労災保険とは?加入条件、加入手続き、補償の種類、補償を受ける際の申請方法について詳しく解説します
従業員が業務中や通勤途中で被ったケガなどに対して補償を受けられるのが「労災保険」です。労災保険とは公的保険制度のひとつであり、一定の条件を満たす企業は加入必須となっています。起業したばかりの方や事務担当になったばかりの方の場合、労災保険についてよくわからない、という方も多いかもしれません。
そこで今回は、労災保険について詳しく知りたい方を対象に、労災保険の概要、適用される災害3つ、加入条件、加入手続き、補償の種類内容、補償を受ける際の申請方法などについて詳しく解説します。
労災保険とは
労災保険とは、業務中・通勤時に被ったケガなどが補償される公的保険制度です。労働者やその遺族の暮らしを保護するため、雇い主となる企業に加入が義務付けられています。失業した際に手当てが給付される雇用保険とあわせて「労働保険」とも呼ばれ、加入と保険料の徴収は同時に行われます。
労災保険の加入条件
パート・アルバイトを含めた労働者を1日でも、1人でも雇っている事業主は、労災保険への加入手続きを必ず行わなければなりません。
労災保険の加入対象者は、パート・アルバイト・日雇いなどを含めた労働者全員です。ただし、事業主や役員は対象外となります。また派遣社員については、直接の雇用関係にある派遣元の会社で、労災保険への加入手続きや補償の請求などを行うことになります。
労災保険が適用される災害は主に3つ
労災保険が適用される災害は、次の3つになります。
- 業務災害
- 複数業務要因災害
- 通勤災害
では、ひとつずつ詳しく見ていきます。
業務災害
業務災害とは、従業員が業務中に、業務が原因で負ったケガ・病気・障害・死亡などのことです。この「業務中」とは所定労働時間内だけでなくその休憩時間中、残業中や業務目的での外出中や出張中なども含まれます。
複数業務要因災害
複数業務要因災害とは、2つ以上の異なる職場で働いている労働者が、それらの業務を原因で負った病気のことです。この場合に対象となるのは、脳・心臓疾患・精神障害などになります。たとえば、それぞれの労働契約や環境に問題がなかったものの、2つあわせれば十分に過労であり、それが原因で心身の調子を崩した場合なども対象となります。
通勤災害
通勤災害とは、従業員が「合理的な経路および方法」で通勤中に負ったケガ・病気・障害・死亡などのことです。そのため、従業員が通勤途中で寄り道などをして負ったケガなどは対象外となります。
労災保険への加入手続き・期限
労災保険の適用事業となった場合には、次の流れで加入手続きを行います。それぞれ期限がありますので注意しましょう。また、①と②の手続きを同時に行うことも可能です。
提出書類 | 提出先 | 期限 |
---|---|---|
①保険関係成立届 | 労働基準監督署 | 労働者を雇用して労働を開始した日(保険関係成立日)の翌日から10日以内 |
②概算保険料申告書 ・保険料納付 |
労働基準監督署、都道府県労働局などのいずれか | 保険関係が成立した日の翌日より50日以内 |
③年度更新手続き(毎年) | 労働基準監督署、都道府県労働局などのいずれか | 6月~7月 |
労災保険料の計算方法
労災保険料は次の式で求められ、事業者(企業)が全額負担することになっています。
- 労災保険料額=賃金総額(労働者に支払った賞与・通勤手当て等を含めた総額)×労災保険率
労災保険率については、事業の種類によって2.5/1,000から88/1,000までと異なります。以下の労働局パンフレットを参考にしてください。
労災保険による補償の種類は主に8つ
従業員の健康と暮らしを守るための労災保険では、次の8つの補償を受けることができます。
<労災保険で受けられる補償>
- 療養(補償)給付
- 休業(補償)給付
- 傷病(補償)年金
- 障害(補償)給付
- 介護(補償)給付
- 遺族(補償)給付
- 葬祭給付
- 二次健康診断等給付
こちらもひとつずつ解説していきましょう。
療養(補償)給付
