2024年03月29日

法定内残業とは?法定外残業との違いや割増率の違いを解説

OVERTIMEのブロックと時計

ひとことで残業といっても「法定内残業」と「法定外残業」の2つに区分けされます。「残業は残業で変わらないのではないか」と考える方が多いかもしれませんが、この2つには明確な違いがあるため、それぞれの制度を正確に理解しなければなりません。

この記事では、2種類の残業の違いや、残業時間中に発生する割増率などの詳細を解説します。勤務時間ごとの具体例も含めて、細かく確認しておきましょう。

法定内残業とは

黒板のはてなマーク

法廷内残業とは、労働基準法により認められた法定労働時間内で行う残業です。法定労働時間は1日あたり8時間、1週間あたり40時間までに制限されています。この範囲内で行う残業が法定内残業となり、具体的には以下のケースがそれに該当します。

 

<法定内残業に含まれる主なパターン>

  • 1日の勤務時間が6時間かつ2時間以内の残業
  • 1週間の勤務時間が38時間かつ2時間以内の残業 など

 

法定外残業との違いは所定労働時間を超過するか否か

冒頭でご紹介したとおり、残業の種類は「法定内残業」と「法定外残業」の2種類です。この2つは、所定労働時間をオーバーするかしないかによって区分けされます。先ほどのパターンと比較しながら、残業の種類について整理しておきましょう。

【パターンごとに見た残業の種類】

法定内残業 法定外残業
・1日の勤務時間が6時間かつ2時間以内の残業
・1週間の勤務時間が38時間かつ2時間以内の残業 など
・1日の勤務時間が8時間かつ2時間以内の残業
・1週間の勤務時間が40時間以上かつ2時間以内の残業 など

36協定の締結や届出は不要

36協定とは、従業員への残業を要請する場合に必要な労使協定のひとつです。36協定を締結する場合、管轄する労働基準監督署に届出を行わなければなりません。しかし法定内残業の場合、あくまでも法定労働時間内に行う残業となるため、36協定の締結や届出は不要です。

残業の種類ごとに見た割増率とは

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従業員が残業した場合、残業の種類や時間帯に応じて割増賃金が発生します。割増率は以下のように残業の種類ごとに異なるため、それぞれの条件を詳しく確認しておきましょう。

 

<残業の種類ごとに見た割増率>

  • 法定内残業…通常の賃金が支払われる
  • 法定外残業…25%の割増賃金が支払われる
  • 法定外残業(月60時間超)…50%の割増賃金が支払われる
  • 深夜労働…25%の割増賃金が上乗せされる
  • 法定休日労働…35%の割増賃金が支払われる
  • 法定外休日労働…40時間を超過すると法定外残業として扱われる

 

順番に詳しく解説します。

法定内残業…通常の賃金が支払われる

先述したとおり、法定内残業はあくまでも正規の労働時間内で行う残業に過ぎません。扱いとしては通常の勤務と変わらないため、割増賃金を支払う義務はなく、1時間あたりの賃金×残業時間を報酬として支払います。

法定外残業…25%の割増賃金が支払われる

1日8時間もしくは1週40時間を超過した以降の残業に関しては、25%の割増賃金が支払われます。仮に時給換算2,000円の従業員が法定外残業を行った場合、1時間あたりの報酬は残業代を含めて2,500円です。

法定外残業(月60時間超)…50%の割増賃金が支払われる

1ヶ月あたりの法定外残業時間の合計が60時間をオーバーした場合は、それ以降の割増賃金が50%に上がります。仮に1ヶ月間の法定外残業時間が80時間で、時給換算2,000円の従業員と仮定すると、1ヶ月の残業代は次のとおりです。

 

<シミュレーション結果>

  • 60時間分まで…時給2,500円換算(割増率25%)
  • 60時間を超え80時間分まで…時給3,000円換算(割増率50%)

 

深夜労働…25%の割増賃金が上乗せされる

22時から翌5時までの労働が「深夜労働」です。この時間帯に勤務する場合、割増賃金として先述した割増分に対してさらに25%が追加されます。18時~翌6時までのすべてを法定外残業として勤務した場合、具体的な計算例は次のとおりです。

 

<シミュレーション結果>

  • 18時~22時までの割増率…25%
  • 22時~5時までの割増率…50%
  • 5時~6時までの割増率…25%

 

法定休日労働…35%の割増賃金が支払われる

法定休日とは、労働基準法によって定められた休日です。法定休日に出勤する場合は、法廷内残業かそうでないかに関わらず、35%の割増賃金が支払われます。仮に先述した深夜労働を含む場合、その時間帯の割増賃金は合計で60%です。

法定外休日労働…40時間を超過すると法定外残業として扱われる

法定外休日労働とは、労働基準法の義務とは異なり、会社が独自に制定している休日に出勤することです。この場合は原則として法廷内残業と同様に処理しますが、1週間あたりの労働時間が40時間を上回っている場合は、法定外残業として25%の割増賃金が発生します。

法定内残業の具体例をシミュレーション

電卓とはてなのブロック

この項目では、法定内残業の具体例をシミュレーションします。勤務時間と所定労働時間の組み合わせを変えて、合計で3つのパターンを用意しました。

 

<シミュレーション例>

  1.  勤務時間が10時~18時で所定労働時間が6時間の場合
  2.  勤務時間が9時~21時で所定労働時間が6時間の場合
  3.  勤務時間が10時~20時で所定労働時間が8時間の場合

 

パターンごとに、どの時間帯がどの残業時間として扱われるのかを見ていきましょう。

①勤務時間が10時~18時で所定労働時間が6時間の場合

このパターンでは、1時間の休憩時間を除いた実労働時間が7時間です。所定労働時間を上回る1時間が残業時間となりますが、1週間あたりの勤務時間が40時間を下回る場合は、法定内残業として扱われます。

 

<シミュレーション結果>

  • 10時~12時…2時間の所定労働時間
  • 12時~13時…1時間の休憩
  • 13時~17時…4時間の所定労働時間
  • 17時~18時…1時間の法定内残業

 

②勤務時間が9時~21時で所定労働時間が6時間の場合

先ほどと同じ条件でシミュレーションを行うと、時間帯ごとに以下のように扱われます。

 

<シミュレーション結果>

  • 9時~12時…3時間の所定労働時間
  • 12時~13時…1時間の休憩
  • 13時~16時…3時間の所定労働時間
  • 17時~18時…1時間の法定内残業
  • 19時~20時…1時間の法定外残業

 

③勤務時間が10時~20時で所定労働時間が8時間の場合

基本的な条件は変わらず、所定労働時間が8時間の場合でシミュレーションを行うと、時間帯ごとに以下のように扱われます。

 

<シミュレーション結果>

  • 10時~12時…2時間の所定労働時間
  • 12時~13時…1時間の休憩
  • 13時~19時…6時間の所定労働時間
  • 19時~20時…1時間の法定外残業

 

まとめ

法定内残業とは、法定労働時間内に行う残業を差す言葉です。その他の残業とは異なり、原則として割増賃金が発生しません。ただし法定外残業などその他の残業に影響を与えるため、経営者や担当部署の職員には正確な計算が求められます。

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