2024年01月26日

人的資本が今注目されている理由とは?人的資本経営への取り組みについて解説

人的資本 同じ方向を向く社員

人材に投資することで企業価値が高まるという人的資本の考え方が、今注目されています。企業にとって重要な資本である、人材を活かした人的資本経営に取り組む企業が増えているのです。しかし、人的資本とはそもそも何なのか、どのように活用すればよいのか、そもそも企業にメリットがあるのかわからないと考える方も多いでしょう。

この記事では、人的資本とは何か、人的資本の考え方が注目されている理由、人的資本経営の取り組みについて解説します。

人的資本とは?

人的資本とは、従業員を仕事のノウハウ、スキル、知識などの付加価値をもつ資本として考えることです。人材を資本とみなし、その価値を引き出すことで企業価値を向上させることを、人的資本経営と呼びます。

人材は企業に利益をもたらす重要な資産であり、企業が投資していくべきであるという考え方が根底にあります。優秀な人材を雇用し、従業員の教育や研修を強化して人材育成を進めることで、企業価値を向上させることが可能です。

人的資本と人的資源の違い

「人的資本」とよく似た「人的資源」という言葉がありますが、この2つは真逆の考え方に基づいた言葉です。

人的資本とは、上記でご説明したとおり、人材育成に投資して企業価値を高めるという考え方です。一方、人的資源の考え方では、従業員を資源、つまり、コストと考えます。そのため、従業員にかかるコストをできるだけ抑えようという動きになりやすいのです。

人的資源の場合は人材が育ちにくいですが、人的資本の場合は人材育成を重視するため、企業は成長を続けやすくなります。長いスパンで見ると、人的資本の考え方を選んだほうが、企業は持続的に成長できるでしょう。

今なぜ人的資本が注目されているのか?

ガラスの地球儀

今、なぜ人的資本の考え方が注目され始めているのでしょうか?いくつかの理由についてご説明します。

ESG投資への意識の高まり

ESG投資のESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)のことです。この3つの観点を重視したESG投資への意識が、世界的に高まりつつあります。

とくに、Social(社会)に関する情報開示が求められることが多くなり、その流れで人的投資が注目されるようになったのです。

3つの観点とは、具体的に次のようなことを指しています。

<ESG投資の3つの観点>

  • 環境:環境汚染への対応、水資源の有効活用、生物多様性の保護
  • 社会:労働環境の改善、女性活躍の推進、多様性への取り組み
  • 企業統治:情報開示、取締役会の多様性、法令順守・汚職防止

これらの観点から企業の持続可能性を評価するESG投資への意識が高まるなか、人的投資への注目度も高まっています。

人的資本開示に向けた動き

国内外で、人的資本の開示に向けた動きが活発化しています。

アメリカの証券取引委員会は2020年に、国際標準化機構が定めた「ISO30414」による情報開示をすべての上場企業に対して義務付けました。東京証券取引所でも2021年に、上場企業に人的資本の情報開示を求めています。さらに、日本政府は2023年以降に情報開示を義務付ける方針を打ち出しました。

さらに、投資家による企業評価の指標として、人的資本の情報開示の重要性が高まっています。このように、国内外で企業における人的資本の扱いが重要視されているのです。

人的資本経営の取り組み

SKILLアップ

人的資本経営をおこなっていくためには、具体的に何をしたらよいのでしょうか?ここでは、人的資本経営の具体的な取り組みについて解説します。

人材教育を強化する

人的資本経営でもっとも重要なのが、人材教育です。

研修制度や教育体制を整え、従業員の職務や階級ごとに適切な教育を会社が主導していく必要があります。また、資格取得の支援やスキルアップの奨励などをおこなってもよいでしょう。社内で教育をおこなうのが難しい場合は、外部講師に依頼することでより専門的な教育をおこなうことが可能です。

さらに、資格取得やスキルアップをした従業員の能力給をアップするなど、スキルが評価につながりやすい仕組みを設けるのもいいでしょう。業務時間内に研修を受けられるようにすることで、従業員のスキルアップを促すことも可能です。

このような人材教育強化の取り組みは、人的資本経営のもっとも重要な部分です。優秀な社員が増えれば、企業価値も向上していくでしょう。

人的資本経営を経営戦略に取り入れる

どのようなスキルをもつ人材が自社の経営戦略に必要かを考えることも重要です。

営業力の強化が企業の課題であれば、高い営業スキルをもった人材を雇用する、社員の営業力強化のための研修に力を入れるなどの戦略が必要です。IT化が進んでいない場合は、IT人材を雇用し、社員のIT知識やスキルのレベルアップが求められます。

このように、企業の経営戦略を考えるうえでどのような人材が必要かを見極め、その方向性に合った採用活動や人材育成をおこなう必要があります。人材育成にかけられるコストは限られているので、経営戦略に沿った人材を優先的に育成することが求められるでしょう。

まとめ

この記事では、人的資本とは何か、人的資本の考え方が注目されている理由、人的資本経営の取り組みについて解説しました。人的資本の考え方にシフトすることで、人材育成のコストはかかりますが、企業の価値の向上を続けられます。最終的には、教育にかけたコスト以上の価値を得られる可能性も十分あります。

しかし、企業によっては社員教育まで手が回らない、人材育成のノウハウがないなどと悩むケースもあるでしょう。人材育成のアウトソーシングなら、社労士事務所 Office Followにお任せください。豊富なノウハウで、新入社員や若手社員の育成、女性社員やシニア社員の活躍支援などをお手伝いいたします。