2024年02月29日

社会保険の扶養を外れるのはどんなとき?年収などの条件、扶養を外れる手続きについても解説します

考えるエプロンの女性

従業員の配偶者や子どもがパートやアルバイトとして働いている場合、収入により、扶養に入れるケースと、扶養から外れて自分で社会保険に加入しなければならないケースの2つにわかれます。いわゆるこの「年収の壁」について、企業を助成する政府の施策が2023年10月より実施されていることも話題です。

今回は、そんな社会保険の扶養について、外れるタイミング、扶養から外れる際に行うべき手続き、知っておきたいポイントなどを解説します。2023年10月からの国による企業助成についても触れますので、ぜひ参考にしてください。

社会保険での扶養とは

社会保険合計

日本ではすべての国民が公的健康保険と年金保険に加入する義務がありますが、会社員(扶養者)の配偶者や家族で一定の収入がない人は、会社の健康保険の被扶養者となることが可能です。年金保険に関しては、国民年金保険第3号被保険者に属することになります。

たとえば、会社員の夫がいる妻や子どもが、パートやアルバイトである一定の収入以下の場合に、夫(扶養者)の会社の健康保険の被扶養者となることが可能です。また、これらの保険料の支払いは免除されます。それにもかかわらず、夫の会社の健康保険は適用され、将来は国民年金も受給できるため、社会保険の扶養範囲内で働くという人は多くいます。

社会保険の被扶養者の範囲

会社員の夫(被保険者)が主として生計を維持している場合を例に挙げて、社会保険の被扶養者となれる範囲をご紹介しましょう。

【社会保険の被扶養者となれる範囲】

日本国内に住民票があり、被保険者(扶養者、夫)によって生計を維持されていて、次の①②をいずれも満たす人

  1.  収入条件
    年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の方は180万円未満)かつ
    ・ 同居の場合は収入が扶養者(夫)の半分より少ないこと
    ・ 別居の場合は収入が扶養者(夫)の仕送り額より少ないこと
  2.  同一世帯の条件
    ・ 被保険者(夫)と同居していなくても条件を満たせば被扶養者となれる者:配偶者、子、孫、兄弟姉妹、父母、祖父母など直系尊属
    ・ 被保険者(夫)と同居していれば被扶養者となれる者:伯叔父母、姪甥やその配偶者など上記以外の
  3. 親等内の親族、内縁の配偶者の父母や子など

参考:日本年金機構

配偶者、子どもなど被扶養者が社会保険の扶養から外れるのはこんなとき

チェックリスト

会社員の夫(被保険者)が主として生計を維持している場合、その家族が社会保険の扶養から外れなければならなくなるのは、主に次の2つの場合です。

社会保険の扶養から外れるタイミング①年収が約106万円超となったとき

被扶養者である妻や子ども(学生以外)などがパートやアルバイトとして働き収入を得ている場合、次の条件を満たし年収が約106万円超となったときには、扶養を外れ、自分の勤務先で社会保険に加入する義務が発生します。2024年10月からは、被扶養者の勤務先の対象が51人以上の企業へと拡大されますので注意しましょう。

【年収が約106万円超となり、扶養から外れ自分で社会保険への義務が発生する人】

  •  勤務先が従業員数101人以上の企業(2022年10月~)
  •  週の所定労働時間20時間以上
  •  所定内賃金が月額8.8万円以上(→年収105.6万円以上)
  •  労働期間の見込みが2ヶ月超
  •  学生ではない
    参考:厚生労働省「社会保険適用拡大ガイドブック」

 

社会保険の扶養から外れるタイミング②年収が130万円超(60歳以上または障害者の方は180万円以上)となったとき

パートやアルバイトの方で年収が106万円超となった場合でも、上記の条件のうち1つでも当てはまらないものがあれば、社会保険の扶養から外れる必要がありません。ただし、年収が130万円を超えてしまった場合には、扶養から外れなければなりません。

また、給与所得などの収入については、130万円を12ヶ月で割った月額108,333円を超える月が2~3ヶ月続くと「見込み年収が130万円を超える可能性がある」と判断されますので、月単位での収入額にも注意が必要です。

被扶養者である妻や子どもなどが個人事業主や自営業の場合には「年収が130万円以上」、60歳以上または障害者の場合は「年収が180万円以上」となったら、社会保険の扶養から外れると考えておきましょう。

年収が130万円超となっても一時的なものであれば連続で2年まで扶養内に留まることが可能

パートなどで働く人々が年収を扶養範囲内に抑えようと就業調整を行うことで、企業の人手不足となっていることを踏まえ、2023年10月より実施されるのが国による対策「年収の壁・支援強化パッケージ」です。

この対策では、一時的な収入増であれば、連続2回(2年)までは扶養に留まることができることも盛り込まれています。ただしこの場合、事業主側が一時的なものであると証明、かつ被扶養者の企業の健康保険組合による認定も必要ですので、注意しましょう。

社会保険の扶養を外れる際に行うべき手続きとは

手続きをする手元

収入増で主に世帯主の社会保険の扶養から外れなければならなくなった場合には、次のような手続きが必要です。

事業主(企業)側が行うべきこと

従業員の家族が社会保険の扶養から外れるという連絡をもらったら、人事担当は、従業員である被保険者(夫)より、該当する被扶養者の保険証を預かります。また、記入してもらった「被扶養者異動届」を所轄の日本年金機構へ提出、削除の手続きを行いましょう。

妻が勤務している企業側は、健康保険・厚生年金保険への加入手続きを行うことになります。まずは従業員(妻)に「被保険者資格取得届」を記入してもらい、年金手帳またはマイナンバーカードを預かりましょう。事実発生から5日以内に、所轄の年金事務所へ提出してください。

扶養を外れた本人(妻)が行うべきこと

勤務先の社会保険へ加入する条件を満たしていない、または自営業の場合には、国民健康保険と国民年金第1号に加入することになります。年金手帳を持参しお住まいの役場へ行き、手続きをしてください。

社会保険の扶養について知っておきたいポイント

社会保険の扶養については、加入先の健康保険組合や年金組合によって、扱いが少し異なることもあります。そのため、次のような注意点も押さえておきましょう。

 

  •  扶養から外れると世帯年収が下がることもある
  •  年収が106万円超となっても手取りが減らない可能性もあり(2023年10月~)
  •  年収には投資の配当金も含まれるケースもあり
  •  扶養から外れる手続きを忘れた場合はさかのぼって計算されることもある

 

とくに2つ目のポイントは、2023年10月より始まったばかりの国の対策ですので、収入を増やしたいと考えている被扶養者の方は、国の政策変更などがあるかもしれませんので、アンテナを張って最新情報を得るようにしてください。

まとめ

従業員の家族が社会保険の扶養から外れるという連絡をもらったら、人事担当は日本年金機構へ「被扶養者異動届」を提出し、削除の手続きを行う必要があります。

また、従業員が配偶者の扶養を抜けて自社の社会保険へ加入する場合には、健康保険・厚生年金保険への加入手続きを行うことになります。国の政策が変化をともないながら進んでいる最中です。そのため、企業側としても最新情報を得ながら、さまざまな手続きを行うようにしましょう。

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