給料日が遅れるのは違法?時効はある?罰則など企業が負うリスクについて解説
労働基準法では、賃金の支払いに関する規定も細かく明記されています。労働基準法第24条によると、賃金は通貨により支払う義務があり、なおかつ毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません。
それでは、給料日が規定よりも遅れてしまった場合は、即座に違法となるのでしょうか。また、給料日の遅れに関する時効はあるのでしょうか。この記事では、これらの疑問にお答えしながら、給料日が遅れることにより生じる企業側のリスクについて解説します。
給料日が遅れると違法になる!
結論として、規定している給料日が遅れると労働基準法に違反するため、違法になります。労働基準法第24条により、給料は以下の原則を守って支給しなければなりません。
<給料の支払いに関する原則>
- 賃金で支払う
- 労働者本人に対して支払う
- 全額を一括で支払う
- 毎月1回以上支払う
- 一定の期日に支払う
給料日が遅れると「一定の期日に支払う」との原則に違反するため要注意です。たとえ年俸制で働いている従業員だとしても、上記の原則により、毎月定めた給料日に賃金を支払う必要があります。
給与以外の賃金も給料未払いの対象となる
給料日が遅れることにより違法となる賃金は、給与だけではありません。以下の報酬に関しても、先述した5つの原則に則って支払う必要があります。
<給料日が遅れると違法になる賃金の種類>
- 賞与などの一時金
- 残業代などの割増賃金
- 休業手当
- 年次有給休暇の賃金
- 退職金 など
計算ミスによる残業代の未払いなども罰則の対象となるため、要注意です。
給料日が遅れた場合に適用できる時効は「3年」
給料の遅配には時効があり、時効成立後は従業員が賃金を請求する権利を失います。時効は賃金の種類と労働が行われた時期によって異なり、次のとおりです。
<給料日遅れの時効>
- 2020年4月1日以前が支払い期限のもの…2年間
- 2020年4月1日以降が支払い期限のもの…3年間
- すべての期間の退職金…5年間
時効があるものの、給料の遅配・未払いが違法であることには変わりありません。この後にご紹介する多くのリスクにも見舞われるため、正確な給与計算を行い、所定の給料日から遅れることなく全額を支払わなければなりません。
給料日が遅れることにより企業が負う4つのリスク
給料日が遅れると違法状態になるほか、企業はそのほかにも多くのリスクに見舞われます。具体的なリスクとして考えられるのは以下の4つです。
<給料日が遅れることにより企業が負う4つのリスク>
- 30万円以下の罰金が科せられる場合がある
- 社会的信頼を大きく損ねてしまう
- 離職率が高まる恐れがある
- 遅延損害金を追加して支払わなければならない
順番に確認しておきましょう。
①30万円以下の罰金が科せられる場合がある
給料の支払いが所定の給料日から遅れると、労働基準法第24条違反となります。この場合、同120条に則り、30万円以下の罰金が科される可能性があるため注意しましょう。また、残業代の遅配に関してはより罰則が重く、使用者が懲役6ヶ月以下の懲役刑に処される可能性もあります。
②社会的信頼を大きく損ねてしまう
給料の支払いが遅れた場合、企業は社会的信頼を大きく損ねてしまいます。従業員にとって約束どおりに給料を受け取れるかどうかは非常に重要な問題であり、たとえ1度でも遅配を発生させると、従業員は会社に対して強い不信感を抱いてしまいかねません。
給料遅配の情報は巷に出回る可能性も高く、従業員がSNSなどに投稿し、その事実が世間に広まる可能性もあります。必然的に新卒採用や中途採用にも影響が生じ、優秀な人材を確保しにくくなる点にも注意が必要です。
③離職率が高まる恐れがある
給料日が遅れると、従業員の不信感が高まり、離職率が上がる恐れもあります。従業員は給料日から逆算して支払いなどの計画を立てるため、たとえ1日の遅配だとしてもダメージは絶大です。給料日の遅れをきっかけに、退職を決意する従業員が大量に発生したとしても不思議ではありません。
もしも給料の遅配を繰り返した場合、会社の将来に対して不安を覚える従業員も多いでしょう。これも退職者が発生しやすくなる原因のひとつです。離職率が上がった場合、新規採用のコストや手間がかかるため、会社の経営はさらに圧迫されてしまいます。
④遅延損害金を追加して支払わなければならない
給料の支払いが遅れた場合、遅延損害金として、給与額に対して年利3%の利息を加算しなければなりません。仮に1ヶ月の遅配が発生した場合の遅延損害金は0.25%です。
たった0.25%と感じるかもしれませんが、月給30万円の場合は750円の遅延損害金となり、社員数が100人の場合は遅延損害金だけで75,000円を支払わなければなりません。さらに30万円の罰金刑を科せられるリスクもあり、莫大な金銭的リスクを負います。
給料日が遅れることを防ぐ4つの対処法
給料日が遅れる理由としては、資金難などの事情に加えて、残業代の計算ミスといった問題も挙げられます。これらの問題により違法状態に陥ることを避けるために有効な対処法は、以下の4つです。
<給料日が遅れることを防ぐ4つの対処法>
- 退勤管理システムを導入して未払いのリスクをなくす
- 給与計算を外注して正確な計算を行う
- 役員報酬や諸経費を削減して資金に余裕をもたせる
- 資金調達を行う
順番に詳しく解説します。
①退勤管理システムを導入して未払いのリスクをなくす
残業代や深夜労働などによる割増賃金を正確に計算するためには、正確な勤怠管理が必要です。勤怠管理システムを導入すると、打刻された出退勤時刻に基づいて正しく給与計算を行えるため、計算ミスなどによる給料未払いのリスクがなくなります。
②給与計算を外注して正確な計算を行う
経理などの専門的な部署にリソースを割けない場合は、給与計算を外注する方法もおすすめです。ノウハウのある会社に給与計算を外注すると、従業員ごとの正確な給与額がわかります。慣れない給与計算にかける時間をなくせるため、本業に集中しやすくなり、業績が向上しやすくなる点もメリットです。
③役員報酬や諸経費を削減して資金に余裕をもたせる
資金的な問題を抱えている場合は、役員報酬や諸経費の削減を目指しましょう。給料の支払いが困難になった場合など、特別な事情が認められた場合は、法律に則って役員報酬の減額が可能です。
④資金調達を行う
最終的な手段として資金調達も検討してください。銀行による融資のほか、日本政策金融公庫の利用など、いくつかの資金調達方法があります。根本的な解決にはならない可能性が高いですが、給料日の遅れにより即座に違法状態となることは避けられます。
まとめ
給料日が遅れると、労働基準法に違反するため違法となります。この場合は30万円以下の罰金を科せられる可能性があるほか、社会的信頼を損なうなどの重大なリスクにも直面するため、給料の遅配は最大限の努力をもって回避しなければなりません。
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