有給は理由なしで取得できる?私用以外に使えるおすすめの理由もご紹介
社員から有給を申請された場合、理由を言わなければ有給を認めないと発言したり、理由によって希望日に有給を与えなかったりする行為は労働基準法違反です。そのため、社員から有給を申請されたときは、特別な理由がない限り、希望日で申請を通しましょう。
ただし、会社の状況によっては有給の日程変更を社員にお願いすることも可能です。今回は、有給の申請に理由は必要なのかといった疑問から、有給申請で使用されやすい理由などをご紹介します。
有給には申請理由が必要?
結論からお伝えすると、有給は申請理由がなくても取得が許されています。なぜなら、有給取得は6ヶ月以上継続して勤務をしている労働者のうち、出勤率が8割以上の人全員に認められた権利だからです。
また、2019年4月に労働基準法が改正されてからは、1年間で最低でも5日間の有給取得が義務付けられています。
このことから、有給は働いている以上、労働者が必ず取得しなければならない休みなので、申請時に理由を説明する必要はないのです。
申請書の理由欄は「私用」で問題なし
有給は申請時に理由を説明しなくてもいいと解説しましたが、会社によっては申請書に理由を記載する欄を設けている場合もあるかもしれません。
本来なら有休の取得に理由を説明する義務はないので、従業員が申請書を提出する際、理由欄は空欄でかまいません。しかし、空欄だと気が引けるという社員は、理由欄に「私用」と書く場合があります。
私用とは「個人的な理由」という意味ですが、会社側は労働基準法第39条で労働者に有給を与えることが義務付けられているため、理由が何であれ承諾しなくてはなりません。そのため、有給の理由に「私用」と書かれていても、理由を追及せずそのまま承諾しましょう。
有給申請時に使用されやすい理由
従業員が有給を申請する際は、主に以下の理由で申請されることが多いです。
<有給申請時に使用されやすい理由>
- 子どもの行事参加
- 人間ドックや健康診断
- 居住地で行われる活動への参加
- 冠婚葬祭
- 役所や銀行での手続き
- 自宅の修理工事や点検
理由によって有給取得を拒否する行為は労働基準法違反になるため、いかなる理由でも申請された有給は承諾しなくてはなりませんが、私用には上のような申請理由が含まれていることを知っておくといいでしょう。
子どもの行事参加
参観日や運動会など子どもの行事は、お子さんがいらっしゃる場合に多く使用される申請理由です。参観日は数時間で終わる場合もありますが、有給が申請されたときは、「参観日が終わり次第出社するように」などの発言はしないよう注意しましょう。
人間ドックや健康診断
人間ドックや健康診断は、平日しか受けられない、または平日でないと料金が高くなるといった理由があるため、有給を使う理由として利用できます。従業員の健康を守るためにも、申請された場合は早めに承諾を出しましょう。
居住地で行われる活動への参加
町内会の行事や会議、マンションの会合へ参加しなくてはならない場合も、有給を活用できます。とくにマンションにお住まいの方は管理組合の理事に選出されると、必ず本人が会合に出席しなくてはなりません。会合は平日の日中に行われることもあるため、この場合も快く有給を承諾してあげてください。
結婚式
家族や友人の結婚式だけでなく、自分の結婚式で会社を休む場合も有給が利用されます。ただし、結婚が決まった社員がいる場合は、式の前後で新婚旅行による長期休みが有給として出される可能性があります。該当社員の上司にあたる方はその点を考慮し、有給を出されても快く承諾できるよう仕事の振り方を考えておきましょう。
役所や銀行での手続き
役所や銀行は平日の日中しか開いていないため、書類の提出や口座開設などの手続きをしなくてはならない場合、有給の理由として活用されます。
役所や銀行の手続きは意外と時間がかかる上、手続き期限が迫っている可能性もありますので、この場合も速やかに承諾を出してください。
自宅の修理工事や点検
従業員がリフォームなどで自宅の修理工事を行う場合や、ガスなどの点検を受ける場合は、作業日に立ち会いが必須となるケースが多いです。この場合、従業員は業者側から提案された作業日に在宅する必要がありますので、申請された際はそのまま承諾を出しましょう。
「時季変更権」を行使すれば有給の日程を変更できる
会社側は従業員が有給の申請を出した場合、その日程で休みを提供しなければなりません。しかし「時季変更権」を行使すれば、申請された有給の日程を変更できます。
時季変更権とは労働基準法第39条に記載されている会社側の権利です。繁忙期に有給が申請されたときや、同じ日に複数の人数から有給の申請が出たときなどに行使できます。
ただし、時季変更権は有給を拒否する権利ではなく、有給の日程をずらす権利なので、どうしても従業員の希望を承諾できない場合は、話し合いを行った上で有給の日程を調整しましょう。
有給を承諾できない場合は正当な理由説明が必要
有給は、取得理由を説明しなくても、申請した日に休みを取得できる従業員の権利です。
ただし、従業員の希望するタイミングで有給を承諾できない場合は、取得できない理由を従業員へ説明しましょう。理由を説明すれば、有給を申請された日が繁忙期だったり、外せない仕事が入る可能性があったりするなどの正当な理由を従業員へ伝えられるので、トラブルを避けられます。
正当な理由がないにもかかわらず有給の申請を断った場合は、会社側が労働基準法を違反していると判断されます。この場合、以下2つの外部機関から注意勧告を受けたり裁判を起こされたりする可能性があるため、注意をしましょう。
- 労働基準監督署
- 弁護士
それぞれどのような機関なのか、ご紹介していきます。
労働基準監督署
労働基準監督署とは、管轄内の会社が労働基準法を守っているか監視している機関です。管轄内の会社が労働基準法を守っていない場合は、指導勧告を行ったり、立ち入り調査が行われたりします。
有給を正当な理由なしに拒否する行為は労働基準法違反ですので、従業員が相談を持ち掛けた場合、後日、指導が入る可能性が高いです。
弁護士
労働基準監督署の指導が入っても会社に改善が見られない場合は、従業員からの相談により、弁護士から指導が入る場合があります。
弁護士の指導に従わない場合は裁判に発展するケースもありますので、万が一、弁護士から指導が入ったら速やかに対応しましょう。
まとめ
有給は、6ヶ月以上勤務を続けている労働者のうち、出勤率が8割以上であれば、全員が理由を説明する必要なく希望日に休みを取得できます。有給を申請する書類に理由を書く欄がある場合でも、私用と記載されていれば問題ありませんので、管理者の方は理由を追及せず、申請日に有給を承諾してください。
ただし、人員が欠けることで会社の仕事がまわらなくなるときは、会社側も労働者に有給の日にち変更を言い渡すことが可能です。
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