2024年03月18日

移動時間は労働時間に含まれる?6つのケースにわけて解説

電車を降りた女性

出張や現場間移動を伴う仕事の場合、移動時間を労働時間に含めて計算すべきなのか気になる方が多いかもしれません。労働時間を正しく計算できていない場合、残業代の計算に狂いが生じてしまい、違法な賃金未払いが発生する恐れがあります。

この記事では、移動時間が労働時間とみなされるか否かについて、合計6つのシチュエーションごとに解説します。そもそも労働時間とは何かについても含めて、細かく確認していきましょう。

そもそも労働時間とは何か

時計とハテナマーク

移動時間と労働時間の関連性を知る前に、そもそも労働時間とは何かを再確認しておきましょう。労働時間の原則は次のとおりです。

 

<労働時間の原則>

  • 労働時間とみなされる場合は賃金が発生する
  • 通勤時間は労働時間とみなされない
  • 出張による移動時間は原則として通勤時間とみなされる

 

労働時間の原則や、労働時間と移動時間の関係性を正しく認識できていないと、知らぬ間に労働基準法に違反するリスクもあるため注意しましょう。上記の原則3つをそれぞれ解説します。

労働時間とみなされる場合は賃金が発生する

労働時間とは、従業員が使用者による指揮命令下に置かれている時間を指します。これは厚生労働省のガイドラインにより定められているものであり、会社が独自に設けている労働時間とは無関係に適用される原則です。労働時間とみなされる場合は、会社はこの間の賃金を従業員に支払う義務が生じます。

なお、労働基準法第32条により、労働時間は1日あたり8時間、1週間あたり40時間以内と定められています(休憩時間を除く)。労働時間のみなし方について誤解を抱いていると、知らぬ間に労働基準法に違反する恐れもあるため要注意です。

通勤時間は労働時間とみなされない

従業員の自宅から就業場所へ移動する通勤時間は、原則として労働時間とはみなされません。通勤時間は労働の準備に使う時間として位置付けられ、指揮命令下に置かれる前段階とみなされるため、通勤時間に賃金が発生することはありません。

出張による移動時間は原則として通勤時間とみなされる

出張による移動は原則として「通勤時間」とみなされます。前泊・後泊を伴う出張だとしても、労働時間とはみなさないことが一般的です。ただし「先方に提出する書類を運ぶ場合」など、移動時に管理責任義務を伴う場合は、例外的に移動時間も労働時間に含まれます。

移動時間を労働時間とみなす3つのケース

電車で仕事をするビジネスマン

この項目では、移動時間を労働時間のうちとしてみなるケースを具体的に3つご紹介します。

 

<移動時間を労働時間とみなす3つのケース>

  • 労働時間内に別の場所へ移動する場合
  • 移動中に会社の業務を行う場合
  • 移動中に会社からの指示に従うよう要求されている場合

 

順番に確認していきましょう。

労働時間内に別の場所へ移動する場合

所定労働時間内に、業務を目的として別の場所へ移動する場合は、原則として移動時間も労働時間と考える必要があります。具体的には以下のようなケースです。

 

<移動時間を労働時間とみなすケース>

  • 出社後に営業先へ移動する場合
  • 在宅勤務者が外出して営業を行う場合 など

 

所定労働時間は「従業員は常に使用者による指揮命令下にある」と解釈されます。このため、たとえテレワーク中の従業員だとしても、会社側の指示による労働時間内の移動は「労働」とみなされるのです。

移動中に会社の業務を行う場合

所定労働時外だとしても、下記のように移動と業務を兼ねる場合は、移動時間が労働時間とみなされます。

 

<移動時間を労働時間とみなすケース>

  • 公共交通機関で移動中にPCを使って事務作業等を行う場合
  • 同じ会社の社員を乗せた車を運転する場合
  • 警備担当などの名目で要人に同行する場合 など

 

所定労働時間外に上記の移動を行う場合は、時間外労働手当(残業代)が発生するため要注意です。

移動中に会社からの指示に従うよう要求されている場合

移動中に会社からなんらかの指示を受けた場合、それに従うよう要求されているケースでは、移動時間が「手待ち時間」とみなされます。この場合は、従業員が使用者による指揮命令を受けていると判断されるため、移動時間を労働時間に含めなければなりません。

移動時間を労働時間とはみなさない3つのケース

スーツケースを引いて歩くビジネスマン

先ほどとは反対に、移動時間を労働時間としてみなさないケースとしては、以下の3つが挙げられます。

 

<移動時間を労働時間とはみなさない3つのケース>

  • 出張に伴って移動する場合
  • 従業員が移動時間を自由に過ごせる場合
  • 移動中、即座に会社からの指示に従う必要がない場合

 

なぜこれらのケースでは移動時間を労働時間に含めないのか、詳しくご紹介します。

出張に伴って移動する場合

先述したとおり、出張による移動は「通勤時間」に含まれるため、移動時間とはみなされません。新幹線や飛行機による長距離の移動を伴う場合も同様です。ただし、移動時間の過ごし方によっては、移動時間が労働時間とみなされる可能性があります。

【出張による移動時間が労働時間とみなされるケース・みなされないケース】

労働時間とみなされるケース 労働時間とみなされないケース
・先方に提出する書類や物品を持ち運ぶ場合
・移動中に仕事を命じられている場合
・要人の警護等を目的に移動している場合
・運転手として移動している場合 など
・移動時間を自由に使える場合
・移動中に緊急を要さない業務を行う場合 など

やや複雑な解釈が含まれますが、移動中の過ごし方について会社側から明確な指示が与えられている場合は、移動時間も労働時間に含めなければなりません。

従業員が移動時間を自由に過ごせる場合

移動時間の過ごし方を従業員が自由に決められる場合は、移動時間を労働時間とみなしません。以下のようなケースでは、従業員が使用者による指揮命令を受けているとは考えられないためです。

 

<労働時間とみなされない移動時間の過ごし方の一例>

  • ゲームや読書をして過ごす
  • PCを使ってネットサーフィンや動画の閲覧をする
  • 睡眠をとる など

 

移動時間の過ごし方を従業員に委ねた場合は、その時間を労働時間とみなす必要がありません。

移動中、即座に会社からの指示に従う必要がない場合

移動中に会社からの指示を受けたとしても、即座に応じる必要がない場合は、移動時間を労働時間とはみなしません。一例といては以下のようなケースです。

 

<移動時間を労働時間とみなさないケース>

  • 出張に関する報告書の提出をオフィスで行うよう求めた場合
  • 領収書の提出を月末までに行うよう求めた場合 など

 

反対に「新幹線で移動している間に報告書をまとめるよう指示した場合」などに関しては、移動時間にも賃金が発生します。

まとめ

移動時間を労働時間とみなす場合、移動時間中も賃金が発生します。会社側と従業員側で認識の相違がある場合、残業代の未払いなどを巡りトラブルに発展する恐れがあるため要注意です。移動時間を労働時間とみなすケース・みなさないケースを正しく見分けて判断することが、会社側に求められます。

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