病気休暇とは?導入するメリット・注意点や休職制度との違いを解説
療養を目的として、有給休暇とは別枠で利用できる休暇制度のひとつが「病気休暇」です。近年では新型コロナウイルス感染症が猛威を振るったこともあり、万一に備えたセーフティネットとして病気休暇を導入すると、従業員の安心につながります。
この記事では、企業が病気休暇を導入するメリットや注意点や休職制度との違い、民間企業における病気休暇の導入率もご紹介します。
病気休暇とは?
病気休暇とは、業務との因果関係がない病気やケガなどの疾病により就業不能となった従業員に対して、再び業務が可能になるまで休暇を与える制度です。法律上の義務はありませんが、従業員によるニーズが高く、必要とされています。
病気休暇の種類は、主に以下の4つです。
【病気休暇の種類と特徴】
病気休暇制度 | 有給休暇とは別枠で利用可能な休暇制度 |
---|---|
短時間勤務制度 | 一定期間、所定労働時間を短縮する制度 |
時間単位・半日単位の年次有給休暇 | 年間5日間を限度に取得できる時間単位の有給制度 |
失効年休積立制度 | 過去に失効した有給を長期療養の際に復活させて活用できる制度 |
このような病気休暇制度を導入することにより、万一に備えたセーフティネットとなり、従業員が安心して就労できる環境を整えられます。
民間企業の病気休暇導入率は23.8%
日本商工会議所が公開している「病気休暇制度についてのリーフレット」によると、民間企業における病気休暇制度の導入率は23.8%にとどまっています。制度を導入済みの企業は少数派であることから、病気休暇を導入することにより、福利厚生のよさをアピールすることが可能です。
なお、病気休暇導入企業による賃金の支給状況は次のようになります。
【病気休暇中の賃金の支給状況】
有給(全額) | 44.50% |
---|---|
有給(一部) | 18.10% |
無給 | 37.40% |
導入する企業ごとに異なりますが、全額または一部の賃金を支払う企業が62.6%を占めています。
病気休暇と休職制度の主な違いは「休み方」や「賃金の有無」
療養を目的に「休職制度」を活用するケースもあります。病気休暇と休職制度の主な違いは「休み方」と「賃金の有無」の2つです。
【病気休暇と休職制度の違い】
病気休暇 | 休職制度 | |
---|---|---|
休み方 | 原則として療養のみ | 療養・出向・刑事・公務など |
賃金の有無 | 賃金が発生するケースが多い | 原則として無給 |
休職制度は療養以外の目的としても利用でき、休職期間中は原則として賃金が発生しません。休職中は契約解除が猶予され、休みながら復職への道を探れる点が従業員にとってのメリットです。
一方の病気休暇は、原則として療養目的のみで利用でき、先述したとおり賃金が発生するケースが60%以上を占めています。まとまった休暇の取得が可能なほか、1日単位・数時間単位で休暇を取得できることも従業員にとってのメリットです。
病気休暇を導入するメリット
企業側から見て、病気休暇を導入するメリットは以下の4点です。
<病気休暇を導入するメリット>
- 人材流出を予防できる
- 病気休暇期間満了を理由に解雇しやすくなる
- 職場内における感染症拡大を予防できる
- 従業員のニーズに応えられる
それぞれを詳しく見ていきましょう。
人材流出を予防できる
病気休暇は多くの従業員にとって安心できる制度であり、導入することによって人材流出を予防できます。大きな病気やケガにより長期休暇・リハビリが必要になった場合、従業員によっては仕事と療養の両立が困難と考えて退職を希望する可能性がありますが、病気休暇制度を設けると離職を減らしやすくなります。
病気休暇期間満了を理由に解雇しやすくなる
解雇事由を記載しやすい点も、病気休暇制度を導入するメリットです。病気休暇の取得開始から、一定期間の経過後に自然退職となる規定を設けることにより、トラブルを避けてスムーズに解雇できます。
病気やケガによる勤務状況の不良は解雇事由として認められることが多いものの、解雇予告等の規定を守らなければなりません。とくに病気・ケガを理由に解雇する場合は、不当解雇を主張されるケースも考えられます。病気休暇を導入しておけば、このようなトラブルを避け、規定に沿って解雇できるのです。
職場内における感染症拡大を予防できる
病気休暇制度がない場合、従業員は体調不良を自覚しながら、無理をして出勤する可能性があります。もしも従業員が新型コロナウイルスやインフルエンザをはじめとする感染症に罹患していた場合、職場がクラスター化し、感染症拡大を招く可能性が高いです。このようなリスクを減らせることも、病気休暇を導入するメリットといえます。
従業員のニーズに応えられる
厚生労働省が行ったアンケートによると、「勤め先に病気休暇制度があってほしいと思いますか?」との問いに対する従業員の回答は、次のとおりです。
【病気休暇に関するアンケート結果】
あってほしい | 60.80% |
---|---|
どちらかといえばあってほしい | 22.70% |
わからない | 7.70% |
どちらかといえばなくてよい | 5.60% |
なくてよい | 3.30% |
83.5%の従業員が「あってほしい」「どちらかといえばあってほしい」と回答しています。病気休暇のニーズは高い一方、導入済みの企業は23.8%にとどまっているため、病気休暇を導入すると「福利厚生が整った魅力的な企業」とみなされやすくなるでしょう。
病気休暇を導入する際の注意点
企業側から見て、病気休暇を導入する際の注意点は次の3点です。
<病気休暇を導入する際の注意点>
- 人員補充の判断が難しい
- 病気休暇中の社会保険料は企業側が負担しなければならない
- 就業規則変更に伴い労働基準監督署への届け出が必須
それぞれのポイントをわかりやすく解説します。
人員補充の判断が難しい
病気やケガの内容によっては、復職までの目途が立たない場合があります。代替要員として正社員を採用する場合、正当な理由なしでは解雇できないため、人員を補充すべきかどうかの判断は難しいといわざるを得ません。
病気休暇中の社会保険料は企業側が負担しなければならない
健康保険と厚生年金は、従業員の病気休暇取得中も企業側が負担しなければなりません。社員負担分を企業が一時的に負担した結果、当該従業員が退職し、立て替え分が未回収となるケースも見られます。
就業規則変更に伴い労働基準監督署への届け出が必須
病気休暇の導入により就業規則を変更する場合は、労働基準監督署への届け出が必要です。就業規則の作成義務・届け出義務を果たさなかった場合、30万円以下の罰金刑に処される可能性があるため、病気休暇の導入後は速やかに届け出を行いましょう。
まとめ
病気休暇とは、従業員が病気やケガによる疾病から復帰するまでの間、有給もしくは無休で休暇を取得できる制度です。病気休暇を導入すると「従業員の流出を避けやすくなる」「感染症拡大を予防できる」などのメリットを得られます。
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