2024年03月08日

所定労働時間とは?残業時間、休憩時間、パート・アルバイトの取り扱いについても解説します

時計の横でパソコンの作業をする人

企業の人事担当者が押さえておきたいもののひとつに「所定労働時間についての把握」があります。従業員の給与計算、残業手当の計算などに大きく関わるものです。法定規則である法定労働時間とは別のものであることなど、正しく理解しておきたいところです。

そこで今回は所定労働時間について、どのような定義なのか、法定労働時間との違い、残業時間や休憩時間についてのルール、給与や残業代の計算方法、アルバイト・パート従業員の残業代の考え方などを解説していきます。

所定労働時間とは

腕時計を見る女性

まずは、所定労働時間とはどのような定義なのか、明確に押さえておきましょう。

所定労働時間とは:就業規則で定められた労働時間のこと

所定労働時間とは「各企業の就業規則で決められた始業時刻~終業時刻までの時間より、休憩時間を差し引いた労働時間」です。

 

<所定労働時間の考え方(例)>

  •  始業時間:9時
  •  終業時間:18時
  •  休憩時間:1時間
    上記の場合 → 所定労働時間=18-9-1=8時間となる

 

また、同じ企業内でも職種などの違いにより、労働者間で所定労働時間が異なる場合もあります。いずれにしても、所定労働時間は労働基準法で定められている法定労働時間の範囲内で、各会社が独自に決めることになります。

ここで似たような2つのワードが出ましたが、所定労働時間とは法定労働時間とどのように異なるものなのでしょうか。

所定労働時間とは:「法定労働時間」とはどう違う?

会社が独自に決定する所定労働時間に対して、法定労働時間は「労働者の健康や福祉を守る観点から法規上で定められている労働時間」のことを指します。原則として「1日に8時間以内、1週間に40時間以内」と定められています(労働基準法第32条)。
参考:「労働基準法」第三十二条

法定労働時間を超過させて所定労働時間を決めることはできません。しかし、ときには時間が足りず、残業が必要な状況になることもあるでしょう。この場合は時間外労働という扱いになり、残業手当の支給対象となるかどうかは「法定労働時間」が基準となります。

ちなみに所定労働時間が7時間の場合では、1時間残業をした際は「法定内残業」ということになり、法規上の時間外労働にはあたりません。

法定時間外労働時間についても、次のようにルールや上限が決められています。

法律上での時間外労働(法定外残業時間)の上限原則
(休日労働は含まず)
法律上での残業時間の上限例外
(時間外労働+休日労働)
・1ヶ月45時間以内
・1年間360時間以内
(1日2時間程度)
・1ヶ月100時間未満(2~6ヶ月平均80時間以内)
・1年間720時間以内(1日4時間程度)

※臨時的な特別の事情があり、労使で合意がある場合に限られる

参考:厚生労働省

法定外残業時間が上限の原則を超えたり、例外的に認められた上限を超えたりした場合には法律違反となり、「6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金」といった罰則が科される場合があります。

法定労働時間を超過させて労働させる(残業)場合には36協定の締結が必須

労働者に残業をしてもらうためには、「36(サブロク)協定」を事前に労使間で締結し、労働基準監督署長へ提出しておく必要がありますので注意しましょう。

所定労働時間とは:休憩時間のルール

労働基準法では、休憩時間についても次のように定められています。また、休憩時間は労働時間には含まれません。

法規上で定められている休憩時間
1日の労働時間 1日の休憩時間
6時間を超える場合 45分間以上
8時間を超える場合 1時間以上

参考:「労働基準法」第三十四条

【月給制】実労働時間が所定労働時間に満たなかった場合の給与の計算方法

給料

所定労働時間についての基本を押さえたら、次は所定労働時間に対する給与の計算方法を把握しておきましょう。

給与が時給制であれば、もし病欠などをした場合には、実労働時間分の給与を計算すればいいことになります。しかし、給与が月給制で欠勤をした場合には、所定労働時間を下回ってしまいますので、どのように計算すればよいのでしょうか。

この場合にも、基本給から不足時間分を差し引く形になります。月の平均所定労働時間を用いて、時給金額を算出し、次のように計算しましょう。

【月給制】実労働時間が所定労働時間に満たない場合の給与の計算方法
  1. (365日-年間休日)×1日の所定労働時間÷12ヶ月=月平均所定労働時間(A)
  2. 控除額(B)=基本給(月給)÷ A ×不足時間
  3. 基本給(月給)― B =その月の給与額

 

実労働時間が所定労働時間、法定労働時間を超えた場合の残業手当の計算方法

こちらでは、残業をした場合の手当の計算方法を見ていきます。法定外労働時間に対する賃金の割り増し率は、労働基準法で次のように定められています。

【法定外労働に対する賃金の割り増し率】

種類 割り増し率
時間外労働 25%以上
月60時間を超える残業 50%以上
深夜労働(22時~5時) 25%以上
休日労働 35%以上
時間外労働+深夜労働 25%+25%=50%以上
休日労働+深夜労働 35%+25%=60%以上 

参考:東京労働局

それでは、ひとつずつ例を挙げて解説していきましょう。

法定内残業が発生するケース

実労働時間が所定労働時間を超えた場合でも、1日の法定労働時間を超えていなければその超過分は「法定内残業」となります。法定内残業に対する手当は「通常時の時給分」となり、賃金割り増しの対象にはなりません。

法定内残業の考え方(例)

始業時間9時、終業時間17時、休憩時間1時間 → 所定労働時間=7時間
18時まで労働した場合 →実労働時間8時間

  • 実労働時間-法定労働時間=8-8=0時間(法定外労働時間)
  • 法定内残業手当は「通常時の時給分」

 

法定外残業が発生するケース

実労働時間が法定労働時間を超えた場合には、法定外労働時間に対して、時間外労働時間の賃金割り増し率が適用されます。

法定外労働時間(残業時間)の考え方(例)

始業時間9時、終業時間18時、休憩時間1時間 → 所定労働時間=8時間
19時まで労働した場合 →実労働時間9時間

  • 法定外労働時間=9-8=1時間(時間外労働に対する賃金(割り増し率25%以上)の支給対象となる)

深夜労働が発生するケース

夜勤

22時~5時まで労働した場合には、深夜労働に対する賃金割り増し率の対象となります。

深夜労働(残業時間)の考え方(例)

22時~24時まで→深夜労働時間2時間

  • 深夜労働手当=1時間あたりの賃金×1.25×2時間

休日労働が発生するケース

法定休日(法規上で義務付けられた休日)に労働した場合には休日労働に対する賃金割り増し率35%の対象となります。ただし、所定休日(企業が与える休日)に労働した場合は休日労働に対する賃金割り増し率の対象外となり、通常時の時給賃金等が支給されます。

休日労働(残業時間)の考え方(例)
  • 法定休日に労働→休日労働に対する賃金割り増し率35%の対象
  • 所定休日に労働→通常時の時給賃金等が支給される

パート・アルバイトの残業代も基本は同じ考え方

所定労働時間の取り決めは、労働者がパートやアルバイトの場合でも同様に労働基準法が適用され、明示が必要です。また、有給休暇については付与日数に違いはあるものの、一定の条件を満たすことで年次有給休暇を取得できます。

まとめ

所定労働時間とは「各企業の就業規則で決められた労働時間」のことで、具体的には「(始業時刻~終業時刻)―休憩時間=所定労働時間」となります。所定労働時間は、法定労働時間の範囲で企業が独自に決定することができます。法定労働時間を超過して労働させる可能性が想定される場合には、事前に36協定の締結・提出が必要になりますので注意しましょう。

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