2024年04月15日

契約社員を契約満了でクビにするのは違法?雇い止めに関するルールを解説

契約満了のブロック

契約社員にはあらかじめ契約期間が決められているので、契約期間満了と同時に退職してもらうのが通例です。ただし、更新の手続き方法や雇い止めを言い渡すタイミングによってはクビが認められない場合もあるため、人事担当の方は注意をしましょう。

今回は、契約満了でクビにすると違法になるケースとならないケースを解説します。契約満了でクビを言い渡しても違法にならないポイントも解説していますので、ぜひ参考にしてください。

契約満了でクビにするのは違法か?

ハテナを持つ人

契約期間が決まっている契約社員の場合、契約満了でクビ(雇い止め)にすることは原則違法ではありません。ただし、契約社員の雇用状態や雇い止めの通告方法などによっては、契約期間が終了したという理由だけではクビにできない場合もあります。

ここでは、契約満了でクビにした場合、違法にならないケースと違法になるケースを具体的に見ていきましょう。

違法にならないケース

契約満了を理由にクビにしても違法にならないケースは、以下のとおりです。

 

<契約満了でクビにしても違法にならないケース>

  •  あらかじめ更新しない旨で合意がとれている場合
  •  労働者に更新を期待させる言動をしていない場合
  •  業務内容が臨時的な場合
  •  会社内での地位が臨時的な場合
  •  更新回数や勤続期間が少ない場合

 

契約社員を雇っている場合、契約期間の満了にともない雇い止めを言い渡す行為は問題ありません。

ただし、何度も契約更新を繰り返していたり、業務内容や社内的地位が一般社員と変わらなかったりする場合は、契約社員であってもクビにする際に正当な解雇手続きが必要です。

そのため、契約満了と同時に雇い止めを円滑に行いたいのであれば、繁忙期など働く期間を一定期間に定め、業務内容も限定的なものにするなど、社員と差を付ける必要があります。また、更新の予定がないことにお互い合意している旨を書面で残しておくことも大切です。

違法になるケース

一方、以下のケースに当てはまる場合は、契約満了を理由にクビを言い渡すと違法なので、注意をしましょう。

 

<契約満了でクビにすると違法になるケース>

  •  複数回更新をしているにも関わらず、30日前までに雇い止めを言い渡さなかった場合
  •  一般社員と同等の扱いを受けている場合
  •  仕事内容や社内地位が一般社員と同じ場合
  •  労働者に更新を期待させる言動をとっていた場合

 

契約社員の契約更新を何度も行っていたり、仕事内容や社内での地位が一般社員と変わらなかったりする場合、契約社員は実質一般社員と同じものと扱われます。一般社員に対して突然クビを言い渡すことができないように、この場合、契約社員に対しても契約満了といった理由だけで雇い止めはできません。

また、「これからもずっとよろしく」のように、今後の更新を期待させる言動をとっている場合も、契約期間の終了と同時にクビにすることは不可能です。

これらの決まりは、労働契約法第19条に記載されています。

上の条件に当てはまる契約社員が引き続き契約の更新を求めたり、「辞めたくない」と口頭で述べたりした場合、会社側は労働者の意向を受け入れ、これまでと同じ条件で契約を更新する必要があります。

契約満了でクビを言い渡しても違法にならないためのポイント

ポイントのブロック

契約満了でクビを言い渡しても違法にならないためには、契約社員を雇うにあたり、以下5つのポイントに注意をしましょう。

 

<契約満了でクビを言い渡しても違法にならないためのポイント>

  •  更新をにおわせる発言をしない
  •  更新手続きをあいまいにしない
  •  契約更新の上限を決めておく
  •  限定的な業務のみを依頼する
  •  長期雇用者には契約満了の30日前までに更新の停止を伝える

 

ひとつずつ解説していきます。

更新をにおわせる発言をしない

何度も契約を更新している契約社員に対し、「今後も仕事を任せたい」「この仕事を成功させたら更新延長を考える」など、更新をにおわせるような発言はしないでください。

なぜなら、労働者に契約更新を期待させる発言をしていた場合、誰が見てもクビになるのは仕方ないと思う理由がない限り、雇い止めは認められないと、労働契約法第19条に記載されているからです。この場合、契約満了前に「今年の更新はない」と伝えても効力はありません。

そのため、契約満了で雇い止めを円滑に進めたいのであれば、普段の言動に注意をしましょう。

更新手続きをあいまいにしない

契約の更新時期が来ても、毎回、面談や書面での更新手続きが行われず、当たり前のように契約更新が行われている場合も、労働者へ更新に対する期待をもたせているといえます。更新に期待をもたせるような状況を作ってしまった場合、先に解説したとおり、相当な理由がない限りクビにはできません。

そのため、契約社員を雇っている場合は必ず更新時期に面談を行い、次回更新できない場合は、口頭や書面でハッキリと伝えることが大切です。

契約更新の上限を決めておく

雇用契約書に契約更新が可能な上限を記載しておくと、労働者に対して事前に契約期間を伝えている証明になるので、契約満了で雇い止めを伝えても違法になりません。

雇用契約書は非常に重要な役割をもつため、更新時期が来るたびに作り直し、双方で誤解が生まれないよう面談をしながら内容を確認しましょう。

限定的な業務のみを依頼する

契約社員を雇う際は、雇用期間内で終了する限定的な業務のみを依頼しましょう。そうするすことで、契約満了時に雇い止めを言い渡してもトラブルが置きにくいです。

契約満了でのクビに違法性がある要因として、一般社員と同等の扱いで仕事を任せているケースが見られます。このような扱いは更新の期待をもたせる行為と捉えられますので、契約社員を雇う場合は、契約期間内で終了する限定的な仕事のみを依頼したほうが無難です。

長期雇用者には契約満了の30日前までに更新の停止を伝える

更新回数が3回を超えている労働者や、勤続年数が1年以上経過している労働者に対して雇い止めを言い渡す場合、契約満了日の30日前までの通達が必要です。

これは、労働基準法の第20条に記載されているルールなので、守りましょう。

無期転換後は契約が満了しても原則クビにできない

考えるビジネスマン

無期転換とは、労働契約法第18条に記載されている労働者の権利です。同じ会社で何度も更新が行われた結果、勤続年数が5年以上になっている場合、労働者が申し出ると、有機契約者だった契約社員も一般社員同様、無期労働契約に転換できます。

無期転換の申し出は会社の返答無しで承諾され、その場で無期労働契約が成立するため、労働者が無期転換の申請をした場合、契約期間という概念が消えます。この場合、一般社員と同様、相当な理由がない限りクビにはできません。

無期転換への対策

契約社員はあくまでも契約期間中だけ採用したいという場合は、無期転換への対策を行う必要があります。ただし、無期転換を申し込まないことを契約更新の条件に盛り込んだり、勤続4年目になった段階でクビを言い渡したりする行為は労働契約法の趣旨に反しているため、無効です。

そのため、無期転換の対策をしたい場合は、雇用契約書に入社から通算で5年を超える雇用契約は更新しない旨を記載しておきましょう。雇用契約書に契約期間を記載しておけば、契約満了時点でクビにしても違法性はありませんし、無期転換を申し込まれることもありません。

まとめ

契約期間を雇っている企業は、原則、社員の契約期間が満了した段階でクビを言い渡しても問題はありません。ただし、普段から次期の更新を期待させるような言動をとっていたり、長期雇用者に対して契約満了日の30日以降に通達したりした場合は、契約満了を理由にクビを言い渡すことはできません。

契約社員を雇う際にはさまざまなルールがありますので、今一度、雇用内容を見直してみましょう。

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