2024年02月27日

有給休暇は5日間の取得が義務化?違反時の罰則や中途入社の場合についても解説します

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政府による「働き方改革」によって、2019年4月から、すべての事業主(企業)に対し「年5日間の年次有給休暇の確実な取得」が義務化されていることをご存じでしょうか?人事担当になったばかりの方や、開業したばかりの方の場合、従業員の心身の健康を守るためにも、有給休暇取得義務については知っておかなければならない知識です。

そこで今回は、有給休暇取得義務について、具体的な内容、対象となる従業員、遂行する際のさまざまな注意点などをくわしく解説していきます。基本的な知識にプラスして、いくつかのケースへの対処法もご紹介しますので、しっかりと把握しておきましょう。

【基本知識】有給休暇取得義務とは

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「年次有給休暇」は、労働者の心身のリフレッシュを目的とする福利厚生の休暇のひとつです。

日本では、年次有給休暇は従業員側から「この時期に取得したい」という請求ができるはずなのですが、同僚への気兼ねなどが原因となり、有給の取得率は低い状態が続いていました。そこで労働基準法の改正により、2019年4月から、すべての事業主(企業)では従業員にしっかりと有給休暇を取得させることが義務化されたのです。

では、具体的にどのような内容になっているのでしょうか。押さえておきたいポイントは次の4つです。

 

【有給休暇取得義務について押さえておきたいポイントは4つ!】

  •  年次有給10日付与義務のある従業員に対し5日以上/年を取らせなくてはならない
  •  会社が時季を指定して取得させる
  •  時季の指定をする場合は事前に就業規則にて規定しておく必要がある
  •  「年次有給休暇管理簿」の作成と保管(3年間)

 

それでは、ひとつずつ見ていきましょう。

【有給休暇取得義務】年次有給10日付与義務のある従業員に対し5日以上/年を取らせなくてはならない

企業が行う義務がある「年5日間の年次有給休暇の確実な取得」について、その対象となるのは「年次有給休暇が10日以上与えられる従業員」です。この中には、正社員・パート・アルバイトなどの他、有期雇用労働者や、労働基準法における労働時間・休息・休日の規定が適用されない管理監督者も含まれます。

  •  正社員等の場合
    継続勤続年数が6ヶ月超で、その間の全労働日の8割以上を出勤している従業員。

 

正社員等への有休付与日数
勤続勤務年数 0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

参考:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」

  •  パート、アルバイトなど所定労働日数が少ない場合
    所定労働時間が週30時間未満、かつ週4日以下または年間所定労働日数216日以下の従業員。

 

  週所定労働日数 1年間の所定労働日数 継続勤務年数
0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年以上
付与日数 4 169-216 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3 121-168 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2 73-120 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1 48-72 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

参考:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」

【有給休暇取得義務】会社が時季を指定して取得させる

ステップ・手順

これは、あくまでも「有給休暇の取得時季について、従業員の意見や希望をまず聞くこと」が前提になり、その上で企業側が取得時季を指定するという形になります。

 

【有給休暇取得の時季指定までの流れ(例)】

  1.  事業主(企業)が従業員に取得時季について意見を聞く(面談、有休取得計画表、メールなど)
  2.  従業員の意見を優先し、事業主(企業)が取得時季を指定する

 

【有給休暇取得義務】時季の指定をする場合は事前に就業規則にて規定しておく必要がある

年次有給休暇の取得について、事業主(企業)が取得時季を指定する場合は、「時季指定の対象となる従業員の範囲」や「時季指定の方法」などについて、就業規則に記載しておく必要があります。

 

【有給休暇取得の時季指定をする場合の就業規則への記載例】

  •  年次有給休暇が10日以上付与された従業員に対し、付与日より1年以内にうち5日は取得させる際には、事前に従業員へ取得希望時季を訊ね、それを優先して事業主が時季を指定する。

 

【有給休暇取得義務】「年次有給休暇管理簿」の作成と保管(3年間)

企業側では「年次有給休暇管理簿」という書類を作成して、各従業員における年休の取得時季や取得日数、年休付与の基準日などを明確にしておきましょう。これらの情報については、年休を付与した期間中、そしてその期間が経過後3年間は保管しておく必要があります。

年次有給休暇管理簿については、紙ベースだけでなく、システム上で管理してもかまいません。

有給休暇取得義務を遂行する際のさまざまな注意点とは

チェックリスト

事業主(企業)側が自社の従業員に有給休暇を取得させる際には、次の5つの点に注意しましょう。

①就業規則で計画年休を定めていれば5日間の有給休暇に代えることも可能

計画年休とは、前もって従業員へ休暇取得日を計画的に割り振って取得させる、というものです。5日間の有給休暇取得義務を確実にこなすためには、このように従業員が割り振られた年休を取得しやすくする方法を活用するという手もあります。計画年休で使った年次有給休暇は、取得義務の5日にカウントすることも可能です。

②パート・アルバイト労働者の場合は「年10日以上の有休付与対象者」に限る

パートやアルバイトなどの雇用形態となっている従業員については、具体的に次のような方が対象となりますので、把握しておきましょう。

 

  •  週所定労働日数4日の場合…継続勤続年数3年6ヶ月超の従業員
  •  週所定労働日数3日の場合…継続勤続年数5年6ヶ月超の従業員

 

③すでに年次有給休暇を5日取得している場合は時季の指定は不要

中には、すでに年休を5日以上要望していたり、取得していたりする従業員もいるでしょう。この場合には、企業側から取得の時季指定をする必要はありません(時季指定も不可)。

ただし、年休を3日間など5日未満で要望・取得している従業員に対しては、残りの2日間について会社側から時季を指定して取得させればOKです。

④中途入社した労働者は入社日を基準に半年で10日付与

年度の途中で入社した正社員等(中途入社)の場合には、それぞれの入社日を基準にして、半年後から10日間の年休を付与します。中途入社の社員が多い会社の場合は、社員それぞれの基準日が異なることになります。

入社時期が月の途中の場合にも、基準日は月初めに統一しておくことで、年休の管理がしやすくなるでしょう。

⑤守らないと罰則がある

有給休暇取得義務を守らなかった場合には、「30万円以下の罰金」または「6ヶ月以下の懲役」といった罰則が科されることもありますので注意しましょう。

参考:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」

まとめ

すべての事業主(企業)に対し「年5日間の年次有給休暇の確実な取得」が義務化されています(2019年4月~)。その対象となるのは「年次有給休暇が10日以上与えられる従業員(パート・アルバイトを含む)」です。罰則があるだけでなく、企業と従業員の双方がうまく連動して生産性を上げていくためにも、有給休暇取得義務はきちんと果たすようにしていきましょう。

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