2024年04月30日

デジタル給与とは?中小企業へのメリット・デメリットや導入の流れを解説

給与明細書とスマホ

2023年4月より、デジタル給与による賃金の支払いが解禁されました。これにより、デジタル給与による支払いを希望する従業員に対して、会社は賃金の一部または全部をデジタルマネーで支払えます。

従業員の要望などにより、今まさにデジタル給与の導入を検討している企業も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、会社側・従業員側の双方から見たデジタル給与のメリット・デメリットや、デジタル給与を導入するまでの基本的な流れを解説します。

デジタル給与とは

デジタル給与とは、従業員の給与のうち一部もしくは全部を、電子マネーをはじめとするデジタルマネーで支払う制度です。日本国内では2023年4月の労働基準法改正に伴って解禁となり、すでにデジタル給与の制度をスタートさせている企業も存在します。

日本政府は2025年までにキャッシュ列決済比率を40%以上に引き上げることを目指しており、デジタル給与の導入もこの一環と考えられます。

デジタル給与として支給される報酬の具体例

デジタル給与では、銀行以外の貸金移動業者による送金を活用します。日本国内で普及しているサービスの中で、具体例として挙げられるのは次のとおりです。

 

<代表的なデジタル払いのサービス>

  • PayPay
  • LINE Pay
  • 楽天Pay
  • PayPal

 

デジタル給与を導入するメリット

給与デジタル払い

デジタル給与を導入するメリットは、会社側・従業員側の双方にあります。先進的なデジタル給与の導入により見込めるメリットは、次のとおりです。

【デジタル給与を導入するメリット】

会社側 従業員側
・振込手数料を抑えられる
・企業イメージが向上し雇用促進につながる
・支払い時の利便性が高まる
・一部のみをデジタル給与に指定することも可能

それぞれ順番に解説します。

会社側のメリット①振込手数料を抑えられる

従来の銀行振込と比較して、振込手数料を抑えられる可能性が高いです。デジタル給与の支払いで利用する資金移動業者は、銀行よりも安い振込手数料に設定している場合が多いため、従業員数が多い企業にとっては経費を削減しやすくなります。

会社側のメリット②企業イメージが向上し雇用促進につながる

デジタル給与を導入している企業はまだ少なく、導入する企業には先進的なイメージがつきます。内外に向けて企業の先進性をアピールできるため、優秀な人材の確保や、人材流出リスクの低下などの効果に期待できることもメリットです。

従業員側のメリット①支払い時の利便性が高まる

日常の買い物で「PayPay」や「LINE Pay」などの電子マネーを使う人は増えており、今や現金をほとんど持ち歩かないという人も少なくありません。そういった人がデジタル給与を受け取れるようになれば、現金をキャッシュレス化する手間を省けるため、支払い時の利便性が高まります。

従業員側のメリット②一部のみをデジタル給与に指定することも可能

現金とデジタル給与の配分は、従業員みずからが決められます。たとえば「月給のうち10万円を現金で、残りはすべてデジタル給与で」と指定することも可能です。たとえば家賃などのキャッシュレス決済ができないお金は現金で受け取るといった応用も利かせられるため、ライフスタイルに合わせて資金を管理できます。

デジタル給与を導入するデメリット

DEMERIT

デジタル給与には会社と従業員双方にメリットがありますが、一方でいくつかのデメリットも無視できません。具体的には以下の4つがデジタル給与の注意点です。

【デジタル給与を導入するデメリット】

会社側 従業員側
・給与の支払いに手間がかかる
・管理コストが上がる
・セキュリティ対策が必須になる
・入金には限度額がある

順番に確認しておきましょう。

会社側のデメリット①給与の支払いに手間がかかる

デジタル給与は銀行振込と併用するケースが一般的です。それぞれに対応するために二重の手間がかかる可能性が高く、担当部署の負担が増してしまいます。

会社側のデメリット②管理コストが上がる

デジタル給与の導入に伴い、同意書の作成や管理などの業務が必要になります。従業員一人ひとりの振込先も追加で管理しなければならず、管理コストが上がる可能性が高いです。また、銀行振込との併用により、振込手数料が二重でかかる場合がある点にも注意しなければなりません。

従業員側のデメリット①セキュリティ対策が必須になる

電子マネーには不正利用のリスクがあるため、スマホやPCのセキュリティ対策が必須です。また、デバイスを紛失した場合の対策も、事前に決めておかなければなりません。

従業員側のデメリット②入金には限度額がある

資金移動業者に入金できる金額には限度額があり、100万円以上の資金は預けられないため注意しましょう。もしも1ヶ月の給料が100万円を超える場合、超過分は指定した銀行口座に振り込まれるため、給料の支払い先は強制的に分割されてしまいます。

デジタル給与を導入するまでの流れ

ステップとスーツを着た男性

現在進行形でデジタル給与の導入を検討している企業や担当者の方も、多いのではないでしょうか。そんな方に向けて、デジタル給与を導入するまでの基本的な流れを4つのステップに分けて解説します。

 

<デジタル給与を導入するまでの流れ>

  1. 資金移動業者を決定する
  2. 労使協定を締結し、就業規則を改定する
  3. 従業員に周知する
  4. 同意書の提出を受け付ける

 

順番に見ていきましょう。

①資金移動業者を決定する

まずは利用する資金移動業者を決定します。業者は自由に決められるわけではありません。厚生労働大臣が指定する業者を指名する必要があるため、厚生労働省のHPを参考にしながら、勤怠管理システムなどと連携できる業者に決定しましょう。

②労使協定を締結し、就業規則を改定する

労働組合もしくは従業員のうち過半数の代表者と、労使協定を締結します。この際に決めるべきことは以下のとおりです。

 

<労使協定で決めるべきこと>

  • 資金移動業者
  • デジタル給与を支給する従業員の範囲
  • デジタル給与で支給する金額
  • デジタル給与の支給を開始する時期

 

労使協定の締結後は就業規則を改定します。具体的には、給与規定の項目において、デジタル払いに対応することや、口座振替と併用する場合のルールなどを盛り込んでください。

③従業員に周知する

デジタル給与を導入する時期などを、対象となる社員に対して周知します。この際は不正出金等のリスクがあることについても、わかりやすく説明するよう意識してください。

④同意書の提出を受け付ける

デジタル給与による支払いを希望する従業員からの同意書を受け取ります。雛型は厚生労働省のHPに掲載されていますが、主な記入項目は「デジタル給与で受け取りを希望する金額」「口座番号」「上限となる100万円を超過した場合の残金振込先」などです。

まとめ

2023年4月より、デジタル給与による給料の支払いが解禁されました。会社がデジタル給与を導入した場合、同意書を提出した従業員に対しては、PayPayなどの厚生労働省により認められた資金移動業者を利用した給与の支払いが可能になります。

デジタル給与を導入する際は、労使協定の締結や就業規則の改定といった手続きが必須です。株式会社Office Followでは、これらの業務のサポートを行っておりますので、制度の円滑な導入を目指す際は、当事務所のサービスをご利用くださいませ。