深夜手当の計算方法は?深夜労働の定義や支給時の注意点も解説
22時から翌5時までの労働は「深夜労働」に該当し、この時間帯に勤務した従業員に対しては「深夜手当」を付与する必要があります。また、これが残業等にあたる場合は、深夜手当のほかにも各種手当を追加して給与を計算しなければなりません。
この記事では、深夜手当の計算方法のほか、深夜手当にまつわる注意点を解説します。そもそも深夜労働の定義とは何かも含めて、基礎から細かく見ていきましょう。
深夜手当が発生する「深夜労働」の定義とは
そもそも深夜手当が発生する「深夜労働」とは、どのように定義されたものなのでしょうか。深夜労働ができる人は法律によって定められているため、深夜手当の計算方法を知る前に、経営者や担当者は深夜労働の概要を正確に把握しておかなければなりません。
<深夜労働の定義>
- 22時以降の労働は深夜労働とみなされる
- 深夜労働ができるのは原則として18歳以上の従業員のみ
- 深夜手当と「深夜残業手当」はどう違う?
- 深夜残業と「残業」はどう違う?
まずは上記の4点について詳しく解説します。
22時以降の労働は深夜労働とみなされる
深夜労働とみなされるのは、22時~翌5時までの時間帯です。たとえば夜勤で20時に出勤し、翌4時に退勤した場合は、8時間の労働のうち5時間が深夜労働にあたります。
深夜労働ができるのは原則として18歳以上の従業員のみ
労働基準法第61条により、深夜労働ができるのは原則として18歳以上の従業員に限られます。ただし、以下の特例に該当する場合に限り、18歳未満の従業員でも深夜労働が可能です。
<18歳未満で深夜労働が認められる特定>
- 16歳以上かつ交代制(シフト制)で働く従業員
- 交代制の事業かつ労働基準監督署の許可を得ている企業における22時30分までの業務
- 災害等の非常事態により深夜労働が必要で、かつ労働基準監督署の許可を得ている場合
- 農林水産業、保健衛生事業、電話交換業務のうちいずれかに従事する場合
深夜手当と「深夜残業手当」はどう違う?
深夜手当は、深夜労働に対して発生する手当です。一方の深夜残業手当は、1日8時間もしくは週40時間の法定労働時間を上回る残業に対して、手当として付与されます。割増率はいずれも25%で、従業員はこの2つを併用して請求することが可能です。
深夜残業と「残業」はどう違う?
深夜残業は22時~翌5時に行う残業を指す言葉です。一方の残業はごく一般的な残業を意味しており、22時~翌5時を除く時間帯に行う残業を指しています。
深夜手当の計算方法
深夜手当の計算方法はシンプルですが、給与体系により計算方法が異なります。具体的な計算方法の手順は次のとおりです。
<深夜手当の計算方法>
- 基準の賃金を計算する
- 割増率と労働時間をかけて計算する
順番に確認していきましょう。
深夜手当の計算方法①基準の賃金を計算する
まずは深夜手当を計算するうえで、ベースとして使用する賃金を計算します。
<深夜手当の計算方法>
- 時給の場合:時給をそのまま利用する
- 日給の場合:(所定日給-除外賃金)÷1日あたりの所定労働時間
- 月給の場合:(所定月給-除外賃金)÷1ヶ月あたりの平均所定労働時間
賞与や家族手当といった、労働時間などとは無関係に支払われる賃金を除外することがポイントです。
深夜手当の計算方法②割増率と労働時間をかけて計算する
先述した計算方法に加えて、深夜手当の25%と、深夜労働を行った時間を加味して深夜手当を導き出します。仮に所定月給が30万円で除外賃金なし、経筋所定労働時間が160時間、そのうち深夜労働時間が20時間だった場合の深夜手当を計算してみましょう。
<深夜手当のシミュレーション>
- 300,000円÷160時間×25%×20時間=9,375円
このシミュレーションでは、1ヶ月あたりの深夜手当として受け取れる金額は9,375円でした。
深夜手当とあわせて発生する可能性のある手当
深夜手当のみを付与するケースもありますが、深夜手当とあわせてその他の手当を合算して付与するケースも考えられます。具体的には以下の2種類です。
<深夜手当とあわせて発生する可能性のある手当>
- 残業手当
- 休日出勤手当
それぞれの具体例もあわせながらご紹介します。
残業手当
深夜手当を付与する労働時間が時間外労働に該当する場合、残業手当の合算が必要です。残業手当の割増率は25%なので、深夜手当とあわせて合計50%の割増賃金となります。
勤務時間帯が23時~11時で、休憩時間が1時間、すべてが時間外労働と仮定した場合、23時~5時までの割増率が50%(深夜手当+残業手当)、5時~11時までの割増率が25%(残業手当のみ)です。
休日出勤手当
法定休日に出勤して深夜労働を行った場合は、休日出勤手当の合算が必要です。休日出勤手当の割増率は35%なので、深夜手当とあわせて合計60%の割増賃金となります。
勤務時間帯が23時~11時で、休憩時間が1時間、すべてが時間外労働と仮定した場合、23時~5時までの割増率が60%(深夜手当+休日出勤手当)、5時~11時までの割増率が35%(休日出勤手当のみ)です。
深夜手当の計算方法に関する注意点
深夜手当の計算方法に関する注意点を3つご紹介します。深夜手当はすべての従業員に対して発生するほか、残業手当等とは異なり、管理監督責任者にも支払う義務が生じるため要注意です。以下の3点を確認しておきましょう。
<深夜手当の計算方法に関する注意点>
- 深夜手当はアルバイトやパートタイム労働者にも支払う義務がある
- 深夜手当は管理監督者にも支払う義務がある
- 基礎賃金からの除外が必要な手当がある
上記3点について、それぞれ詳しく解説します。
深夜手当はアルバイトやパートタイム労働者にも支払う義務がある
深夜手当は、雇用形態とは無関係に発生する手当です。正社員など正規雇用の従業員はもちろん、アルバイトやパートタイム労働者に対しても支払いの義務が生じます。割増率に関してもすべての従業員が同一で、25%のまま変わりません。
深夜手当は管理監督者にも支払う義務がある
深夜手当は、管理監督者も受け取れる手当です。管理監督者は時間外手当や休日手当を受け取れませんが、深夜手当に関してはその他の従業員と同じように受け取れます。これらの手当と混同してしまい、支給し忘れないように注意しましょう。
基礎賃金からの除外が必要な手当がある
以下のような手当は、基礎賃金から除外して計算しなければなりません。
<基礎賃金から除外する手当>
- 通勤手当
- 住宅手当
- 家族手当
- 別居手当 など
ただし、給与規定により全社員に対して一律で支給する手当に関しては、除外の対象外となります。
まとめ
深夜手当とは、22時~翌5時までの労働に対して発生する手当です。正社員のみならず、アルバイトやパートタイム労働者、管理監督者にも深夜手当を支給する義務があります。また、状況により時間外手当や休日出勤手当と合算する必要が生じる点にも注意しましょう。
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