2023年12月08日

社会保険の適用範囲が段階的に拡大!企業への影響は?社内準備や手順について解説

厚生労働省本庁

2016年から従業員の厚生年金保険や健康保険などの社会保険の適用範囲が、短時間労働者にも段階的に拡大していくことになりました。企業側としては、自社はいつ適用になるのか?何が変わるのか?など気になることが多いでしょう。もし対象になった場合、どれくらいの費用負担が生じるのか、手続きはどうすればよいのかなど、気になることも多いと思います。

この記事では、社会保険の段階適用で対象になる企業はどのような企業なのか、社会保険適用拡大の影響や社内での進め方について解説します。この記事を読めば、自社が社会保険適用拡大の対象になっているかどうかがわかり、対象の場合は対応の進め方がわかるでしょう。

社会保険の段階的適用で対象になる企業

ここでは、社会保険の段階的適用がどのように進められているのかについてご説明します。適用拡大は2016年の法改正ですでに大企業に対して実施されており、従業員数によって以下のとおり段階的に進められています。自社が対象になるのはいつになるのかを、確認してみてください。

<社会保険の段階的適用の対象企業>

  • 2016年10月~:従業員数が501人以上の企業
  • 2022年10月~:従業員数が101人~500人の企業
  • 2024年10月~:従業員数が51人~100人の企業

ここで重要なのが、上記の従業員数のカウント方法です。従業員数は、その企業の「厚生年金保険の適用対象者数」、つまり、「厚生年金の被保険者数」をカウントします。具体的には、以下の従業員数を合計した数です。

<カウントする従業員数は以下の①+②>

  1. フルタイムの従業員数
  2. 週の労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員数

なお、上記の従業員には、パートタイム、アルバイトを含みます。

月ごとに上記の従業員数をカウントし、直近の12ヶ月のなかの6ヶ月で基準を上回った場合は社会保険の拡大適用の対象企業となります。なお、複数の事業所がある場合は、同じ法人番号の事業所すべての従業員数を合算してください。

社会保険適用拡大による影響

話し合う3人のビジネスマン

社会保険の適用が拡大されると、企業や従業員にどのような影響があるかを見ていきましょう。

企業への影響

短時間労働者に社会保険が適用されるということで、企業のイメージアップをはかれる可能性があります。安定した保障を受けられる企業に入りたいという人は多いので、優秀な人材確保につながるでしょう。安定して働ける環境になることから、長く働く人が増えて優秀な人材の育成が進む可能性もあります。人材不足に悩む企業にとっては、大きなメリットです。

一方で、社会保険料の費用負担が増えるというデメリットもあります。社会保険の拡大適用の対象になりそうな場合は対象の従業員の数や保険料を調べ、コストがどれくらいかかるかを確認しておく必要があるでしょう。なお、制度の詳細や保険料については、厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイトで調べることが可能です。

従業員への影響

社会保険の加入対象になる従業員は、厚生年金や健康保険の対象になります。年金制度や健康保険制度に加入できることで、安定した生活を得られるでしょう。また、今まで配偶者の扶養に入っていた人も自分の会社の社会保険に入れるため、所得が扶養範囲内に収まるように働き方を制限する必要がなくなります。

ただし、会社と従業員が社会保険料を負担する制度なので、従業員側にも保険料の負担が発生します。

社会保険適用拡大対応の進め方

資料を見ながらミーティングを進める様子

社会保険の適用拡大を進める流れについてご説明します。

加入対象者の洗い出し

以下の条件をすべて満たす短時間労働者(パートタイム、アルバイト)が、新たに社会保険加入の対象になります。

<社会保険加入の対象となるのは、以下のすべての条件を満たした者>

  • 1週間あたり所定労働時間が20時間以上
  • 月額給与が88,000円以上
  • 2ヶ月を超えて雇用される見込みがある
  • 学生ではない

上記すべてに当てはまる短時間労働者について、洗い出しましょう。

保険料の算出

加入対象者が洗い出されたら、それぞれの社会保険料を算出します。従業員の月ごとの「標準報酬月額」をもとに、定められた保険料率を乗じて算出しましょう。

なお、保険料については、厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイトの「社会保険料かんたんシミュレーター」で調べることが可能です。

加入対象者への周知と確認

上記で洗い出した加入対象者に対し、社会保険の加入対象になったことを周知します。制度が変わって社会保険の適用範囲が広がったことを対象者に知らせ、理解を求めます。社会保険についての詳しい情報や働き方について個別に面談して話し合うなどして、理解を深めてもらいましょう。

社会保険の加入手続き

従業員の年金番号や個人番号などの情報を、あらかじめ入手しておきます。そして、日本年金機構に「被保険者資格取得届」を提出します。

日本年金機構の公式ホームページで申請書のダウンロードや、電子申請も可能です。

まとめ

この記事では、社会保険の段階適用で対象になる企業はどのような企業なのか、社会保険適用拡大の影響や社内での進め方について解説しました。この記事でご説明した内容から、自社が社会保険の適用拡大対象企業になるかどうかが確認できたと思います。また、自社が適用対象だった場合、社会保険の対象となる従業員などについても、ご理解いただけたのではないでしょうか。

しかし、忙しくて社会保険の拡大対応をおこなうのは難しい、どうすれば効率よく対応できるか知りたいという企業も多いと思います。社会保険などの人件費に関するお悩みは、社労士事務所 Office Followにご相談ください。社内の人件費に関する豊富なノウハウで、貴社の業務を強力にサポートいたします。