2024年03月06日

労働基準監督署(労基署)の調査内容とは?対応方法や相談先についても解説します

労働基準監督署

労働基準監督署から調査の要請がきた場合、経営者としてどのように対処すればよいのでしょうか。いわゆる「労基署調査」への対応は慎重に行う必要がありますので、結論からいえば社労士事務所などのプロに初めから相談して、一緒にすすめていくのがベストだといえます。

今回はそんな労基署調査について、労基署や監査官とはどのようなものなのか、調査の種類や内容、調査により発覚した直近の法違反の状況、労基署調査への対応方法、おすすめの相談先などについて、わかりやすく解説していきます。

労働基準監督署(労基署)とは?

就業規則とはてなマーク

労働基準監督署は厚生労働省の出先機関のひとつであり、労働基準法に基づき、企業の労働状況などについて監督指導を行ったり、労働者災害補償保険法に基づき、労災保険の調査や支給を行ったりする機関です。また、機械を使用する企業においては、労働完全衛生法に基づき特定の機械の検査をします。

労基署は、全国に321署、その支署は4ヶ所あります(令和3年3月末時点)。それぞれの労基署が所轄管内の企業に対して、随時調査を行っています。

労働基準監督署の具体的な内部組織は、次のようになっています。

労働基準監督署の内部組織
方面
(監督課)
労働基準法などの関係法令に関する各種届出の受付、相談対応、監督指導を行う
安全衛生課 機械・設備の設置に係る届出の審査、
職場の安全や健康の確保に関する技術的な指導を行う
労災課 仕事に関する負傷などに対する労災保険給付などを行う
業務課 会計処理などを行う

参考:厚生労働省「労働基準監督署の役割」

この4つの組織の中で「労基署調査」を行うことで知られるのが「方面(監督課)」です。その主な仕事を具体的に見てみましょう。

【方面(監督課)の主な仕事3つ】

1.申告・相談の受付 法定労働条件に関する相談、勤務先が労働基準法などに違反している事実について行政指導を求める申告などを受付
2.監督指導 労働基準法に基づき、工場や事務所といった事業場へ立ち入り、設備や帳簿を検査して労働条件を確認。
法違反があった場合は是正を指導し、設備などはその場で使用停止の行政処分を行う
3.司法警察事務 複数回の指導でも法違反の是正が行われない場合には、刑事事件として任意捜査・差押え・逮捕の強制捜査を行い、検察庁へ送検する

参考:厚生労働省「労働基準監督署の役割」

労働基準監督官とは

労働基準監督官とは、実際に労基署調査を行う人のことです。その人数は全国で3,018人(令和2年度時点)となっています。

監督官は、「労働基準監督官行動規範」に沿って、法違反の指摘だけでなく、是正方法や改善方法などきめ細やかな情報提供やアドバイスをするのが仕事です。

労基署が行う調査には主に4種類ある

4の数字

労基署についての基本情報を押さえたら、いよいよ労基署調査について詳しく見ていきましょう。労基署が行う調査には、主に次の4種類がありますが、どの調査についても企業側は拒否できません。

 

<労基署が行う調査は主に4種類>

  1.  定期調査
  2.  申告調査
  3.  災害時調査
  4.  再監督、再調査(是正されない場合)

 

①定期調査

最も一般的な調査です。労基署が毎年定めるテーマに従い、その対象企業や業種に対し調査を行います。管轄内の企業を対象に、毎年定期的に調査を行うものであり、そのほとんどで事前に対象企業へ調査依頼の連絡がいくことが多いです。

②申告調査

労働者やその関係者からの通報(申告)を受けたことにより行われる調査です。残業代の未払い、長時間労働といった状況が原因となることも多く、通報内容について深く調査することになります。労働者保護の観点から、申告の有無については企業側へ伝えないケースもあります。

③災害時調査

業務中や通勤中の事故でけがや病気を負ったり、死亡したりなど、労働災害(労災)が発生した際に行われる調査です。労災の原因、法律違反の有無などを調査し、危険な機器が原因であった場合にはその場で使用停止を命じることもあります。労災の規模が大きい場合には、再発防止の指導も行います。

④再監督、再調査(是正されない場合)

再三の是正勧告にもかかわらず状況が改善されなかったり、是正勧告書の提出が期限までになされなかったりしたときには、再監督や再調査が行われます。

労基署の調査により発覚した法違反の状況

労基署の調査によって労働基準法に違反していることが発覚した場合には、是正や指導を受けることになります。では、実際に発覚した法違反の数はどのくらいなのでしょうか。

最新のデータでは、監督指導実施事業場数33,218に対し、労働基準関係法令違反があった事業場数は26,968と、実に全体の81.2%という結果が出ています。

内訳は以下のとおりです。

監督指導実施事業場数:33,218(100%) 労働基準関係法令違反があった事業場数:26,968(81.2%)
違法な時間外労働 賃金不払残業 過重労働による健康障害防止措置
14,147 3,006 8,852
-42.60% -9.00% -26.60%

※主な業種を計上のため合計数とは一致しない
参照:厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和4年4月~令和5年3月)」p.1

【調査の種類別】労基署による調査への対応方法とは

チェック項目

こちらでは、調査の種類別に、対応方法を解説していきます。

①定期調査への対応

法律違反をしていなければ、労働基準監督官に指示された書類などを素直に提示していくようにすれば大丈夫です。予告があった場合には、書類の準備などをしっかりとしておきましょう。とくに問題がないとはわかっていても不安を感じる場合は、社労士などのプロに相談して、立ち合いを依頼することも可能です。

②申告調査への対応

申告調査では、申告者に不利益がないように対応していく必要があります。申告者が判明している場合には、本人と話し合いの場を設けて謝罪や交渉を行い、解決できればベストです。申告したのが退職者である場合には、監督官に企業側から立ち合いを依頼できることもあります。

申告者がわからない場合には、監督官からの指導・是正勧告を受け、労働状況の改善に努めることになります。

③災害時調査への対応

災害時調査では、労働条件や労働時間、労働者の人数、安全管理体制などにおいて法律違反がなかったか調査します。その際には、就業規則・雇用契約書・タイムカード・賃金台帳といった書類の提示を求められることがありますので、準備しておきましょう。

④再監督、再調査への対応

是正勧告書や指導票は、指定された期日までに提出してください。未提出の場合は、行政指導を受けるほか、検察庁へ送検される可能性もあります。

労基署による調査対応に困ったときは社労士に相談するのがおすすめ

労基署より調査の依頼を受け取ったものの、対応に不安を感じたり、どのようなことを準備しておけばよいのかわからないといったりする場合には、労働基準法などへの対応に詳しいプロに相談するのもおすすめです。

とくに社労士は、企業における労働者の問題について、広範囲にわたる知識をもっていますので、労基署への対応について相談をする相手としては頼りになる存在だといえます。

まとめ

企業を運営していると、労働基準監督署(労基署)からの調査を受ける機会は何度かあるものです。いざというときに慌てないためにも、まずは常日頃から労働時間や労働環境などについてはクリーン性を保ち、労使双方が気持ちよく過ごせるように環境を整えておくことが基本です。

いつ調査依頼があってもよいように、提示要請が予想される書類については、しっかりと準備しておくようにしましょう。

労基署調査について不安のある方は、ぜひ株式会社Office Followまでご連絡ください。労基署対応だけでなく、労働契約管理や法定帳簿などのサポートもいたします。