2024年03月22日

パートやアルバイトも含め、1ヶ月の労働時間には上限あり!上限を超えないようにするための方法も解説します

勤務時間のブロックの上の時計

昨今問題になっている「過労死」を避けるべく、従業員の1ヶ月の労働時間が労働基準法で定められたラインを超えないように管理していく義務があります。法定労働時間の上限は業種などによって少々異なるため、人事担当としては自社における上限をしっかりと把握しておく必要があるのです。

そこで今回は、従業員の1ヶ月の労働時間の上限について、法律上どのくらいなのか、業種によってどのように異なるのか、また残業時間の上限についても詳しく解説していきます。法律違反とならないようにするためのポイントもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

【1ヶ月の労働時間】法定労働時間をベースに考える必要がある

電卓で計算する様子

1ヶ月間の労働時間の上限を知るには、労働基準法で決められている「法定労働時間」をもとに計算をする必要があります。

法定労働時間について

労働基準法では、従業員の健康と福祉を守るために「1日8時間以内、1週40時間以内」という労働時間の上限が決められています。これが「法定労働時間」と呼ばれているもので、法律上の労働時間の原則です。また、正社員・パート・アルバイトなど雇用形態を問わず適用されます。

一般事業場の1ヶ月の労働時間の上限は30日の月で171.4時間!

法定労働時間から1ヶ月の労働時間の上限を算出する計算式は「法定労働時間(週)×月の日数(暦日数)÷7」となります。一般的な企業の場合は次のようになり、30日ある月では多くても171.4時間を超えないように設定しなければなりません。

【1ヶ月の労働時間の上限(一般事業場)】

法定労働時間 月の日数(暦日数)
28日 29日 30日 31日
週40時間以内 160時間 165.7時間 171.4時間 177.1時間

休憩時間や休日の設定も必要

労働基準法では、休憩時間について「1日の労働時間が6時間超で45分以上の休憩、8時間超で1時間以上の休憩時間を与える」といる義務が定められています。また、休憩時間は労働時間には含まれません。

また労働基準法では、「毎週少なくとも1回の休日を設定する」ことも定められています。これは「法定休日」と呼ばれるもので、休日の原則ですので、これ以上の休日を設定することも可能です。

【1ヶ月の労働時間】残業時間にも上限がある

36協定

実は、残業時間にも法定上の上限がありますので、まずは原則を押さえておきましょう。

残業時間(時間外労働)について

「1日8時間以内、1週40時間以内」という法定労働時間を超えて、従業員に残業(時間外労働)や法定休日の労働をしてもらうためには、労使間で「36(サブロク)協定」を締結し、所轄の労働基準監督署へ届け出ておく必要があります。

一般事業場の1ヶ月の残業時間の上限は45時間!

労働基準法で定められている時間外労働(法定外労働時間)の上限はこちらです。

 

<法律上での残業時間の上限原則(休日労働は含まず)>

  •  1ヶ月45時間以内
  •  1年間360時間以内
    (1日2時間程度)

 

また、臨時的な特別の事情があり、会社側と従業員側で合意があれば、例外として次のような上限も認められています。

 

<法律上での残業時間の上限例外(時間外労働+休日労働)>

  •  1ヶ月100時間未満(2~6ヶ月平均80時間以内)
  •  1年間720時間以内
    (1日4時間程度)

 

時間外労働が80時間超は過労死ライン

長時間にわたる労働を続けると疲労が蓄積し、脳脳疾患や心臓疾患につながることがわかっています。そのため、例外的な時間外労働の上限として、1ヶ月100時間未満とは定められているものの、80時間超で過労死ラインに達するといわれています。

そのため、1ヶ月の時間外労働時間はできれば60時間以内に、多くても2~6ヶ月間の平均で80時間以内に収めるようにしてください。

【1ヶ月の労働時間】人事担当が知っておきたい法定労働時間におけるあれこれ

会社の人事担当

こちらでは、1ヶ月の労働時間を設定する際に知っておきたい、例外や変則的なルールについてご紹介します。

【例外】特例措置対象事業場での週上限は44時間!

