2024年03月11日

内々定の取り消しは違法?裁判事例をもとに取り消す際の注意点を解説

取り消しの書類

人事を担当されている方の中には、企業側に問題が生じた場合はもちろん、学生側に問題があった場合でも内々定を取り消していいのか、不安に思っている方も多いのではないでしょうか。

結論から申し上げますと、内々定の取り消しは違法ではありません。しかし、通知を出すタイミングや理由によっては裁判沙汰になる可能性もあるため、取り消しを行う場合は慎重に行いましょう。

今回は、内々定が取り消しにつながる理由や、取り消しが原因で裁判が起きた事例などをご紹介しつつ、内々定の取り消しを行う際の注意点を解説します。

内々定とは?内々定との違いを解説

内々定とは、「内定日に内定を出しますよ」という口約束のようなもので、内定ほどの強い効力はもちません。具体的には、内々定と内定には以下のような違いがあります。

【内々定と内定の具体的な違い】

  内々定 内定
状態 10月の内定日になったら契約を結ぶと約束している 入社契約を正式に結んでいる
労働契約 不成立 成立
通知時期 6月~9月末 10月~11月
通知を出す目的 優秀な人材の仮確保・囲い込み 入社決定を知らせる

上の表からもわかるとおり、内々定は企業側が優秀な学生を確保するため、募集開始から本選考が開始されるまでの間に通知を出すことが許されています。ただし、内々定を出した段階では労働契約を結んでいないので、場合によっては内々定を取り消すことも可能です。

では、いったいどのような場合が内々定の取り消しにつながるのか、次の項目で具体的に見ていきましょう。

内々定の取り消しにつながる要因

why?のブロックとスケッチブック

内々定が取り消しにつながる要因としては、以下の6つが考えられます。

 

<内々定が取り消しにつながる6つの原因>

  •  提出書類を出していない
  •  経歴詐称
  •  卒業単位の不足や必要資格の取得漏れ
  •  SNSでの不適切行為
  •  体長面の問題
  •  急激な業績悪化

 

それぞれ解説していきましょう。

内々定の承諾書類を提出していない

内々定の通知を出したあと、多くの企業では学生に内々定の承諾書類を提出するよう求めます。しかし、期限までに書類の提出がない場合は内定の意志がないと判断できるので、内々定の取り消しにつながります。

経歴詐称

履歴書や面接などで重大な嘘をつかれていた場合は経歴詐称となるため、発覚次第、内々定を取り消すことが可能です。

 

<経歴詐称の例>

  •  卒業した学校が異なっていた
  •  本当は所有していない資格を取得していると伝えられていた
  •  留学経験がないのにあると伝えられていた
  •  サークル活動などの実績を偽られていた

 

卒業単位の不足や必要資格の取得漏れ

卒業単位の不足と必要資格の取得漏れは、内定を出しても就業日に働くことができないので、内々定の取り消しにつながります。

内定が決定する10月~11月の段階で卒業単位が足りていない学生がいた場合は、就業にあたる最低条件を満たせていないため、内定は見送りとなるでしょう。

また、働く上で必要な資格を入社までに取得できそうにない場合も、内々定の取り消しにつながります。資格取得が難しい旨の連絡が入った場合も、残念ですが内定は見送りとなる連絡を入れましょう。

SNSでの不適切行為

SNSで不適切行為をしている人物は、入社後にトラブルを起こしたり、企業の評判を落としたりする可能性があることから、内々定を通知したあとでも、発覚次第、取り消しにつながります。

昨今ではSNSで何気なく発信した内容がとんでもないトラブルを生むケースが増えているため、リスクヘッジの観点からもSNSのチェックは必要です。

体調面の問題

調律師が聴覚に関する病気を発症したり、医療従事者が失明したりと、業務に支障をきたすほどの健康問題が発生した場合は、残念ながら内々定の取り消しにつながります。

ただし体調面に問題があったとしても、業務に支障がない場合は内々定を取り消すとかえってトラブルに発展する可能性があるので、この場合は専門機関などと今後の対応を話し合った上で処遇を決めましょう。

急激な業績悪化

内々定を出した段階では業績に問題がなかった企業でも、なんらかの理由で急激に業績が悪化する場合があります。業績が悪化すると企業も人員を新しく雇う余裕がなくなってしまうので、このような場合は内々定を取り消す可能性が高くなるでしょう。

ただし、学生にまったく非がない場合、内々定の取り消しを行うタイミングによっては学生側から訴えられてしまう可能性もあります。過去、同じ状況で企業が学生に慰謝料を支払った裁判記録も残っていますので、業績が安定していない場合は十分注意をしてください。

内々定の取り消しは違法?

法律事務所

内々定は冒頭で解説したとおり、内定のように労働契約を結んでいない状態なので、取り消しを行っても違法ではありません。そのため、内定が出る前であれば、企業側だけでなく、応募者側からも内々定を自由に取り消すことが可能です。

ただし、過去には内々定の取り消しによって裁判が行われた場合もあります。ここでは、どのような裁判があったのかご紹介していきましょう。

内々定が取り消された裁判事例

2011年、不動産売買を行う企業に学生が内々定を取り消しされ、学生側が裁判を起こした結果、慰謝料を勝ち取った事例があります。

何度も解説しているとおり、内々定の取り消しには違法性がないので、裁判により企業側が法的な罰を受けることはありませんでした。しかし、企業側は9月25日に学生へ電話をかけ、10月2日に採用内定通知書を交付する日程調整を行っているにもかかわらず、9月30日に内々定の取り消しを行っています。このことから、内定に対する期待や企業に対する信頼を裏切ったとし、相当額の慰謝料請求が認められています。

このとおり、内々定の取り消しに法的な罰則はありませんが、学生側に過度な期待をもたせた状態で内々定を取り消しすると、企業側は相当の罰を受ける可能性があるので注意をしましょう。

内々定の取り消しを行う際の注意点

POINTのブロック

万が一、内々定の取り消しを行うことになった場合は、以下の点に注意をしましょう。

 

<内々定の取り消しを行う際の注意点>

  •  早めに通知を行う
  •  内々定取り消しの理由を明確に説明し謝罪する

 

早めに通知を行う

内々定の取り消しが確定したら、速やかに通知を出しましょう。「内々定が取り消された裁判事例」でご紹介したとおり、内定の直前で取り消しを行うと裁判になる可能性があります。また、通知が遅くなると学生の就職活動時間がなくなってしまいますので、内々定の取り消しは、わかり次第すぐに伝えましょう。

内々定取り消しの理由を明確に説明し謝罪する

内々定の取り消しを伝える際は、どんな理由で取り消しに至ったのか明確に説明し、丁寧に謝罪を行いましょう。

とくに業績の悪化など学生サイドに非がない場合は、理由を細かく説明しなければ大きな問題に発展しかねません。また、内々定の取り消しを伝える際に謝罪ができていない場合もトラブルになる可能性が高いです。

内々定の取り消しにはさまざまな理由があると思いますが、トラブルが起きると企業の評判を落とすきっかけにもなるので、通知を出す際は、必ず真摯な態度で説明と謝罪を行いましょう。

まとめ

内々定は内定のように労働契約を結んでいないので、取り消しを行っても違法性はありません。しかし、内々定を通知した段階で学生は内定に対する強い期待を抱いています。どのような理由であれ、取り消しを行う際は、早めに通知を出し、真摯な態度で説明と謝罪を行いましょう。

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