アルバイトにも有給休暇の付与は必須?義務化に伴う注意点や罰則などを解説
有給休暇はすべての従業員に付与されるものです。雇用形態とは無関係なため、アルバイト・パートタイマーの従業員に対しても、会社側には有給休暇を与える義務が生じます。
この記事には、アルバイトが有給休暇を取得するための条件や取得できる日数、有給中の賃金の計算方法などをまとめました。アルバイトの有給休暇に関する注意点や、義務に違反した場合の罰金についても交えながら、わかりやすく解説します。
アルバイトにも有給休暇を付与する義務がある
そもそも有給休暇は、雇用形態とは関係がなく、一定の条件を満たしたすべての従業員へ付与する義務を持つものです。アルバイトやパートタイマーにとっても、有給休暇の取得は当然の権利となるため、経営者の方々は注意しなければなりません。
アルバイトが有給休暇を取得するための条件は2つ
アルバイト・パートタイマーが有給休暇を取得するための条件は、以下の2つです。
<有給の取得条件について>
- ①採用後に6ヶ月以上にわたり継続的に勤務していること
- ②一定期間にわたり所定の出勤日のうち8割以上の出勤率が認められること
上記の条件をいずれも満たす場合は、アルバイト・パートタイマーの従業員も有給を取得する権利を得ます。
アルバイトの有給休暇日数は所定労働日数と継続勤務年数で決まる
アルバイト・パートタイマーの有給休暇日数は、条件により変動します。
【付与される有給の日数一覧表】
週所定労働日数 | 年所定労働日数 | 勤続勤務年数 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
6ヶ月 | 1年6ヶ月 | 2年6ヶ月 | 3年6ヶ月 | 4年6ヶ月 | 5年6ヶ月 | 6年6ヶ月以上 | ||
4日 | 169~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
フルタイムで働く正社員と比較すると付与日数が減りますが、年間48日以上働いた人の場合は、継続勤務年数に応じた有給休暇を得られます。
アルバイトの有給休暇取得時に支払う賃金の計算方法は3種類
アルバイト・パートタイマーの有給休暇取得時に支払う賃金の計算方法は、以下のうちいずれかです。
<3種類の計算方法>
- 平均賃金をベースに計算する方法
- 通常賃金をベースに計算する方法
- 標準報酬月額をベースに計算する方法
それぞれ計算式を用いながら、シミュレーションも交えてご紹介します。
平均賃金をベースに計算する方法
アルバイト・パートタイマーの場合、勤務日数が月ごとに異なる可能性が高いです。そのため、直近3ヶ月の平均賃金をベースに金額を計算するケースが多く見られます。計算方法として用いられるのは以下の2つで、AまたはBのうち高い方を採用するケースが一般的です。
<平均賃金をベースにした計算方法>
- (A)直近3ヶ月で支払った合計の賃金÷直近3ヶ月の全日数
- (B)直近3ヶ月で支払った合計の賃金÷直近3ヶ月の労働日数×0.6
一例として、合計賃金が50万円、全日数が90日、労働日数が40日として計算します。
- (A)50万円÷90=5,556円
- (B)50万円÷40×0.6=7,500円
この場合はより高いBの計算を採用するため、1日あたりの賃金は7,500円です。
通常賃金をベースに計算する方法
所定労働時間に変動がない場合は、通常賃金をベースに計算します。計算方法は以下のようにシンプルです。
<通常賃金をベースにした計算方法>
- 時給×所定労働時間
仮に時給が1,100円で、所定労働時間が4時間ならば、1,100×4=4,400円となります。
標準報酬月額をベースに計算する方法
保険料の支払いで用いる標準報酬月額をベースに計算する場合もあります。計算方法は次のとおりです。
<標準報酬月額をベースにした計算方法>
- 標準報酬月額÷30
仮に標準報酬月額が11万円の場合、110,000÷30=3,667円がアルバイトの有給取得時に支払う給与です。ただし、上記の方法で給与を計算できるのは、アルバイトの従業員が健康保険に加入している場合のみとなります。
アルバイトの有給休暇に関する注意点
アルバイトの有給休暇に関する注意点は、次の4つです。
<アルバイトの有給休暇に関する注意点>
- 年次有給休暇管理簿の作成が必須となる
- 最低5日の有給消費義務が生じる可能性がある
- 義務に違反した場合は30万円以下の罰金が科せられる
- 時季変更権の発動には注意が必要
順番に解説します。
年次有給休暇管理簿の作成が必須となる
会社側は、アルバイトによる有給休暇の取得情報を「年次有給休暇管理簿」に記録しなければなりません。この管理簿には、正社員を含むすべての従業員ごとの有給休暇取得時期や基準日などを記します。
なお、年次有給休暇管理簿は、古い記録からさかのぼって3年間にわたり保存する義務があるため注意しましょう。紛失や盗難といったリスクを減らすためには、データ上で管理することをおすすめします。
最低5日の有給消費義務が生じる可能性がある
2019年4月の労働基準法改正により、年間有給付与日数が10日を超える従業員に対しては、年間5日間の有給休暇を取得させることが義務付けられました。週3日勤務のアルバイトは5年6ヶ月以上、週4日勤務のアルバイトは3年6ヶ月以上継続勤務すると、この条件を満たします。
義務に違反した場合は30万円以下の罰金が科せられる
先述した有給休暇の取得義務を会社側が果たさなかった場合は、30万円以下の罰金に科せられる可能性があるため注意しましょう。罰金は違反者1人につき30万円のため、仮に10人の違反者が認められた場合は300万円もの罰金が科せられる恐れがあります。
時季変更権の発動には注意が必要
時季変更権とは、繁忙期などの有給休暇取得を避けるために、有給取得日の調整を会社側が行う権利のことです。事業の正当な運営が妨げられると認められた場合に限り、従業員の希望にそうことなく、有給取得日を別の日にスライドさせられます。
しかし、慢性的な人手不足などを理由に、頻繁に時季変更権を行使すべきではありません。結果的にアルバイトをはじめとする従業員が有給を取得できなくなり、先述した年間5日間の有給休暇取得義務を果たせずに、罰金を科せられる可能性が高まるためです。
まとめ
有給休暇は、所定の条件を満たす場合、アルバイトやパートタイマーにも付与する義務があります。取得義務を無視した場合、経営者は違反者1人につき30万円の罰金を科せられる可能性があるため、勤怠管理は正確に行わなければなりません。
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