記事では欠勤控除について基本から詳しく解説し、計算方法や適用時の注意点などについて解説します。
欠勤控除とはなにか
欠勤控除とは、従業員が欠勤した日数もしくは時間分の賃金を、給与から差し引く制度です。給与明細には「欠勤控除」として差し引いた金額を明記する必要があります。
企業によっては1日単位の欠勤に対して「欠勤控除」、遅刻や早退に対して「不就労控除」と区分けする例も見られますが、いずれも法律上の扱いは変わりません。
欠勤控除のベースは「ノーワークノーペイ」
欠勤控除のベースは「ノーワークノーペイ」の原則により成り立っています。これは「従業員が働いていない分に対して企業が賃金を支払う必要がない」との原則です。労働基準法などにより定められてはいないものの、この概念は一般に広く認知されています。
欠勤控除を適用すべきケース
欠勤控除を適用すべきケースは主に3つです。以下の事情により従業員が欠勤または早退・遅刻する場合は、当該従業員の一部の給与を差し引けます。
<欠勤控除を適用すべきケース>
- 病気などの体調不良により一時的に欠勤した場合
- 育児目的で早退した場合
- 正当な欠勤の理由があるものの有給休暇を使い切っている場合
順番に確認していきましょう。
病気などの体調不良により一時的に欠勤した場合
風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルスへの罹患などが原因で体調不良に陥り、欠勤扱いとなった場合は、欠勤控除の適用が認められます。なお、一部の企業が設けている「生理日休暇」などを適用する場合は、欠勤控除の例外です。
育児目的で早退した場合
保育園や幼稚園などへの送迎により早退・遅刻・欠勤が生じた場合も、欠勤控除を適用することが可能です。同様の事情により欠勤が繰り返される場合は、時間単位の有給取得を認めるなどの対策をとると、従業員にとってより働きやすい環境を生み出せます。
正当な欠勤の理由があるものの有給休暇を使い切っている場合
欠勤の理由として正当な事情が認められるものの、当該従業員が有給休暇を使い切っている場合は、欠勤控除を適用できます。一例としては「裁判員裁判への参加により早退・遅刻・欠勤が必要となった場合」などです。
欠勤控除の適用外となるケース
以下の事例は欠勤控除の適用外となるため、注意しましょう。詳しくは後述しますが、欠勤控除を誤って過剰に適用した場合は、労働基準法に違反する恐れがあります。
<欠勤控除の適用外となるケース>
- 有給休暇により欠勤した場合
- 会社都合により欠勤した場合
それぞれの事例を詳しく見ていきましょう。
有給休暇により欠勤した場合
従業員が有給休暇を取得した場合は、欠勤控除の適用ができません。会社は労働基準法や就業規則に基づき、規定どおりの賃金を従業員に支払う義務を負います。
会社都合により欠勤した場合
会社都合により、もともとの出勤日を休業とした場合も、欠勤控除の対象に含むことができません。ただし、自然災害などの天災が原因で休業せざるを得ない場合に限り、従業員へ賃金を支払う義務はなくなります。
欠勤控除の計算方法
欠勤控除を適用する場合、給与を計算する方法は状況により異なります。下記3つのシチュエーションにわけて、計算方法の詳細を確認しておきましょう。
<欠勤控除の計算方法>
- 欠勤時には日割りを用いる
- 遅刻・早退の場合は給与を労働時間で割る
- 各種手当の扱いは就業規則による
順番に解説します。
欠勤時には日割りを用いる
従業員が欠勤した場合は、1日分の給与を日割りで計算した上で控除します。具体的な計算方法は次のとおりです。
<計算方法>
- 当該従業員の月給÷1ヶ月あたりの所定労働日数
仮に月給25万円の社員が欠勤し、所定労働日数が22日間だった場合は、250,000円÷22=11,364円を1日あたりの欠勤控除の上限とします。
遅刻・早退の場合は給与を労働時間で割る
遅刻・早退の場合は、1時間分の給与を算出し、欠勤した時間分を上限として控除します。具体的な計算方法は次のとおりです。
<計算方法>
- (当該従業員の月給÷所定労働日数)÷所定労働時間×欠勤時間
月給25万円の社員が欠勤し、所定労働日数が22日、所定労働時間が8時間の場合でシミュレーションします。この場合は250,000円÷22=日給11,364円で、11,364円÷8時間で時給は1,420円です。仮に2時間欠勤した場合は、1,420円×2で2,840円を欠勤控除できます。
各種手当の扱いは就業規則による
通勤手当をはじめとする各種手当の扱いに関しては、企業ごとの就業規則により異なります。控除対象として含める手当・含めない手当を精査し、事前に就業規則に明記しましょう。
欠勤控除を適用する際の注意点
欠勤控除に適用ミスが生じると、最悪の場合は労働基準法に違反する恐れがあるため要注意です。その他の注意点に関しても、この項目にまとめます。
<欠勤控除を適用する際の注意点>
- 欠勤控除を過剰に適用すると労働基準法に違反する
- 就業規則に欠勤控除のルールを記載する
- 最低賃金を下回ってはいけない
- みなし残業を採用する場合は計算が複雑になる
順番に確認しておきましょう。
欠勤控除を過剰に適用すると労働基準法に違反する
欠勤控除を適用できるのは、当該社員が実際に欠勤した日数あるいは時間のみです。たとえば2時間の遅刻に対して1日分の欠勤を適用すると、労働基準法違反となるため注意しましょう。
就業規則に欠勤控除のルールを記載する
欠勤控除は労働基準法により定められた明確なルールではなく、会社が独自に決定するものです。従業員との間で、欠勤控除の解釈を巡るトラブルが発生する可能性があるため、就業規則に明確なルールを記載して周知しましょう。
最低賃金を下回ってはいけない
欠勤控除を差し引いた後に支払う賃金が、最低賃金を下回ってはいけません。所定労働日数が多い月間の場合、控除後に時給換算した金額が最低賃金を下回る可能性があるため要注意です。
みなし残業を採用する場合は計算が複雑になる
みなし残業代に関しても欠勤控除の対象となりますが、この場合はみなし残業代の金額と実際の残業代を比較し、超過分の発生の有無を調べる必要が生じます。計算が複雑になるため、会計ソフトを活用するなどの対策が必要なケースが多いです。
まとめ
欠勤控除とは、従業員の欠勤状況に応じて、一定の範囲内で当該従業員の給与を差し引く制度です。欠勤控除は柔軟に適用できますが、過剰に適用すると労働基準法に違反します。また、従業員とのトラブルを未然に防ぐためには、就業規則に欠勤控除の条件を明記することも重要なポイントです。
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