2024年02月26日

定年は何歳にすべき?65歳以上の再雇用制度で適用される助成金についても解説します

定年退職通知書

少子高齢化がますます進む中、高齢者の雇用体制が令和3年(2021年)に改正され、施行されています。法律違反とならないように、企業側としても「定年を何歳にすべきか」「高齢者の就業機会をどのように確保できるのか」など、考えなくてはいけない事項が多いのではないでしょうか。

そこで今回は、定年退職についての定義から、高年齢者雇用安定法の改正された内容、高齢者の就業機会を確保するための方法やもらえる助成金などについて、わかりやすく解説します。

定年制度の定義

定年制度とは「労働者が一定の年齢に達したときに退職をする」という制度で、「定年」「定年制」「定年退職制」とも呼ばれます。常時10人以上の労働者を使用する企業は就業規則の作成と労働基準監督署への届出を行う義務があり、退職に関する事項も就業規則に含める必要があります(労働基準法第89条)。

法律上では「60歳以上定年」が定められている

では、定年制は何歳に設定するのが適切なのでしょうか。高年齢者雇用安定法では「企業が従業規則で従業員の定年を定める場合には60歳以上とする」と定められています。実際のところ、多くの企業では定年退職制度についてどのように設定しているのでしょうか。

定年退職制度を導入している企業の割合とは

厚生労働省の「令和4年就労条件総合調査」によると、定年制を定めている企業は全体の94.4%、定めていない企業は5.6%となっています。また、定年制を定めている企業でも「一律に定めている(96.9%)」「職種別に定めている(2.1%)」「その他の定め方(0.6%)」という3種類にわかれています。

では、定年制を導入し一律に定めている企業では、何歳に設定しているところが多いのでしょうか。令和4年と平成29年で比較してみましょう。

【一律定年制を導入している企業における定年年齢別の企業割合】

令和4年の調査結果(前回の調査結果)
60歳 61歳 62歳 63歳 64歳 65歳 66歳以上
72.30% 0.30% 0.70% 1.50% 0.10% 21.10% 3.50%
-79.3 -0.3 -1.1 -1.2 -0.3 -16.4 -1.4

参照:厚生労働省「令和4年就労条件総合調査」厚生労働省「平成29年就労条件総合調査」

一番多いのは60歳定年で72.3%、続いて65歳の21.1%となっています。前回の調査(平成29年)と比較すると、定年年齢は60歳→65歳へと、多くの企業で少しずつ移行していることがわかります。

定年延長が社会全体に求められる理由

定年延長

多くの企業が定年制を導入し、徐々にその設定年齢も上がってきている背景としては、「少子高齢化のますますの発展が予想されること」「高年齢者の就労意欲がアップしていること」などが挙げられます。これらについてしっかり把握することで、企業側としては定年年齢の設定を考える材料にもなります。

では、それぞれ詳しく見ていきましょう。

少子高齢化のますますの発展が予想されるため

少子高齢化が叫ばれる昨今、一番の問題は「労働力の不足」につながることでしょう。高齢者人口は増えているのに出生率が下がっていることから、年金の財源確保も心配されています。そのため、高齢者の生活保護の観点から、年金ではなく「雇用」によってその生活を安定させるという目的もあり、企業に定年延長が求められているのです。

高年齢者の就労意欲がアップしているため

厚生労働省の「令和5年版高齢社会白書」によると、65歳くらいまで仕事をしたいと考えている高齢者は全体で25.6%もいることがわかります。また、収入があり仕事を続けている高齢者では、75歳くらいまで仕事を続けたいという人が36.7%にものぼっています。

図1

引用:厚生労働省「令和5年版高齢社会白書」

このように、高齢者の就労意欲が以前よりも上昇していることも、企業側にも定年延長が求められる理由のひとつだといえます。

高年齢者雇用安定法(令和3年4月1日施行)とは

高齢でも働く男性

少子高齢化の進行にともない、高年齢労働者の雇用確保についての法律も、たびたび改正されています。こちらでは、その最新の内容を解説していきましょう。令和3年の法改正・施行でのポイントは次の2点です。

