標準報酬月額とは?決め方や改定する時期、社会保険料の計算方法などを解説
従業員の社会保険料を決める基準となるのが「標準報酬月額」です。企業の担当部署や担当者が労務管理を行うにあたり、標準報酬月額を決定する時期・改定する時期などの詳細は、必ず押さえておかなければなりません。
この記事では、上記のポイントに加えて、標準報酬月額に含まれる報酬・含まれない報酬、そして各種社会保険料の計算方法などについても解説します。
標準報酬月額とは
標準報酬月額とは、従業員の月給を1~50までの等級にわけたものです。この等級は、厚生年金保険料や健康保険料を計算する際に用います。標準報酬月額を用いることにより、給料額をベースにして各種保険料を算出する場合と比較して、保険料の計算を簡略化させられます。
基本給だけでなく各種手当も標準報酬月額に含まれる
標準報酬月額は、基本給だけでなく各種手当も含めて計算します。
【標準報酬月額の内訳】
標準報酬月額に含まれる報酬 | 標準報酬月額に含まれない報酬 |
---|---|
・基本給・能率給、奨励給 ・早出残業手当・賞与(年4回以上) ・通勤手当、住宅手当、家族手当 など ・その他、通勤定期券など現物支給するもの |
・退職手当 ・交際費 ・出張旅費 ・大入袋、賞与(年3回以下) ・見舞金・解雇予告手当 など |
現物支給するものに関しては、金額換算して報酬に含まなければなりません。
標準報酬月額を用いた核種保険料の計算方法とは
標準報酬月額をもとにした各種社会保険料の計算方法をご紹介します。
<標準報酬月額を用いた核種保険料の計算方法>
- 厚生年金の計算方法
- 健康保険料の計算方法
- 労災保険の計算方法
- 雇用保険の計算方法
それぞれを計算式とともに確認しておきましょう。
厚生年金の計算方法
厚生年金保険料は、18.3%を企業と従業員の折半で支払います。計算方法は以下のとおりです。
<厚生年金の計算方法>
- 標準報酬月額×18.3%÷2
仮に標準報酬月額が30万円だとすると、300,000×18.3%÷2で27,450円です。
健康保険料の計算方法
健康保険料は加入する組合により異なるため、正確な計算方法をご紹介できません。この項目では、東京都における協会けんぽの保険料率9.84%をもとにした計算式をご紹介します。
<健康保険料の計算方法>
- 標準報酬月額×健康保険料率÷2
標準報酬月額を30万円と仮定した場合は、300,000×9.84÷2で14,760円を会社と従業員が折半して支払います。
労災保険の計算方法
労災保険料は実際に支払う給料額をもとにして計算するため、標準報酬月額は計算式に含めません。そのため、厚生年金や健康保険とは異なり、従業員の給料の変動に伴い、労災保険料も毎月変動します。
<労災保険料の計算方法>
- 毎月の給料×労災保険料率
労災保険料率は業種によって異なり、2.5/1000~88/1000の間で決まります。また、労災保険料は従業員との折半ではなく、会社側が100%負担するものです。
雇用保険の計算方法
雇用保険料も、労災保険料と同様に、標準報酬月額を無視して決定します。計算式は以下のとおりです。
<雇用保険料の計算方法>
- 毎月の給料×雇用保険料率
なお、雇用保険料率は業種によって、以下のように異なります。
【業種ごとの雇用保険料率】
業種 | 料率 | 会社の負担 | 従業員の負担 |
---|---|---|---|
一般 | 9/1000 | 6/1000 | 3/1000 |
農林水産・清酒 | 11/1000 | 7/1000 | 4/1000 |
建設 | 12/1000 | 8/1000 | 4/1000 |
標準報酬月額の決め方
標準報酬月額を決めるタイミングは、次の2つです。
<標準報酬月額の決め方>
- 入社した際の「資格取得時」
- 毎年1度行う「定時決定」
それぞれを詳しくご紹介します。
入社した際の「資格取得時」
従業員が入社に伴い社会保険に加入する場合は、雇用開始から5日以内に被保険者資格取得届の提出が必要です。この書類には報酬月額を記載する必要があるため、資格取得時までに標準報酬月額を決めなければなりません。標準報酬月額を算出する期間は、次のとおりです。
【標準報酬月額を算出する期間】
入社した月 | 標準報酬月額を算出する期間 |
---|---|
1月~5月 | その年の8月まで |
6月~12月 | 翌年の8月まで |
毎年一度行う「定時決定」
7月1日時点で財先している従業員に対しては、毎年一度の「定時決定」により標準報酬月額を再計算します。計算方法は次のとおりです。
<定時決定の計算方法>
- 4月~6月までに支払う3ヶ月分の給料÷3
ただし、それぞれの付きで17日以上の「報酬支払基礎日数」を満たさなかった場合は、定時決定が行われません。この場合は前年度と同じ標準報酬月額を利用します。
標準報酬月額を改定する時期
標準報酬月額を改定するタイミングは、次の4つです。
<標準報酬月額を改定する時期>
- 給料を変更する際に行う「随時改定」
- 産休取得後に行う「産前産後休業終了時改定」
- 育休取得後に行う「育児休業終了時改定」
- 特別な事情が発生した場合のみ行える「特例改定」
順番に解説します。
給料を変更する際に行う「随時改定」
随時改定は、先述した定時決定以外のタイミングで、従業員の報酬に大幅な変動が生じた場合に行う手続きです。以下の条件をすべて満たす場合は、随時改定が必要になります。
<随時改定が必要となる条件>
- 固定された賃金に変動がある
- 前回の標準報酬月額から2等級以上の変動がある
- 変動が認められた3ヶ月間の報酬支払基礎日数がいずれも17日を上回る
産休取得後に行う「産前産後休業終了時改定」
産前産後休業終了時改定は、産休取得後の従業員を対象に行う改定です。産休取得中は、従業員へ実際に支払う給料と標準報酬月額に大幅な剥離が生じるため、産前産後休業時改定を行うと、会社側の社会保険料の負担を軽減できます。
給付終了翌日を含む以降3ヶ月の給料をもとに計算し、4ヶ月目から新しい標準報酬月額の適用が可能です。
育休取得後に行う「育児休業終了時改定」
育児休業終了時改定は、産前産後休業終了時改定と同様の問題を解決するための改定です。適用される期間も同じで、給付終了翌日を含む以降3ヶ月の給料をもとに計算し、4ヶ月目から新しい標準報酬月額を適用できます。
特別な事情が発生した場合のみ行える「特例改定」
特例措置として、特別な事情が発生した場合のみ行える改定が「特例改定」です。直近で認められた特例改定は2020年4月~2022年7月にかけての時期で、新型コロナウイルス感染症の影響により、従業員の報酬を引き下げた場合に適用できました。
まとめ
標準報酬月額とは、社会保険料の計算を簡単にするために、給与を1~50までの等級にわけたものです。標準報酬月額を決めるタイミングは入社時と昇給などにより給与が変動した時期ですが、その他にも必要に応じて改定すべきタイミングがあります。
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