労療養(補償)給付は、労働保険の適用となる3つの災害のうち、いずれかによってケガや病気になり療養する際に、治療費・入院費・投薬料などが給付されます。また、労災病院や労災保険指定医療機関等で治療を受ける場合には、その治療をもって給付に替えることができます(治療費が無料になります)。
休業(補償)給付
休業(補償)給付は、労働保険の適用となる3つの災害のうち、いずれかによってケガや病気になり、療養が必要なため働くことが難しくなった場合に、賃金の代わりとして給付されるものです。具体的には、休業日の4日目より、休業1日につき給付基礎日額の60%が給付されます。
傷病(補償)年金
傷病(補償)年金は、労働保険の適用となる3つの災害のうち、いずれかによるケガや病気が、療養開始から1年6ヶ月を過ぎても治癒しておらず、障害の程度が傷病等級に該当する場合に給付されるものです。給付日額や傷病特別支給金については、障害の程度により異なります。
障害(補償)給付
障害(補償)給付は、労働保険の適用となる3つの災害のうち、いずれかによってケガや病気になり、治癒後に障害が残った場合に給付されるものです。障害等級1~7級に該当する場合は障害等年金が、8~14級では障害等一時金が給付されます。
介護(補償)給付
介護(補償)給付は、障害(補償)年金または傷病(補償)年金の第1級・第2級の精神・神経の傷害、および胸腹部臓器の傷害があり、現在介護を受けている場合に給付されるものです。
遺族(補償)給付
遺族(補償)給付は、労働保険の適用となる3つの災害のうち、いずれかによってケガや病気になり、従業員が死亡した場合に、遺族に給付されるものです。従業員と生計をともにしていた遺族へは、遺族(補償)年金が給付されます。受け取る遺族がいない場合には、一定の受給資格を満たす遺族へ遺族(補償)一時金が給付されることになります。
葬祭給付
葬祭給付は、労働保険の適用となる3つの災害のうち、いずれかによるケガや病気で死亡した従業員の葬祭を行うときに給付されるものです。給付額は「315,000円+(給付基礎日額×30日分」が基本となります。
二次健康診断等給付
二次健康診断等給付は、職場での直近の定期健康診断などで、脳・心臓疾患に関係する一定の項目(血圧・血中脂質・血糖・BMI)のすべてで異常が見られたときに給付されるものです。ただし、船員については対象外となっています。
労災保険が適用される場合の申請方法とは
従業員が労災保険の適用となるケガや病気などを負った場合には、次の流れで補償を申請しましょう。事前に基本的なポイントを押さえておくことで、スムーズに進めることができます。
1.補償の種類に合った請求書を手に入れる
管轄の労働基準監督署または厚生労働省のホームページにて、労災請求用紙を手に入れます。補償の種類によって用紙が異なりますので注意してください。従業員、企業の事務担当者のどちらでも入手可能です。
2.請求書への記入、必要書類の準備
必要事項を記入し、事業主による署名ももらいましょう。また、療養先医療機関からの診断書等や、記載依頼が必要になります。焦らず、ひとつずつ準備していきましょう。
3.請求書、必要書類を労働基準監督署へ提出する
補償の種類によって必要な書類を添付し請求書が完成したら、所轄の労働基準監督署へ提出してください。あとは労災の適用となるかの審査結果を待ちましょう。
まとめ
労災保険とは、業務中・通勤時に被ったケガなどが補償される公的保険制度です。労働者やその遺族の暮らしを保護するため、雇い主となる企業に加入が義務付けられています。
もし事業主が加入手続きを故意または重大な過失により怠った期間中に労働災害が発生し、労災保険給付が行われた場合には、事業主へ、未払い労災保険料・追徴金の徴収、労災保険給付に要した費用の100%または40%の徴収がなされます。こういったペナルティを避けるためだけでなく、従業員の生活を守るためにも、労災保険へは必ず加入しましょう。
株式会社Office Followは、労災保険についてよくわからないという方のお手伝いをさせていただきます。起業したばかりの方や事務担当になったばかりの方で、労災保険についてのお悩みがある場合には、プロの相談するのが一番確実な方法です。他にも労働契約管理に関する項目にも対応可能ですので、お気軽にご相談ください。