2024年04月10日

時短勤務とは?減額できる限度額や給与以外への影響、会社側の注意点を解説

時短勤務で働く女性

働き方改革により、時短勤務を導入する企業が増えてきました。時短勤務の導入は義務付けられており、条件を満たした従業員からのリクエストを受けた場合は、原則としてこれを受け入れなければなりません。

そこでこの記事では、時短勤務の概要や給与の計算例、給与以外に生じる影響などについてご紹介します。時短勤務の給与に関する会社側の注意点も含めて確認しておきましょう。

時短勤務とは

仕事介護育児の吹き出し

時短勤務とは、2009年に改定された育児・介護休業法により定められた所定労働時間の短縮措置です。時短勤務は法律により認められた従業員の権利であり、条件を満たす従業員による要請を受けた場合は、原則としてこれを受け入れなければなりません。

一般的な所定就労時間は8時間ですが、時短勤務においては所定労働時間を6時間に退縮させることが一般的です。

時短勤務はアルバイト・パートでも利用できる

時短勤務を利用できる従業員は、3歳未満の子どもを養育している従業員すべてです。正社員はもちろん、アルバイト・パートタイマーといった非正規雇用の従業員だとしても、所定の条件を満たす場合は等しく時短勤務を利用できます。

時短勤務を利用できないケースもある

以下の項目にひとつでも該当する場合は時短勤務を利用できません。

 

<時短勤務を利用できないケース>

  • 養育中の子どもが3歳以上の場合
  • 所定労働時間が1日あたり6時間未満の場合
  • 時短勤務と産前産後休業・育児休業・介護休業などを併用している場合
  • 勤続年数が1年未満の場合
  • 所定労働日数が1週間あたり2日未満の場合

 

3歳未満の子どもを養育している従業員だとしても、必ずしも時短勤務を利用できるとは限らないため注意が必要です。

時短勤務とフレックスの違いは勤務時間が固定されるかどうか

時短勤務とよく似た勤務形態に「フレックスタイム制」があります。このふたつの違いは、勤務時間が固定されるか否かです。

時短勤務の場合は、原則として1日の勤務時間が6時間に固定されます。一方のフレックスタイム制は、勤務時間を従業員が自由に決められる点が特徴的です。「月曜日は5時間」「火曜日は8時間」など、従業員の都合に合わせて勤務時間を変動させられます。

時短勤務中の給与は25%下がる

給与袋と電卓

時短勤務中の給与を求める際は、以下の計算式を用います。

 

<時短勤務中の給与の計算式>

  • 基本給×短縮した所定労働時間÷通常の所定労働時間

 

基本給が25万円、短縮した所定労働時間が6時間、通常の所定労働時間が8時間と仮定した場合のシミュレーション結果は次のとおりです。このとき、所定労働日数は20日間とします。

 

<シミュレーション結果>

  • 250,000円×120時間÷160時間=187,500円

 

減額率は25%相当分となり、金額に換算すると62,500円です。減額率の下限・上限は法律により明確に定められていませんが、25%の減額率は妥当と考えられており、多くの企業が時短勤務中の給与を25%減額しています。

時短勤務による給与以外への4つの影響

時短勤務により、当該従業員の給与は25%減額されることが一般的です。しかし、時短勤務の導入により、従業員は基本給の減額以外にもいくつかの影響を受けます。具体的には以下の4つです。

 

<時短勤務による給与以外への4つの影響>

  • 残業代を稼げなくなる
  • 社会保険料が割高になる可能性が高い
  • ボーナスの支給額が下がる場合が多い
  • 将来の年金が減る可能性がある

 

それぞれを詳しく解説します。

残業代を稼げなくなる

時短勤務中の残業は原則として制限されます。残業時間そのものがなくなるため、必然的に月々の残業代が0円になり、月収がさらに減る可能性が高いです。残業代を確保することにより収支のバランスをとっていた従業員は、この点に注意しなければなりません。

社会保険料が割高になる可能性が高い

社会保険料は、前年の4月から6月にかけての標準報酬月額をもとに計算しています。つまり、時短勤務中に関しても、フルタイムで働いていた時期と同額の社会保険料を納めなければなりません。このため、時短勤務中の社会保険料は、割高になる可能性が高いです。

ボーナスの支給額が下がる場合が多い

ボーナスの計算方法は企業によって異なりますが、多くの企業では「基本給の〇ヶ月分」という形でボーナスを計上しています。時短勤務を行うと、先ほどのシミュレーションで見たように基本給が25%減額されるため、受け取れるボーナスも減ってしまう可能性が高いです。

将来の年金が減る可能性がある

時短勤務により給与が下がると、それに合わせて社会保険料の等級も下がり、天引きされる社会保険料が減ります。将来受け取れる年金は、社会保険料の金額によって変動するため、時短勤務の活用により年金額が下がるリスクがある点にも注意しましょう。

ただし、このリスクは「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」を活用することにより回避できます。この措置を適用するためには「養育期間標準報酬月額特例申出書」の提出が必要なため、会社側は人事部などと確認をとり、従業員に対して措置の活用を周知してください。

時短勤務の給与に関する会社側の注意点

考える経営者

従業員から時短勤務の要請を受けた場合、会社側の注意点として挙げられるのは以下の3点です。

 

<時短勤務の給与に関する会社側の注意点>

  • トラブル予防のために就業規則への明記が必須
  • 減額しないことが公平とはいえない
  • 一部の雇用形態には減額による効果が少ない

 

これから解説する3点を念頭に置きつつ、従業員の要請に対応しましょう。

トラブル予防のために就業規則への明記が必須

時短勤務における給与の減額率は法律で明記されていません。一般的には減額率を25%に設定しますが、会社側と従業員側に認識の相違があると、トラブルの原因になります。従業員が納得して時短勤務を利用できるように、減額率などの詳細をあらかじめ就業規定に明記しておきましょう。

減額しないことが公平とはいえない

時短勤務中の給与を減額するかどうかは、会社側の判断に委ねられています。企業によっては従業員のロイヤルティを高めることを目的に、あえて給与を減額せず、フルタイムの出勤時と変わらない給与を与える場合もあるようです。

しかし、給与を減額しないことが必ずしも公平とはいえません。フルタイムで働く従業員から見れば、時短勤務の従業員と給与が変わらないことは不公平です。時短勤務の従業員への減額を行わない場合は、こういった不満を抑えられるように、すべての従業員から理解を得るべく丁寧な説明が必要といえます。

一部の雇用形態には減額による効果が少ない

完全歩合制で働く従業員や、高度プロフェッショナル制度により働く従業員にとっては、そもそも労働時間が給与に直接的な影響を与えません。このような従業員でも公平に時短勤務ができるように、減給を見送るなどの個別の対策を検討しましょう。

まとめ

時短勤務とは、3歳未満の子どもを養育するすべての従業員が適用できる制度です。基本的には1日8時間の勤務時間を6時間へと短縮する代わりに、1日あたりの報酬を25%カットします。

株式会社Office Followでは、時短勤務中の減額率や各種手当の扱いなどを含む、就業規則の作成・改定業務を行っています。会社と従業員の双方が納得できるシステムを構築したいとお考えの経営者様・担当者様は、ぜひ当事務所にご相談ください。