2024年02月28日

社会保険料は4月から6月の給料に応じて高くなる?標準報酬月額の仕組みを解説

保険料のブロック

社会保険料の計算に用いる標準報酬月額は、4月から6月にかけての給料をもとに決まります。そのため、残業が増えるなどして4月から6月の給料が増えた場合は社会保険料も値上がりしますが、標準報酬月額が増えるからといって、デメリットばかりが積み重なるわけではありません。

この記事では、社会保険料の決め手となる標準報酬月額の仕組みにや標準報酬月額の計算方法、標準報酬月額が上がるメリットについてもご紹介します。

社会保険料は4月から6月の給料に応じて決まる

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社会保険料とは、健康保険料をはじめとする各種保険料の総称です。社会保険料は所得税と同じように、会社によって月々の給与から天引きされるため、料金が高いか安いかは、一般の従業員にとっても気になるポイントといえるでしょう。

社会保険料の計算式は「標準報酬月額×保険料率」です。そのため、標準報酬月額に応じて会社と従業員が負担する社会保険料が決まります。標準報酬月額は4月から6月の給料に応じて決まるため、4月から6月に残業時間が多い人の場合、社会保険料が割高になる可能性があるのです。

標準報酬月額を抑えると社会保険料が安くなる

標準報酬月額の計算には、基本給だけではなく、残業手当などの各種手当も含めます。このため、4月から6月の残業を減らすことにより、標準報酬月額を引き下げることが可能です。結果として、社会保険料を安くすることもできます。なお、標準報酬月額ごとに見た社会保険料は次のとおりです。

 

【従業員負担分の社会保険料一覧表(目安)】

標準報酬月額 210,000円~230,000円 250,000円~270,000円 290,000円~310,000円
健康保険料 10,791円 12,753円 14,715円
厚生年金保険料 20,130円 23,790円 27,450円
合計 30,921円 36,543円 42,165円

 

「随時改定」により社会保険料が値上がりすることもある

詳しくは後述しますが、4月から6月にかけての標準報酬月額を引き下げたとしても、その後に給料が上がると「随時改定」により標準報酬月額が見直されます。結果として社会保険料が修正される可能性があるため、4月から6月の残業を無理に削減することが、必ずしも得策とは限りません。

社会保険料の計算に用いる標準報酬月額の決め方とは

電卓とはてなのブロック

社会保険料の計算には、先述したとおり標準報酬月額が用いられます。それでは、標準報酬月額はどのように決まるのでしょうか。重要なポイントは次の2点です。

 

<標準報酬月額の決定方法>

  • 基本的には「資格取得時」と「定時決定」で決まる
  • 標準報酬月額は状況に応じて改定される

 

社会保険料の決め手となる標準報酬月額の仕組みを確認していきましょう。

基本的には「資格取得時」と「定時決定」で決まる

標準報酬月額は「資格取得時」または「定時決定」により決まります。資格取得時は、従業員が入社した際に決まる標準報酬月額で、入社した月に応じて次の期間から算出します。

 

【標準報酬月額を算出する期間】

入社した月 標準報酬月額を算出する期間
1月~5月 その年の8月まで
6月~12月 翌年の8月まで

 

7月1日時点で在籍中の従業員に対して、給与の変動に応じて決める標準報酬月額が「定時決定」です。以下の計算により標準報酬月額を求めます。

 

<定時決定の計算方法>

  • 4月から6月までに支払う3ヶ月分の給料÷3

 

なお、4月から6月までのいずれの月でも17日以上の報酬支払い基礎日数を満たさなかった場合は定時決定を行わず、前年度と同じ標準報酬月額に据え置きます。

標準報酬月額は状況に応じて改定される

先ほども「随時改定」について簡単にご紹介しましたが、標準報酬月額は状況に応じて定期的に改定されます。改定が行われる具体的なタイミングは次の3つです。

<標準報酬月額が改定されるタイミング>

  • 随時改定
  • 産前産後終了時改定
  • 育児休業終了時改定
  • 特例改定

 

それぞれを詳しくチェックしておきましょう。

随時改定

随時改定は、資格取得時もしくは定時決定を除くタイミングにおいて、従業員の給与が大幅に変動した場合に行います。固定された賃金に変動が生じる場合や、前回の標準報酬月額と比較して2頭身以上の変動が認められる場合は、随時改定により標準報酬月額を改めるのです。

産前産後終了時改定

産休取得により給与が変動した従業員に対して行う改定です。産休取得中の女性は、一般的には産休取得前と比較して収入が下がります。これにより標準報酬月額と実際の給与に剥離が生じた場合、産前産後休業終了時改定を行うことにより、会社側の税負担を抑えることが可能です。

育児休業終了時改定

改定の原理は、先述した産前産後休業終了時改定と変わりません。実際に支払われる給料と、標準報酬月額とのギャップを埋めるために改定を行う場合があります。

特例改定

上記の事例には当てはまらないケースにおいて、なおかつ特例性が認められた場合に適用できる改定です。直近では、新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年4月~2022年7月にかけて特例改定が認められていました。

4月から6月の標準報酬月額を上げる3つのメリット

メリットと書かれた黒板

4月から6月の標準報酬月額が上がると、それに応じて社会保険料まで上がることは事実です。しかし、従業員は以下のようなメリットも得られます。

 

<4月から6月の標準報酬月額を上げるメリット>

  • 傷病手当金が増額される
  • 出産手当金が増額される
  • 各種厚生年金が増額される

 

上記3つのメリットを細かく確認しておきましょう。

傷病手当金が増額される

傷病手当とは、病気やケガによる休職期間中に支払われる手当です。3日以上の連続した休暇を取得した場合、4日目以降から傷病手当が支給されます。傷病手当金の計算方法は次のとおりです。

 

<傷病手当金の計算方法(1日あたり)>

  • 直近12ヶ月間の標準報酬月額÷30のうちの3分の2

 

標準報酬月額が高ければ高いほど、受け取れる傷病手当金の金額も上がるため、従業員にとってのメリットとなります。

出産手当金が増額される

出産手当金とは、出産を理由に休んだ場合に支給される手当です。出産前は最大42日間、出産後は最大56日間、合計で最大98日間にわたり受給する資格があります。出産手当金の計算方法は次のとおりです。

 

<出産手当金の計算方法(1日あたり)>

  • 直近12ヶ月間の標準報酬月額÷30のうちの3分の2

 

こちらも標準報酬月額が高いほど支給額が上がります。

各種厚生年金が増額される

各種厚生年金(老齢厚生年金・障害厚生年金・遺族厚生年金)も、標準報酬月額をもとにして決まります。標準報酬月額が高いほど、将来受け取れる厚生年金が上がるのです。

まとめ

社会保険料は、4月から6月の給料に応じて決まる標準報酬月額により変動します。そのため4月から6月の残業時間を減らすことにより、社会保険料を抑えやすくなることは事実です。しかし、標準報酬月額が安いからといって、必ずしも従業員にとってお得になるとは限りません。

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