ポイント1:65歳までの雇用確保(義務)

こちらは以前から続くもので、今後も継続させるべき義務となっています。その義務をはたすために行うべきことは次の2つです。

65歳までの雇用を確保するための方法(義務)
  1.    60歳以上定年
  2.  高年齢者雇用確保措置

このうち②について、「定年制65歳未満」を導入している企業は、「65歳までの継続雇用制度の導入」もしくは「定年制の廃止」のいずれかの措置を実施する必要があります。ただしこれは、「定年制65歳」の導入が義務化される、ということではありません。あくまでも、65歳までの雇用確保の義務があるということになります。

ポイント2:70歳までの就業機会の確保(努力義務)

今回の改正で加えられたのがこちらのルールになります。65歳~70歳までの方の就業機会を確保するために、次の5つの方法からいずれかを努力することが義務付けられました。

70歳までの就業機会を確保するための方法(努力義務)
  1.   70歳までの定年引き上げ
  2.  定年制度を廃止する
  3.  70歳までの継続雇用制度の導入
  4.  70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  5.  70歳まで継続的に一定の事業に従事できる制度の導入

これらの措置は「努力義務」ですので、企業側と従業員の間で同意を得ることを条件に、対象者を限定して基準を設けることも可能です(①と②は除外)。また、複数の方法により、70歳までの就業機会歩確保を行っても構いません。

多くの企業ではどの方法を選択して実行しているのでしょうか。「高年齢者雇用状況等報告(令和4年)」によれば、以下のように「②継続雇用制度の導入」を選択する企業が全体の70.6%と最も多くなっています。

図2

引用:厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告(令和4年)」

【令和5年度】定年延長など65歳以上の雇用促進努力でもらえる助成金とは

助成金ブロック

こちらでは、定年延長や70歳までの継続雇用制度の導入といった努力をすることで、国からもらえる助成金を3つご紹介します。

65歳超継続雇用促進コース

65歳超継続雇用促進コースは、次のいずれかを行った企業(事業主)に対して助成されるものです。制度の導入にあたり経費がかかっている、就業規則を整備した等、条件がいくつかあります。

  •  65歳以上への定年の引き上げ
  •  定年制の廃止
  •  希望する従業員全員を66歳以上まで雇用する継続雇用制度の導入
  •  他社による継続雇用制度の導入

 

高年齢者評価制度等雇用管理改善コース

高年齢者評価制度等雇用管理改善コースは、高齢者に向けた雇用管理制度の整備などの措置を、次の2つの措置によって実施した企業(事業主)へ助成されるものです。

  •  雇用管理整備計画の認定…高齢者の能力開発・能力評価・賃金体系・労働時間等の雇用管理制度の見直し・健康診断などの整備計画書を作成・提出・認定が必要
  •  高年齢者雇用管理整備措置の実施…上記の計画に基づいて、期間内に実施すること

 

高年齢者無期雇用転換コース

高年齢者無期雇用転換コースは、次の2つの措置により、50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を、期限のない労働者(無期雇用者)へ転換させた企業(事業主)が受給できる助成金です。

  •  無期雇用転換計画の認定
  •  無期雇用転換措置の実施

 

まとめ

4人に1人が高齢者という世の中になっている現在、今後の超高齢化社会への準備として「高年齢者雇用安定法」も改正が続いています。令和5年時点で企業側が押さえておきたいポイントは「65歳までの雇用確保(義務)」と「70歳までの就業機会の確保(努力義務)」の2点です。法律違反とならないよう、企業が求められている努力をしていきましょう。

「定年は何歳にすべきか」「従業員が65歳以上となったときの就業機会をどのように確保すべきか」など、定年制度の整備に不安を抱えている方は、株式会社Office Followまでご相談ください。助成金を活用したコンサルをはじめ、働き方改革の推進などを真摯にお手伝いいたします。