2023年11月07日

解雇と退職の違いとは?企業が従業員を解雇する際に気をつけるべきこととは

天秤にかけられるAとB

企業が従業員を解雇するのと、従業員が退職するのとでは、意味合いが大きく異なります。どちらも従業員が会社を辞めるのですが、法律的な扱いが異なり注意すべき点も違います。手続きや扱いを間違えると企業に不利益が起こることもあり得るため、注意が必要です。

この記事では、解雇と退職の違い、解雇と退職の種類、従業員を解雇する際に、企業が注意すべき点について解説します。

解雇と退職の違いとは?

解雇と退職は、どちらも従業員が辞めることですが、意味合いが大きく異なります。

解雇は、企業側から一方的に申し出て労働契約を終了することで、従業員が承諾しなくても解雇は成立します。ただ、解雇の内容によってはトラブルが発生する場合もあり、注意が必要です。

一方、退職とは従業員側から申し出て労働契約を終了することです。従業員が企業側に退職届や退職願を提出して申し出ます。

解雇の種類

壁に頭を当てるフィギュア

解雇にはいくつかの種類があります。企業側から解雇をする場合、これらの解雇の種類と解雇の事由について、就業規則で明確に定めておかなければなりません。就業規定がないと、解雇時に企業側と従業員側に意識のずれが生じてしまう可能性があります。

ここでは、解雇の3つの種類についてご説明します。

普通解雇

普通解雇とは、スキル不足、協調性の欠如など、従業員側に解雇事由がある場合に、使用者が一方的に労働契約を解約することを指します。

解雇事由に明確な基準はありませんが、何度指導しても改善されず改善の見込みがない場合などに適用されます。単純にスキルが足らないなどの理由で普通解雇を適用できるわけではないので、注意が必要です。

懲戒解雇

従業員が業務上横領など会社に対する重大な背信行為をした場合やセクハラやパワハラを繰り返した場合などに、懲戒解雇を適用できます。犯罪行為や会社の秩序を乱した場合などに適用されるもので、懲戒処分のなかでももっとも重い処分です。

そのため、よほどのことがない限り、適用できるとは限りません。場合によっては、減給や謹慎などの軽い処分になる場合もあります。

整理解雇

会社の経営状況が悪化した場合などに人員を削減するためにおこなわれるのが、整理解雇です。整理解雇が認められるためには、以下のような要件の妥当性が必要です。

<整理解雇の要件>

  • 人員削減の必要性があるか
  • 解雇回避の努力を講じたか
  • 人選に合理性はあるか
  • 解雇手続きは妥当か

 

退職の種類

退職する女性

従業員の退職については、次の3種類があります。

自主退職

従業員自らの意思で退職する場合です。たとえば、従業員が転職を希望している、引っ越しの必要がある、結婚・妊娠したなどのケースがあります。

合意退職

従業員側と企業側が合意して労働契約が終了するのが、合意退職です。たとえば、経営状況の悪化のため企業側が希望退職者を募集した場合、企業側が退職勧奨をおこなった場合などがあります。

退職勧奨とは、企業側が従業員に退職を促すことです。退職勧奨を受けた従業員は、退職するか否かを選べます。

自然退職

自然退職とは、定年、契約期間・休職期間の満了、本人の死亡などにより労働契約が終了することです。

解雇権濫用法理とは?

企業は従業員に一方的に解雇を言い渡すことができますが、解雇権を濫用すると解雇が無効になる場合があります。これを、解雇権乱用法理といいます。

解雇権を濫用していないと認められるためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

  • 解雇に客観的に合理的な理由がある
  • 解雇が社会通念上相当と認められる

これは、労働契約法第16条に取り入れられている内容です。

解雇・退職において企業が対応すべきこと

労務の女性たち

解雇・退職において、企業側が対応すべきことについてご説明します。解雇・退職を扱う場合は必ず対応しましょう。

解雇・退職に関する就業規則を規定しておかなければならない

これは、解雇や退職がおこなわれるときではなく、日頃から対応しておくべきことですが、解雇・退職に関する就業規則を規定しておく必要があります。

常時10人以上の従業員がいる企業では、就業規則を作成しなければなりません。

解雇・退職に関する規定は、就業規則に必ず入れる必要があります。解雇・退職に関する就業規則を規定し、従業員に日頃から周知しておかなければ、解雇・退職が無効になる可能性もあるのでご注意ください。

解雇予告・解雇予告手当支払いの義務がある

解雇時には、少なくとも30日前に企業側が従業員に予告しなければなりません(労働基準法第20条)。

そして、解雇予告から解雇までが30日未満だった場合、または、解雇予告をしなかった場合には、解雇予告手当を支払う義務があります。

規定がある場合は退職金支給の義務がある

就業規則に退職金に関する規定があり、従業員に周知されている場合は、解雇であっても退職であっても退職金を支払う義務があります。就業規定に退職金に関する規定がなければ、支払う必要はありません。

退職証明書・解雇理由証明書を交付する義務がある

退職の場合は退職証明書を、また、解雇の場合は解雇理由証明書を、それぞれ企業側が従業員に交付する義務があります(労働基準法第22条)。従業員から書面の交付を請求された場合は、すみやかに交付しなければなりません。

まとめ

この記事では、解雇と退職の違い、解雇と退職の種類、従業員を解雇する際に、企業が注意すべき点について解説しました。従業員の解雇や退職時に、企業側が気をつけるべきことはたくさんあります。特に、日頃から解雇・退職に関する就業規則を定めておくことが重要です。

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