賃金規程とは?記載すべき項目や作成ルール、作成の流れについて解説
賃金規程とは、企業の賃金に関する取り決めをまとめた重要なものです。賃金規程を作成する際には、必ず記載すべき事項や賃金規程を作成する際に守るべきルールなどがあります。賃金規程を作成していない場合は、ルールに沿って作成する必要があるでしょう。
この記事では、賃金規程に記載すべき項目は何か、作成時のルールや流れについて解説します。
賃金規程とは
賃金規程とは、企業内の給与や賞与などについての取り決めが記載されたものです。給与の計算方法、支払い方法、支払期日、諸手当などについて、具体的なルールがまとめられています。
賃金規程は、就業規則のなかに含まれるものです。就業規則では労働時間や労働環境に関するルールが定められており、賃金規程も含まれています。
なお、就業規則は常時10人以上の従業員がいる企業に、作成が義務付けられています。
賃金規程に記載する「絶対的記載事項」と「相対的記載事項」
就業規則には、必ず記載すべき「絶対的記載事項」と、ルールがある場合に記載する「相対的記載事項」があります。これは、労働基準法第89条で定められていることです。ここでは、賃金規程の「絶対的記載事項」と「相対的記載事項」についてご説明します。
<賃金規程の絶対的記載事項>
- 賃金の決定方法(基本給や諸手当、適用範囲、構成など)
- 賃金の計算方法、支払い方法
- 賃金の締め切り、支払時期
- 昇給に関する規程
<賃金規程の相対的記載事項>
- 賞与などの臨時の賃金について
- 最低賃金額に関すること
- 業務に必要な食費などの諸経費の負担に関すること
賃金が基本給、各種手当(家族手当、資格手当など)、割増賃金(時間外労働、休日労働、深夜労働)で構成されるなどの内容は記載必須です。また、詳しい計算方法や支払方法、支払期日、昇給制度の規程なども盛り込む必要があります。
賃金規程に関するサンプルがほしい場合は、厚生労働上のモデル就業規則が役に立ちます。モデル就業規則を参考にして、自社の規程に沿った賃金規程を作成するとよいでしょう。
賃金規程を定める際のルール
賃金規程を定める際には、守るべきルールがあります。ここでは、賃金規程を定める際にとくに注意すべきルールについてご説明します。
賃金支払い5原則を守る
賃金の支払いについては、労働基準法賃金24条で以下のような5つの原則が規定されており、守らなければなりません。
<賃金支払い5原則>
- 通貨で
- 直接労働者に
- 全額を
- 毎月1回以上
- 一定の期日を定めて
「毎月1回以上」については、年棒制の場合は年1回ではなく毎月12分割して支払う必要があります。「一定の期日を定めて」については、「毎月第1週の金曜日に支払う」などではなく、毎月10日や毎月の末日など、日にちを定めなければなりません。上記の5つの原則を守って、賃金規程を定めましょう。
休業手当を支払う
休業手当については、労働基準法第26条で次のように規定されています。
「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」
具体的には、企業の経営が悪化した、機器類が故障して仕事ができないなど、休業する理由が企業側にある場合に該当します。ただ、地震などの災害が発生した場合は、企業には責任がないため該当しません。
出来高払いの保障
出来高払い制や請負制などの場合も、労働時間に応じて一定額の賃金を保障しなければならないことが、労働基準法第27条で定められています。
出来高払いなので仕事の成果がなければ作業をしても賃金がゼロ、などということはあってはなりません。「一定額の賃金」については明確な基準はありませんが、前述した休業手当の「平均賃金の100分の60以上」が適用される場合が多いようです。
最低賃金をチェックする
最低賃金法により地域や産業別に最低賃金が設定されており、毎年改訂されています。この最低賃金を下回る賃金にはできないので、最低賃金を毎年チェックする必要があります。
賃金規程作成の流れ
賃金規程を作成する際のおおまかな流れについてご説明します。
<賃金規程作成時の流れ>
- 現状の賃金の支払われ方について整理する
- 賃金規程の案を作成する
- 賃金規程案について従業員代表に意見を聞き、必要に応じて意見書をもらう
- 就業規則、賃金規程、意見書、就業規則変更届を労働基準監督署に提出する
- 従業員に周知する
まずは、現状どれくらいの給与が支払われているのか、どのような手当てがあるのかなど、現状の賃金の状況について整理します。役職手当や資格手当、通勤手当などについても、詳しく調べる必要があります。
その後、整理した内容に沿って賃金規程案を作成し、従業員代表に意見を聞きます。このとき、意見書という形で明確に意見をもらう必要があります。意見書がそろったら、就業規則、賃金規程、意見書、就業規則変更届をまとめて、管轄の労働基準監督署に提出します。
最後に、従業員に作成した就業規則や賃金規程、意見書、変更内容などを周知します。この従業員への周知がもっとも重要なポイントです。周知せずに作成しただけ、届け出ただけでは、就業規則としての効力がありません。必ず、印刷物を掲示し従業員に配る、データとして保存し誰でも見られる状態にしておくなどの対応をおこないましょう。
まとめ
この記事では、賃金規程に記載すべき項目は何か、作成時のルールや流れについて解説しました。賃金規程には、必ず記載すべき事項や守るべきルールなどがあります。そして、常時従業員が10人以上いる企業の場合は、就業規則とともに必ず作成しなければなりません。
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