前述の一般事業場とは異なり、次のような企業は「特例措置対象事業場」とされ、その業務の特殊性より、週の労働時間の上限が44時間以内に設定されています。

【特例措置対象事業場】

常時10人未満の労働者を使用する以下の業種

  •  商業…卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他の商業
  •  映画・演劇業…映画の映写、演劇、その他興業の事業
  •  保健衛生業…病院、診療所、社会福祉施設、浴場業、その他の保健衛生業
  •  接客娯楽業…旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業

一般事業場と同様の計算式「法定労働時間(週)×月の日数(暦日数)÷7」を使い、特殊措置対象事業場における1ヶ月の労働時間の上限も算出します。こちらの上限の範囲内で、労働時間を設定するようにしてください。

【1ヶ月の労働時間の上限(特殊措置対象事業場)】

法定労働時間 月の日数(暦日数)
28日 29日 30日 31日
週44時間以内 176時間 182.2時間 188.5時間 194.8時間

【例外】変形労働時間制では、法定時間内で労働時間の調整が可能

引越し業者など、繁忙期や閑散期がある業種では、変形労働時間制を導入している企業が多いです。このような変形労働時間制を採用している場合には、次のように法定時間内で労働時間の調整をすることができます。

  労働時間の調整可能範囲
一ヶ月単位の変形労働時間制 1ヶ月以内の期間で、平均で1週間あたり40時間(特殊措置対象事業場は44時間)以内で調整する
一年単位の変形労働時間制 1ヶ月超1年以内の期間で、平均で1週間あたり40時間(特殊措置対象事業場は44時間)以内で調整する。1日あたりの労働時間は10時間以内、連続勤務日数は6日まで。
1週間単位の非定型的変形労働時間制※ 1週間における労働時間が40時間以下、1日あたり上限10時間以内で調整する
フレックスタイム制 3ヶ月以内の一定期間が「精算期間」とされ、その期間中における1週間あたりの労働時間の平均が40時間以内で調整する

※規模30人未満の小売業・旅館・料理店・飲食店に限る

裁量労働制でも基本は8時間/日、40時間/週

情報処理システムの設計業務、デザイナー、放送番組のディレクター、建築士、税理士といった業種では、通常の労働時間では管理しきれないため、「裁量労働制」を採用していることが多いです。これは、実労働時間に無関係に、事前に労使協定で決められた「みなし労働時間」の分を働いたとみなす方法となります。

裁量労働制の場合でも、労働時間について「1日8時間以内、週40時間以内」という上限や、残業についても基本は同じです。

こんな時間も労働時間にカウントする必要がある!

次のような時間も、使用者の管理の下にある労働時間となり、賃金の支払いが発生しますので、押さえておきましょう。

 

  •  指定の制服、作業着へ着替える時間
  •  社内外研修
  •  始業時間前に早出しての掃除時間など

 

【1ヶ月の労働時間】法律違反とならないようにするためにできること

企業側としては、従業員の暮らしと健康を守るためにも、法定労働時間の上限をしっかりと守れるように手配する義務があります。そのためにも、次の3点をぜひチェックし実施することをおすすめします。

 

  •  人事評価制度の見直し
  •  勤怠管理システムの見直し
  •  ノー残業デーを設ける

 

まとめ

法改正により、労働時間の上限に関する取り締まりは厳しくなっています。罰則を避けるためというよりも、従業員と企業の双方が健全に過ごしていくためと考えましょう。企業側としても、従業員に無理のない働き方をさせることで生産性がアップするといったメリットにもつながります。

すべての従業員について、1ヶ月の労働時間の上限を管理していく際には、手間や知識が必要です。法律に関わることで少しでも疑問点や悩みが出たら、ぜひ早めに専門家の手を借りましょう。株式会社Office Followでは、勤怠管理や就業規則など日常の労務管理の運用サポートにも対応しています。お気軽にご相談ください。